近年、過去の女性映画人の再評価が世界的に高まっています。
“役割”から解放され“自己決定”で生きようとする女性を描いたハンガリーの映画監督、メーサーロシュ・マールタもそのひとり。

1975年に女性で初めてベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した『アダプション/ある母と娘の記録』。
工場で働く43歳の未亡人・カタは既婚男性とつきあっている。出産のタイムリミットを感じるカタは、子どもがほしい。けれど自分ひとりで育てると言っても、相手は聞き入れてくれない。そんなとき、幼くして親に捨てられたティーンネイジャーのアンナと出会う。寄宿学校を転々とするアンナは、結婚することで自由を得たいと思っているが──。
母娘、友達、パートナー、どれにも見えてどれとも違う、ふたりの関係が美しい。
アンナの表情が暗示する未来。カタが決断した人生。諦めと希望をはらんだラストが深い余韻を残す作品です。

歳の離れた女性の結びつきは『マリとユリ』(1977年)でも。どちらか一方が諭すでも導くでもなく、ぶつかりながらも互いの価値観を受け入れ感化し合う、対等な関係がすごくいい。
中年期を迎えたマリが、ユリとの出会いによって自分の人生を内省する姿は特に心に刺さります。
『アダプション』ではまだ控えめだった男たちの行為がエスカレートする、飲み屋のシーンは恐怖だった・・
5/26(金)~ 新宿シネマカリテ ほか 全国順次公開