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『黄金のアデーレ 名画の帰還』で学ぶ史実

 

アメリカ在住の亡命ユダヤ人である82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)が、第二次世界大戦中ナチスによって略奪された伯母の肖像画「黄金のアデーレ」の返還を求め、駆け出しの若き弁護士ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)と共にオーストリア政府を相手に闘った1998年から2006年までの実話を映画化。世界で最も高額な絵画の一つであるクリムトの名画よりも、マリアが本当に取り戻したかったものとは―――。

 

 

 

戦争そしてホロコーストという暗く重い歴史が根底にありながら、作品自体は随所にユーモアが散りばめられていて、軽快で快活とした印象です。それはきっとマリアという女性がとても魅力的な人物だから。頑固者だけど、茶目っ気もたっぷり。毒舌家だけど、気高くて威厳に満ちている。深く大きな悲しみと怒りを胸に秘めたマリアの複雑な心中を目の表情だけで見事に表現してしまう、オスカー女優ヘレン・ミレンの圧倒的な貫禄に脱帽です。
人生の終盤になって、失ったものを取り戻すべく、ずっと封印してきたつらい過去と向き合い闘うことを決めたマリア。しかし相手はオーストリア政府、そして「黄金のアデーレ」は国宝ともいえる絵画。難航する状況を目の当たりにして気丈なマリアもさすがに挫け、これ以上過去の痛みをえぐられ再び傷つくのは耐えられないと、訴訟の継続を断念しようとします。でもそこで諦めなかったのが、最初は全く頼りなくやる気もなく、絵画の金額に目がくらんで話に乗っただけのランディ。実は彼自身もオーストリアからの亡命家族の末裔で、祖父の作曲家アルノルト・シェーンベルクは芸術家のサロンとなっていたマリアのアパートの常連客でもあったのです。マリアと共にウィーンを訪れたことを機に、ランディの中の何かが目覚め、動き出します。本作はランディが自分自身のルーツをたどり、成長していく物語でもあるのです。

大戦下のナチスによる美術品の略奪については、現在上映中の『ミケランジェロ・プロジェクト』を併せて鑑賞すると関心が深まります。奪われた歴史的財産を奪還するため7人の男たちで結成された「モニュメンツ・メン」。私たちがこうして過去の芸術作品にふれることができるのは、そんな英雄たちの命を懸けた活躍のおかげだったとは・・・!ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ケイト・ブランシェットはじめ、全員が主役級の超豪華俳優陣をいっぺんに観られるという贅沢な作品です。

人命が一番大事、それはもちろん。でも芸術は時に、人の命を支えてくれるもの。一本の映画が、一冊の本が、一曲の歌が、一枚の絵が、生きる拠り所になることだってある。それはただの作品ではなく、いろんな人の歴史が刻まれていたり、人々の生活そのものだったり、人生に寄り添ってくれるものだったり、自分や家族の生きた証や誇りだったりすると思うのです。マリアが取り戻したかったものが、クリムトの名画そのものではなかったように。

現在はNYのノイエ・ギャラリーに展示されている「黄金のアデーレ」。渡NYのご予定のある方はぜひ映画を観てからアデーレに会いに行かれてはいかがでしょう。ちなみに私はクリムトの作品では代表作「接吻」(ベルヴェデーレ宮殿美術館。アデーレもここに展示されていた)と、「死と生」(レオポルド美術館。まだこの美術館が建てられる前、私が大学生の時に新宿で開催されたレオポルドコレクションの美術展で本作を鑑賞できたのは良い想い出)が大好きです。まだ訪れたことのないウィーン、いつか行ってみたい!
 

 

中林直美
FROM中林直美 渋谷の映画館でもぎりをしつつミニシアターブームに傾倒した学生時代。大学卒業後は大手映画会社で約10年勤務。映画と旅が好き。 https://www.instagram.com/naomi_nm_/
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