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Lifestyleママとパパに贈る「ジェンダーレス学」

【上野千鶴子のジェンダーレス連載vol.11】「今は、地方大学や地元就職の人気が高い時代です」

進みつつあるジェンダーレス社会について、私たち親は、娘や息子たちにうまく説明できるだろうか? ジェンダー研究の第一人者に聞きます。

【上野千鶴子のジェンダーレス連載vol.10】「東大の合格率にも経済力が関係する時代?」

「地域差とジェンダー」について②

Q.前回は地方の進学率の低さについてお聞きしましたが、一方で地元大学へ通う人が増えているとか。どういうことなのでしょうか。

そうなんです。
今、大学生の地元志向が増えています。地方国立大学はとても人気です。大学生の自宅通学率も高くなっています。
県外に子どもを出すと、授業料に加えて生活費の仕送りが必要になります。それは、親にとっても結構な負担になります。でも地方の国立大学なら、授業料は安いうえ、家から通える場合が多い。
ですので、地方大学は倍率も上がり、優秀な子がたくさん集まってきているのです。不景気で都市部の雇用機会が減ったこともあり、それが教育業界にも反映されています。
地方の国公立大学を卒業した人たちは、比較的そのまま地方で就職する確率が高く、公務員や教員、地場産業系の管理職予備軍として就職することが多いようです。
しかも、そのまま結婚して子どもができた場合、地方では育児がしやすい環境にあります。

Q.田舎だと、家族やご近所が子どもを見てくれるからですか?

そうです。
ここでも何度か話をしていますが、地方には<親族縁者ネットワーク>があります。
保育園の待機児童ゼロの自治体もあります。

Q確かに。都市部でも保育園が増えているとは言いますが、小規模保育園が多く、とりあえず数だけ増やしたような印象です。待機児童だって未だにいます。

だから地方がいい、という人たちが増えてきて、実際に地方では仕事を続けている女性が多いです。会社員で子どもが3~4人いる、という方も結構います。

Q昔は「Iターン」などで、地方企業が精力的に大都市から働き手を募集をしていたことがありました。今は、地方大学を卒業した後、そのままそこで役所や企業に勤めたり、あるいは起業をして地域活性化の仕事を始める方が増えているんですね。

増えたとは言い切れないかもしれませんが、地方人口は全体的に減少しながらも、地元志向は高まっています。
上野ゼミ卒業生で、社会学者の轡田竜蔵さんが書いた本に『地方暮らしの幸福と若者』(勁草書房、2017年)があります。これは、広島の2つの市町に住む20~30代の若者を対象に、生活実態や幸福度を緻密に研究し、分析した本です。
その地元コミュニティの中では、男女ともにサポートし合いながら、そこに親族縁者ネットワークも絡んでいき、大多数が幸福を感じながら暮らしている、という研究結果が書かれています。
他の地域を知らずに育ち、都会で苦しい思いをせず、子どもたちを育てていくことができる。非常に高い満足度を得ながら、心地よい暮らしをしていることがわかります。
人間の幸福には「居場所」が大きく関わっているということです。

Q私も、やはり子育ては地元のほうがしやすいのでは、と感じます。

ちなみに、離婚率が最も高い都道府県は沖縄と北海道ですが、それぞれの理由は正反対です。
沖縄は親族縁者ネットワークが強いから離婚しても、周りのおじいやおばあがお世話やお手伝いをしてくれるから。
対して北海道は、そのネットワークが弱いために、離婚の抑止力が発生しないので、遠慮なく離婚できるというものです。

Q沖縄って、離婚してもなんだか楽しそうですよね。みんな、「良い絆」で動いているような気がします。

沖縄は他とは違う経済が回っていると思います。贈与経済というか、お金を介さないモノやサービスの循環の占める割合が高いですね。
そういえば、私の友人で沖縄在住のシングルマザーが、「子育てしていた頃は、家の鍵を全くかけないで、誰でも自由に出入りできるようにしていた」と聞きました。東京だと、鍵をかけない生活なんてできませんよね。

Q 私も地元暮らしがしたいのですが、子どもたちが東京で育ってしまっているので、なかなか東京から離れられません……。最近は、ゲームや動画ばかり見ていて、デジタルに頼りすぎていて困っているんです。

地方の子どもだってデジタル漬けですよ。それはどこにいても変わりません。
では次回は、デジタルの話をしましょう!

取材/東 理恵

上野千鶴子 1948年富山県生まれ。社会学者。京都大学大学院修了、東京大学名誉教授。東大退職後、現在、認定NPOウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長として活動中。2019年東大入学式での祝辞が大きな話題に。『おひとりさまの老後』や『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。

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