年齢を重ねて、体力的にも時間的にも不自由さが増すことで、逆に人生がクリアになることも。昨年末にTBSを退局したフリーアナウンサーの小倉弘子さんは何かを手放すことで実らせることができるものがあると話します。
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★ 週に5回は小一時間ほど歩くように心がけています
★ マイペースを見つけることが 更年期を支えてくれます
★ 諦める力を育んで 更年期を実りの時期に
43歳で第三子を産んでから 急速に近づいてきた更年期
43歳で第三子を産んだ後、急速に体調が不安定になり、体力も衰えた気がします。急にめまい(*1)が起こるようになって疲れやすくなり、頭痛を感じることも増え、冷えの症状も強くなりました。今思うと、上の二人の子育てに加えて産後の疲れもあって、ホルモンバランスや自律神経が乱れて、少し早めの更年期を誘発していたのかもしれません。睡眠の質も徐々に悪化し、中途覚醒の症状も出るようになりました。
— 小倉弘子さんは、TBSのアナウンサーとして、様々なニュース・バラエティ番組で活躍。三人のお子様の子育てと会社員生活を両立させながらも、2024年末には27年間在籍したTBSを退局し、今年からセカンドキャリアを歩み始めたばかりです。
会社員としてアナウンサーという仕事をしながら、子どもを三人授かりました。けれど、仕事と子育てを両立できていたかと言われれば、決してそんなことはありません(笑)。全部が中途半端で……。でも、夫や子どもたちの協力でなんとか27年間、続けてこられました。
週に5回は小一時間ほど歩くように心がけています
子どもが三人いるので、それぞれの子どもつながりでママ友も増えました。長女のお友達家族が経営しているおにぎりカフェ「IZUMIYA」さんは、トイプードルを飼っていたころはワンちゃんと一緒に、今は子どもたちと一緒に行ったり、ひとりで訪れたり。私の好きなスパムを使った、オープン型のおにぎりが人気で、特に厚揚げとコンビになったものがイチオシ。スパムのしょっぱさと厚揚げの風味が好相性で、間にアクセントとして入っているお味噌が絶品。腹持ちがいい割に、それほど重くなくて、タンパク質が摂れるのも嬉しい。安心していつでも行ける飲食店があるのは、子育て中の身にはとても心強いのです。
会社を辞めてからは生活も変わりました。今年の春からは、なるべく午前中に1時間ほど歩くことを心がけています。それこそ、犬を飼っていたころはよく歩いていましたし、産後、ちょっと体を絞りたいなという時にはYouTubeで筋トレにハマっていた頃もありました。そのころは体重が7キロほど落ちたのですが、40代で痩せてしまうと、周囲から病気を心配されて気を遣われる事態になることに。元気がないように見えてしまうこともあり、やりすぎには注意しなければならないと学びました。でも年齢を重ねると、お肉がどんどん下に落ちていってしまうし、汗のかき方もおかしくなり、体のだるさも取れなくなります。退職してからまったく歩かなくなり、寒いと家に引きこもりがちになってしまいました。そうすると体のあちこちがガタピシ言い始めて(笑)。ジムに入会したところで、マシンの使い方もわからないし……とためらっていたら、夫に「歩いてみたら?」とシンプルアドバイスを受けました。そこで家の近所を歩いてみたら、とても気持ちが良かったんです。なるべく緑が多いエリアを選んで、空を見上げるようにして歩いてみたら、余計な考え事をしなくて済みます。シャワーを浴びなくてはならないほど汗をかきたくなって、必ず坂道ダッシュを2本ほど入れるようになりました。
ウォーキングを習慣にし始めたころ、膝の痛みを感じるようになって整骨院で診てもらったら、太ももの内側の筋肉・内転筋が衰えていると指摘されました。それ以来、テレビを見ている時などに、太ももの内側にボールを挟んで地道に筋トレするようにしています。
食に関しては、発酵食品ファースト。この夏、いちばん食べていたのが、納豆に鯖缶とスプラウト、あればお豆腐も入れ、わさびを加えて混ぜたものをご飯やお蕎麦にのせたオリジナルメニュー。スプラウトは、種子に凝縮された栄養と、光合成によって成長した野菜の栄養のいいとこどりをしている野菜で、最近注目度が急上昇している野菜。特に「ブロッコリースプラウト」には「スルフォラファングルコシノレート」という、肝臓機能の改善や、認知機能の向上、抗酸化作用に効果が期待できる栄養素が豊富だそう。落ち込み気分にも効く成分もあるということで、更年期の不定愁訴にも効果がありそうな気がします。甘酒もよく飲みます。コーヒーで割るとカフェオレみたいで美味しいんです。甘酒を飲むとやる気スイッチが入るし、起き抜けのだるさも軽減されるようです。
マイペースを見つけることが 更年期を支えてくれます
— いろんな工夫で、だるさややる気レスに対応しているという小倉さんですが、何をやっても動きたくないこともあるのだとか。
何かひとつ、仕事が終わった時や、逆に仕事がなくて暇な時、突然スイッチが切れたようにまったく動きたくなくなる時があるんです。そんな時は無理にでも、やる気を迎えにいくようにします。目的地を決めて強制的にでも家を出るようにすると気分が変わってやる気が少しずつ湧いてきます。
でも、何をやっても気分が乗らないこともよくあります。そういう場合はラジオの英語講座などを聴きますね。昭和歌謡も好きなので、昔のコンサートなどを観たり聴いたりします。心を休めて落ち着かせる処方箋としては読書も有効です。ミステリー、経済系、最近はハードボイルド系もよく読んでいます。なんとなく気持ちがあっぷあっぷして苦しい時は、1日かけてミステリーを読むと、とてもスッキリします。
諦める力を育んで 更年期を実りの時期に
— 「今の目標は自分の番組と夫とのハワイ旅(笑)。夫とはスペインなど、いろんなところに行きましたが、ハワイだけは老後の楽しみに取ってあるんです」と語る小倉さん。50代に入って感じることは?
50歳という体の変わり目で感じることは、とにかく「無理しない」ということ。昔は無理できるなら極限までしてやろう、と思っていたのですが50代になって無理を重ねると一気に取り返しのつかないことになってしまう。限界の手前で踏みとどまることが必要かなと思います。
でもそれは怠惰とか、自分を甘やかす、ということではありません。何もしなくなると耕されない畑になって、実るものがなくなってしまいます。食事に気をつけつつ、運動も取り入れながら、適度な「諦め力」が大事になってくるのではないでしょうか。自分自身を知って、体の声を聞いて、手放すものを見極めて諦める勇気を持つことも大切かと思います。
私は無我夢中で走ってきて、50代が視野に入った時に、このままでは60代になった時に空っぽなんじゃないかと怖くなりました。40代までは忙しいし、楽しいし、本当にあっという間。このままだと手に何も持たないまま、還暦になってしまう……60歳でちゃんと番組をひとつ、持っていたい。そう考えて、思い切って会社員を辞めることにしました。
目先の楽しさ、やりがいもいいけれど、5年刻み、10年刻みで人生を眺めた時に、今持っているものを手放さないといけないこともあります。いい意味で何かを諦めること。そんな勇気と力を持てれば、更年期という不安定な時期も乗り越えて、実りある後半人生を築いていけるような気がします。
撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/中村恵巳 スタイリスト/二井里佳子 取材/柏崎恵理 撮影協力/IZUMIYA ※情報は2025年12月号掲載時のものです。




















