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世界はこんなにも美しい。デイヴィッド・ホックニー展!

86歳を迎えたいまも最も人気のあるアーティストのひとりで、精力的に新作を発表し続けるイギリス出身の画家、デイヴィッド・ホックニー。その60年以上にわたる創作活動を振り返る、日本では27年ぶりの大規模な個展が開催中です。

左:《花瓶と花》1969年 東京都現代美術館、右:《No.118、2020年3月16日「春の到来 ノルマンディー 2020年」より》2020年 作家蔵 ©︎David Hockney

まず出迎えてくれるのは、春の到来を告げる花としてヨーロッパで親しまれているラッパスイセンの2枚の絵。
右は2020年3月にパンデミックが宣言された直後、「春が来ることを忘れないで」という見出しとともにオンラインで公開されたもの。どんなときでもささやかな希望に目を向けることを忘れない、ホックニーのまなざしがいきいきと。

左は約50年前の作品。表現手段や画材道具が変わっても、ホックニーの関心は変わらず「目の前にある身近なもの」に向けられています。

左:《一度目の結婚(様式の結婚Ⅰ)》1962年、右:《三番目のラブ・ペインティング》1960年 テート ©︎David Hockney

10代の頃、同性同士の恋愛が英国では違法であった当時から、自身がゲイであることを公言していたホックニー。そんな堂々とした彼の生き方も、作品に力強く表れていて。

ひとつの画面にいろんな要素が混在する実験的な試み、絵画への強い探求心も、初期のころからありありと。

左:《スプリンクラー》1967年 東京都現代美術館、右:《ビバリーヒルズのシャワーを浴びる男》1964年 テート ©︎David Hockney

20代後半でLAに移住したホックニーは、普及しはじめたばかりのアクリル絵具を用い、明るい日差しが降り注ぐスイミング・プールや青々とした芝生に散水するスプリンクラーを数多く描くように。
ホックニーといえばプール!というイメージでしたが、数年後にはロンドンに戻っておりカリフォルニアに居た期間は意外と短かったのですね。この時期の開放的な作品、やっぱり大好き♡

70歳を過ぎたころに発売されたiPadも即導入。画面のバックライトのおかげで暗い場所でも絵が描けるように。操作に慣れてくると絵を描くスピードは格段にアップし、色彩はさらに鮮やかになっていきます。
ホックニーがiPadで絵を描く過程がモニター上映されているのも必見です!

《クラーク夫妻とパーシー》1970-71年 テート ©︎David Hockney

こちらもホックニーの代表的シリーズ、ふたりの人物で画面を構成するダブル・ポートレイト。
1960〜70年代のイギリスで大人気だったデザイナー、オジー・クラークと妻でテキスタイル・デザイナーのシーリア・バートウェルをモデルにした有名な作品は、雑誌などで目にしてはいたけれど。実物の素晴らしさ、ケタ違い。やわらかな自然光が入る部屋のなかへと誘われるような絵画空間にうっとり・・♡
母親の表情がなんとも言えずグッとくる、両親を描いた作品もたまらなかったです。

ダブル・ポートレイトの最新作は、ふたりのホックニーが額に入った花を見ているというおもしろい構図。
そっくりな自画像からも、ホックニーの茶目っ気がうかがえます。

《スタジオにて、2017年12月》2017年 テート ©︎David Hockney

3次元の現実世界を2次元の平面上で再現することに挑み続けるホックニー。画面内を移動する焦点や複数の視点、鑑賞者を起点に広がる逆遠近法を取り入れた作品は、観ているだけでワクワクするものばかり!

京都の龍安寺で撮影した100枚以上の写真を貼り合わせたフォト・コラージュでは、線遠近法だと台形になってしまう石庭が、人間の視覚そのままの長方形で再現。多角的な視点だけでなく時間の経過までもが感じられる作品です。

《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》2007年 テート ©︎David Hockney

60歳のころ、ホックニーは幼少時に慣れ親しんだイギリス郊外の風景画に取り組みます。壁一面を占める《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》は、50枚ものカンヴァスから成る油彩画。1枚1枚の絵をパソコンの画面上でつなぎ合わせては調整するという作業を繰り返して完成した、スケールの大きな作品です。

映像作品《四季、ウォルドゲートの木々》では、9台のカメラで同時撮影した映像が多視点のように展開。人間の視覚体験における複雑なプロセスが再現されています。

《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》2011年 ポンピドゥー・センター ©︎David Hockney

ホックニーは刻々と移り変わる自然の様相を表現するため、「春の到来」を複数の絵画でシリーズとして提示することを構想。そこから生まれたのが、大きな1点の油彩画と51点のiPad作品で構成された《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》です。
32枚のカンヴァスを組み合わせた油彩画は、吹き抜ける風や舞い上がる木の葉の感触がすぐそこにあるようで。夢のような光景が広がる画のなかに、いっそのこと迷い込んでしまいたい・・!

そしてiPad作品の美しさ。会場に来るまで、近年の作品はiPadかぁ、なんて軽くみていた浅はかな自分が恥ずかしい。86歳のホックニーは常に柔軟に進化しているというのに!

《ノルマンディーの12か月 2020-21年》2020-21年 作家蔵 ©︎David Hockney

このホックニー展、企画が持ち上がったのは2018年のことだそう。それが長引く感染症で仕切り直しに。でも展示室の最後、企画展が開催延期となったからこそ出展できた最新作《ノルマンディーの12か月 2020-21年》を観たあとでは、誰もがこの奇跡を噛みしめることになるでしょう。

2019年、フランスのノルマンディーに居を構えたホックニー。翌年、世界的なロックダウンが続くなかで彼が挑んだのが、身近な自然とひたむきに向き合った全長90メートルの大作でした。長年関心を寄せてきたという東洋の絵巻物のような、どこにも消失点や影がない空間描写。何度もぐるぐる回りたくなる、めぐる四季を体で感じる作品です。

ポップでおしゃれ、という印象だったホックニー。作品を目の当たりにして感じたのは、あふれんばかりのエネルギー。ホックニーがどんなふうに世界を見ているのか、見ようと決めているのかが伝わってくるような。自然や生命の美しさ、ささやかだけど確かな希望、人生を愛するという意志のようなもの。どんなときでも結局は、自分がどこに焦点を当てるのか次第。
この空間にいつまでも浸っていたい!と心から思う展覧会でした。
公式グッズもなかなか手に入らないものばかりなので、ショップで並ぶ時間もふくめ、ぜひ皆さんもたっぷり余裕をもってお出かけください。

 

※掲載写真はすべて内覧会のもので、主催者の許可を得ています。画像を転載、ダウンロードすることは禁止されています。
「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 © David Hockney

【 展覧会情報 】
デイヴィッド・ホックニー展
会期:開催中~2023.11.5(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
休館日:月曜日(9/18、10/9は開館)、9/19 、10/10
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
※サマーナイトミュージアムの日(8/4、11、18、25)は21:00まで開館延長
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※詳細は公式サイトをご覧ください。

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