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メロドラマじゃ終わらない。ファスビンダー傑作選!

<ニュー・ジャーマン・シネマ>の代表格で、戦後ドイツを代表する映像作家、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。37年という短い生涯で40本以上もの強烈な作品を手がけたファスビンダーの、日本劇場初公開作品をふくむ傑作選がはじまります!

『不安は魂を食いつくす』(1974年)は、未亡人の掃除婦エミとモロッコから来た移民労働者アリの物語。初老の白人女性と若い黒人男性、出会って間もなく結婚したふたり。けれど世間は容赦なく差別と偏見の眼差しを向けてくる。

移民や人種に対する差別感情、残酷性への無自覚さ(ヒトラー御用達のレストランにミーハー丸出しで訪れるエミの無邪気さよ)。老いた女と若い男という年齢差への、好奇と嫌悪の目。隣人や仕事仲間、家族からも排除され、孤立していくふたり。それ故に深まる絆。

そんな美しくも哀しい恋愛メロドラマ、では終わらないのがファスビンダー作品。物語の途中、「魔法」が起きてからの世界がいっそうリアルで。

周囲から疎まれていたときには固く結束していたふたり。けれどその障壁がなくなると互いの存在は見慣れた日常となり、感謝の気持ちも有難みも薄れてしまう。相手の不寛容さが目につき、それぞれが勝手に孤独を深めていく。
他人の関心なんて移ろいやすく、新たなターゲットが見つかればそっちに行くし、損得勘定の人間関係は情勢次第で変化するもの。結局のところ残った壁は、自分たち自身。それは誰もが密かに持つ引け目だったり、相手より少しでも優位に立ちたいというエゴだったり、自分の内にある目を逸らしたい部分でもあって。

「幸福が楽しいとは限らない」── だからこそ「一緒にいるときは、互いにやさしくなりましょう。じゃないと人生、生きる価値がないわ」と言ったエミのあのときの言葉を、しみじみと想い返すのです。

ファスビンダー美学がつまった完璧で美しい構図に終始うっとりし、色の効かせかたにもいちいちハッとして。(暗いコートを脱ぐと露わになる、鮮やかなワンピース♡)
ドア枠越しや鏡越しの、他人の部屋をのぞき見るようなカメラの視線。安易な感情移入を拒む俯瞰的視点。残酷なまでに淡々と人間を映しだすファスビンダー作品を見ていると、どうしようもなくちっぽけな存在である自分たちがむしろ愛おしくなってくるほど。

ご紹介した『不安は魂を食いつくす』のほか、代表作とされる『マリア・ブラウンの結婚』(1978年)、そしてファスビンダーの戯曲「ゴミ、都市そして死」を友人であるダニエル・シュミット監督が映像化した『天使の影』(1976年)の3作品が上映されるライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選。
わたしも映画館でどっぷりひたりたいと思います!

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選
7/28(金)~ Bunkamuraル・シネマ ほか 全国順次公開

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