今年は、4年ぶりに上皇ご夫妻が軽井沢、天皇ご一家が那須の御用邸でご静養に入られました。
実は軽井沢には御用邸がないのですが、上皇ご夫妻にとって軽井沢は出会いの地でもある特別な場所。夏のご静養は、軽井沢や奥浜名湖に頻繁に行かれていました。一方、動物や自然が好きな令和の天皇ご一家は、那須や須崎、御料牧場をご静養先に多く選ばれている印象です。プライベートな場面ながら、やはり注目されるのは、そのファッション。ご静養の場所だけでなく、ファッションも“らしさ”が際立つ美智子さまと雅子さまのご静養ファッションを放送作家・皇室ライターのつげのり子さんと一緒に紐解いていきます。
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雅子さまの今年の装いは?
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8月21日、那須塩原駅での天皇ご一家。雅子さまは昔から愛用されているフェラガモのバッグを携えて。愛子さまはトレンド感のある小花柄のワンピースはkey meのもの。ワンピースの多い愛子さまのコーデでもひと際華やかで新鮮でした(C)JMPA
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フェラガモのショルダーバッグは、愛子さまが小さい頃から愛用されています(C)JMPA
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那須御用邸での取材では愛用の白パンツを主役にオーバーサイズのブルーのシャツをお召しになり、配色で涼感を表現(C)JMPA
今年のご静養では、那須塩原駅ご到着時と、御用邸内での取材時とで、両陛下がお着替えされていたことが印象的でした。
「那須塩原駅でのお出ましは、両陛下は昨今の物価高に苦しむ国民生活を鑑みて、地味な装いを意識されたのだと思います。両陛下が控えめなファッションをされていることで、駅頭で歓迎する人びとも抵抗なくお話しできたのではないでしょうか。両陛下に比べ華やかさをまとっていらっしゃったのが、愛子さま。愛子さまは、国民の目に触れる機会が多くはないので、若々しさと初々しさのあるワンピースを選ばれたことで、ひときわ印象に残り、存在感を発揮されました。
一方、那須御用邸内で改めて撮影された映像は、駅頭での装いと一味違っていました。まず陛下のシャツは一見、那須塩原駅で着ていたものと同じように見えますが、暑くて汗をかかれたのか、糊でパリッと立った、しわ一つないボタンダウンのシャツに着替え、きちんとした感じを出していらっしゃいました。雅子さまもブルーのシャツに着替えて、控えめだけれどほんのり華やかさが漂うファッションでコーディネートされていました。エレガントな愛子さまのワンピースと並んでも、雅子さまの華やかさは遜色ありませんでした。ちなみに、この夏の那須御用邸内での映像は、『令和5年夏の那須でのご静養の映像』として、記録用に永遠に残るものです。駅頭とはまた違い、歴史の中のこの瞬間として、見ごたえのある装いを意識されたのかもしれませんね」(つげさん、以下同)
雅子さまはホワイトパンツとバイカラーパンプスがお気に入り
「雅子さまは、パンツスタイルを中心にハンサムな装いが印象的です。愛子さまがお生まれになってから、雅子さまが毎年のようにお召しになっているのがセンタープレスのホワイトのパンツ。動きやすいパンツスタイルで愛子さまと一緒に遊びたいという思いが垣間見られます。動けるホワイトのパンツを主役に、社会人として働いていた時に着慣れているテーラードカラーのジャケットを羽織り、きちんと感を足されるのが雅子さまのご静養ファッションの定番です。ネイビーと配色されることが多く、小物はバイカラーの靴やバッグを選ばれることが多いようです」
美智子さまはウエストマーク+ゆったりパンツ
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2019年、那須御用邸にて。ご夫婦でグレーのグラデーションでまとめられた装いから仲のよさが伺えます。ウエストには、若い頃からご静養先で多用されていたリボンがあしらわれ、シックな中にも美智子さまらしいフェミニンな甘さが感じられます(C)JMPA
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2018年、軽井沢駅にて。ホワイト、ベージュトーンのグラデーションコーデがエレガントな美智子さまの装い。足元はスニーカーですが、ウエストマークされたジャケットを羽織られ、すらりとしたバランスに。パンツ、スニーカースタイルも、配色や合わせるアイテム次第で、脱カジュアルに見せられるという、カジュアルが苦手なSTORY世代がお手本にしたいスタイル(C)JMPA
「美智子さまのご静養ファッションは、フェミニンなワンピースやスカートスタイルが定番でしたが、上皇陛下が心臓バイパス手術を受けられた2012年頃からはご体調を慮って、パンツスタイル、フラットシューズが定番に。何かあった時に上皇陛下を支えるために、とっさに動けるように、というお二人の絆の強さが伝わってきます。パンツスタイルが定番になりましたが、必ずウエストが絞られたシルエットや、ハイウエストのパンツをお召しになられ、美智子さまらしい上品でフェミニンな印象を確立されています」
平成時代はスカートをお召しに
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1996年、伊豆急下田駅にて。上皇陛下とチェック柄でリンク。千鳥格子、リボンタイ、ビッグカラーと、甘さのあるモチーフをふんだんにとりいれたアイテムに、羽織りの上からウエストマークするモダンな着こなしを。甘すぎず、バランス感が際立った装い。
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1992年、須崎でのご静養中に立ち寄られた「らんの里」にて。平成の装いながら、モノトーンが流行っている今、全く古さを感じない計算されたモノトーンスタイル。小物も徹底されたモノトーン配色でモダンな印象がありながら、ウエストマークされたシルエットで女性らしい優しさも感じられます
「美智子さまのご静養ファッションといえば、フェミニンなスタイル。ご結婚された当初やお子さま方が小さかった昭和時代は国民の期待、注目に応えるかのように、当時のトレンドであったフェミニンなフィット&フレアなワンピーススタイルが印象的でした。平成時代になり皇后陛下になられてからは、タイトなスカートをお召しになるように。ただ変わらず、ハイウエストのスカートでウエストマークをし、リボンなどの甘いモチーフやヒールのあるパンプスを選ばれ、国民の憧れるフェミニンで品格溢れる美智子さまスタイルを貫かれています」
ご静養は、出席するイベントや賓客に合わせて装いを決められるご公務とは違い、ご自身の好きなものをお召しになられるプライベートな場。
ご静養ファッションにも、雅子さまはハンサムに、美智子さまはフェミニンに、気品がありながらもそのスタイルに“らしさ”が光ります。私達の憧れであり続けるお二人のファッションに、これからも目が離せません。
教えてくれたのは…
放送作家・皇室ライター
つげ のり子さん
テレビ東京系『皇室の窓』の放送作家。2001年の愛子さまご誕生以来、皇室番組の構成を担当し、皇室研究をライフワークとしている。ワイドショーから政治経済番組、ラジオまで様々な番組の構成を手掛ける。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)『素顔の雅子さま』『素顔の美智子さま』(河出書房新社)などがある。