14歳でデビューし、モデル、女優として20年以上のキャリアを持つ榮倉さん。そんな榮倉さんが、昨年10月にアパレルブランドを立ち上げ、そのCEOになることを発表。3歳と6歳の子どもの母であり、女優としての仕事に加え、さらにCEOとなることを決意した理由は――?
榮倉奈々さん
自身の責任で社会と繫がった今、毎日が勉強です
1988年生まれ。14歳でデビューした後、モデル、女優として活躍。近年の出演作は、TBS系「テセウスの船」、「99.9-刑事専門弁護士-」シリーズなど。2023年、アパレルブランド「newnow」をローンチ。新会社を創設し、CEOに就任。夫は俳優の賀来賢人さんで2児の母。
衿の立ち具合や背中のアンブレラヨークの長さまで、ディテールにこだわったトレンチコートは、身を包むだけで凜としたスタイルに。スカートスリット&ミュールで女性らしい抜け感を。
トレンチコート¥118,000〈参考価格〉シャツ¥54,000〈参考価格〉スカート¥54,000〈参考価格〉(すべてnewnow)バッグ¥306,900ミュールローファー¥135,300(ともにトッズ/トッズ・ジャパン)
人として成長するために挑戦したい
◇ 母になって初めて社会を知り、一社会人の挑戦として起業しました
女優・榮倉奈々としてではなく、「私」“賀来奈々”として社会と繫がっていきたい――、数年前から実はそんな思いが胸の内にありました。
14歳でデビューしてから20年以上仕事をしてきたのですが、子育てを通して初めて社会に出る感覚を知りました。女優の仕事は、マネージャーさんの元で整理されてから私へと手渡されますが、母になってみると、自身がマネージャー的役割を担わなくてはなりません。そこで初めて、会社やマネージャーさんに守られることなく、私自身が直接社会と繫がることになって……。子どもを守る立場の親になって、もっと社会を知りたいと思うようになりました。
起業の準備を始めたのは、ちょうど1年ほど前。「起業したい」という強い思いの中、スタイリングが素敵だな、と共感するスタイリストの上杉美雪さんやモノ作りに拘りを持つデザイナーの福屋千春さんと関わる機会を得て、点と点が繫がるように、アパレルブランドの立ち上げへと向かっていきました。
14歳から始めたモデルという仕事でたくさんの服と出合い、昔から服が好きだった私が、このゴールを選択したのは自然な流れだったのかもしれません。でも、一方でモノが溢れる世の中に疲れている自分もいました。それで、受注生産を基本とした過剰な在庫を残さないブランドを作ろう、と「newnow」を始動させました。
「服作りは、クリエイティブ・ヴィジョン・ディレクターの上杉美雪さん、クチュール・デザイナーの福屋千春さんと意見を交換しながら取り組んでいます」。上杉さんのクリエイティビティを軸に、生地や細かいデザインを擦り合わせて。
◇ 多スクな今距離感のバランスがいい子どもも私もハッピーです
踏み出してみると、今、毎日が勉強です。タスクが多くて、正直、大変な時もあります。私の母は専業主婦で、強い責任感で家事や子育てをする後ろ姿を見て育ってきました。なので、同様に「頑張らなくちゃ!」と思い込み、知らず知らずのうちに抱え込んでいたんです。
ところが、起業して新しく力を注ぐ場所を得ると、これまでどれだけその力を子どもに向けていたのだろうと気づきました。今は、「ママ、今日お仕事? 頑張って!」と、のびのびしています。
「やってくれる?」と周りに言えるようになったのは、私の中で大きな変化でした。私が変わってから、家族も変わったように感じます。起業に悩む時も、「やりたいようにやってみたら」と言ってくれた家族は、進んで手伝ってくれるようになりました。やっぱり、家族の間でも、気持ちは言葉にしないと伝わらないです。今はアナログで手帳派の私に合わせ、週末に家族とスケジュールを共有するようにしています。
子どもたちもパパがこれまで以上に家事や育児に関わるようになって嬉しそう。起業して忙しい今のほうが、子どもとの距離バランスがちょうどいい。私の挑戦によって、家族の気持ちとカタチが変わった今のほうが、私も子どもも、家族全員ハッピーな気がします。
24秋冬コレクションの展示会準備。「サンプルに袖を通すたび、背景のある服は、やっぱりいいなと実感しています。美しい佇まいでありながら、肩の力を抜いていられる。そんな服は、多スクで忙しい大人の女性たちに是非、着てほしいと思っています」。
2024秋冬コレクションの受注会、オンライン受注会は6/7〜。申し込み受付は5/17〜オンラインでスタート。詳細は、https://newnow.jp/でご確認ください。
シャツ¥54,000〈参考価格〉パンツ¥60,000〈参考価格〉(ともにnewnow)
今は、「人に頼る」の修行中です
何より頑張りすぎないことが大事
起業してからは、自分を追い詰めず、肩の力を抜いて、周りの人にも頼りながら、日々を過ごすよう心がけています。
時には休日は計画的に寝坊をしたりもしますし、好きな本を読んだり、ノートに思うことを綴ってみたり……。
4年後は、私も40歳。上の子は10歳になり、会話の幅も広がると思いますし、旅行先の選び方も違ってくると思います。今は、私がワンピースやスカートを着ているのを見て、「ママ今日可愛い!」と言ってくれたり、スーツを着ると「カッコイイ!」なんて褒めてくれるけれど、お互いに年を重ねて子どもと一緒にショッピングをする日も楽しみ。
そして、10年後は――。きっと子どもとも洋服をシェアできる頃。最近は、そんなことを意識して、服選びをするようになりました。自分たちが手掛ける「new now」の服は、10年後も色褪せない服。今から少しずつクローゼットを満たして、いつか子どもとこの服たちをシェアしたい。
そんな10年後のミライが今から楽しみです。
脳科学や心理学の本が好きで、一人時間はそんな本を開きます。特に、脳科学者の中野信子さんの本は、愛読書です。アナログ派なので気になったことはノートにメモ。結局は、一人時間も子どものことを考えてしまうのですが……(笑)。ニット¥152,900※参考価格(トッズ/トッズ・ジャパン)
撮影/渞 忠之 スタイリスト/上杉美雪(SENSE OF HUMOUR)ヘア/KENICHI(SENSE OF HUMOUR)メーク/Yumi Endo(eight peace management)取材/坂本結香 ※情報は2024年6月号掲載時のものです。