東日本大震災から15年を迎える2026年3月、4月に東北3県(岩手、宮城、福島)を訪問される予定の天皇ご一家。秋には、熊本の被災地をご一家で訪問される可能性もあります。東日本大震災では余震が続く中で被災地を訪れ、能登半島地震でも計3回にわたり被災地を訪問されました。また戦後生まれの初の天皇として「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」という平和への願いから、戦後80年の節目の年であった去年は、両陛下だけでなく愛子さまとともに、沖縄、長崎を慰霊のため訪問されています。常に国民と苦楽をともにし、寄り添い、困難に直面する人々の声に真摯に向き合っていきたいという、天皇、皇后両陛下の想いは、被災地へのご訪問や戦没者の慰霊に表れています。今回は、放送作家・皇室ライターのつげのり子さんに、ご一家の平和への想いと訪問先での装いについて、お話を伺いました。
「戦後80年となる去年は、戦争の記憶と平和の尊さを引き継ぐために、両陛下は硫黄島と広島を訪れ、そして愛子さまも一緒に、沖縄、長崎を慰霊のために訪問されました。今年は東北へ初めてご一家で、そして熊本の被災地は両陛下が訪問されることが予定されています。陛下は66歳の誕生日記者会見でも『災害による影響は人それぞれに異なり、10年、15年という年月の経過だけでは測れない重みを伴うものだと思います』と述べられています。常に国民と苦楽をともにし、被災地の方々の声に耳を傾けるとともに、愛子さまを伴ってのご訪問には、災害の教訓を次世代に継承してもらいたいという思いがあるのではないでしょうか」(つげさん)
雅子さまの、なによりも国民に寄り添う気持ちが強く表れた東日本大震災直後
2011年4月、東日本大震災の被災者へのお見舞いのために調布・味の素スタジアムへ
ご公務ではパンツスタイルでもセットアップスタイルが多い中、ジャケット、ニット、パンツと違うデザインを選ばれ、グレーのグラデーションでまとめられていた雅子さま。
「この頃はまだ療養中でいらっしゃった雅子さま。皇居外でのお出ましは年に数回という時期でした。そんな中、お見舞いに訪れたこの時は、とり急ぎ身近なものをお召しになって駆け付けたというお気持ちが、装いにも表れていました。それだけ被災された方々に心を寄せたい思いが強くていらっしゃったのでしょう。とはいえ、無意識の中にも、被災した方々への気遣いか、動きやすいパンツスタイル、そして華やかすぎないグレーを選ばれていました。ご病気になり自身も辛い経験をされてきた雅子さまは、被災した方々の体験談を聞きながら深く共感し、時折涙ぐまれながら手を握られ、そのお姿を陛下が静かに見守られている光景が印象的でした」(つげさん)
2011年6月、東北の被災地初訪問で宮城県岩沼市へ
津波の被災地である宮城県岩沼市を訪問した際は、雅子さまには珍しい、ジャケットの下に白いシャツを合わせられた装い。誠意と実用性を両立されていました。
「東北の被災地への初訪問の時は、宮城県はまだ余震があり、電信柱なども倒れたままの状態。陛下はブルゾンスタイルで訪問の妨げにならない装いで、現地の人々に配慮されていました。雅子さまも白いシャツのボタンを首元まできちんと留めながら、ジャケットにパンツという装い。動きやすさがありながらも、黙祷を捧げるにあたり、犠牲者への深い慰霊の念を示されているように感じました」(つげさん)
戦後80年という節目の年に、戦没者ご慰霊では未来への希望もこめられて
2025年6月、戦没者ご慰霊のために沖縄へ向かう羽田空港では
飛行機では、パンツスタイルを選ばれることが多い雅子さま。愛子さまとペアルックのような、爽やかな淡いブルーのスーツ姿で。沖縄に到着されて慰霊碑に向かわれる時は、ブルーのテーラードジャケット×スカートのセットアップに着替えられていました。
「沖縄へのご訪問は、雅子さま、愛子さまともにテーラードジャケット、淡いブルー系のそっくりとも言えるお召し物が印象的でした。戦後80年の節目の沖縄訪問で、『二度と戦争は起こさない』という平和への想いが、母と子、世代を超えてひとつである、同じであるというメッセージを視覚的に表現されているのでは? と感じました。戦没者慰霊のご訪問ではシックな装いが定番ですが、この年は戦後80年の節目。これから明るい未来が続いているという意味を込めて、黒やグレーではなく、爽やかで希望を感じる水色を、親子で選ばれたのかもしれません」(つげさん)
2025年6月、対馬丸犠牲者慰霊碑「小桜の塔」、対馬丸記念館へ
沖縄訪問の2日目、ご一家は小桜の塔に供花され対馬丸記念館へ。天皇陛下はネクタイで、雅子さまは衿や袖口のあしらいで、愛子さまは全身でネイビーを取り入れられ、ご一家でのお姿に“チーム”を感じる装いでした。昔からバイカラーを好まれている雅子さま。白をぴりっと引き締める異素材のネイビーのバイカラーは、オールホワイトよりも落ち着いた印象。愛子さまはインナーで白を取り入れ、親子で配色が逆になっていることまで計算されているようにお見受けしました。
「このご訪問では、ダークカラーではなく白を選ばれた雅子さま。多くの疎開児童を乗せて長崎に向かう途中で、攻撃を受け沈没してしまった対馬丸。多くの子どもたちが犠牲になったということもあり、“母性”や“無償の愛”を象徴する白を選ばれたのではないでしょうか。犠牲になった子どもたちの魂を母のような優しさで包み込みたい、深い寄り添いのお気持ちが表れているように感じます」(つげさん)
2025年9月、戦没者ご慰霊のための長崎訪問時、長崎空港にて
この日の雅子さまの空港ファッションは、モノトーンの千鳥格子のジャケットと黒のパンツというダークトーンの配色に、大ぶりのバロックパールのネックレスで品よくアクセントをつけられたスタイル。ここでも雅子さま、愛子さまは、ジャケットがパイピングデザイン、パールのジュエリーという共通点が。愛子さまの胸元には、最近愛用されているMIKIMOTOの白鳥の羽をモチーフにしたブローチが。
「飛行機に乗る時はパンツスタイルが定番の雅子さま。全身黒やネイビーだとあまりにも印象が暗くなってしまうので、モノトーンでも少し抜け感のある、限りなく黒に近いネイビーの千鳥格子のジャケットを選ばれたのかもしれません」(つげさん)
2025年9月、長崎訪問では原爆死没者ご慰霊のため「原爆落下中心地碑」に供花
供花の際は、フォーマルなスカートのセットアップ、ハットに着替えられた雅子さま。淡いブルーのスカートのセットアップ、ショールカラーのジャケット、パールのジュエリー、ブローチと、沖縄同様、雅子さまと愛子さまの、そっくりに見えるリンクコーデが際立っています。
「ハットのデザインが違うぐらいで、ここでも装いをリンクされた雅子さまと愛子さま。選ばれたお色は、沖縄を訪れた時と同じ、希望を感じる淡いブルー。平和への願い、国民に寄り添う気持ち、想いは同じ…というお気持ちを強く感じます。愛子さまが成年皇族として公務に参加されるようになってからご一家でのご活動は、“記憶と教訓の継承”という新たな意義を帯びているように思います」(つげさん)
取材/味澤彩子
教えてくれたのは…
放送作家・皇室ライター
つげ のり子さん

















