あんなこと言っちゃったと後悔したり、先のことに不安になったりつい見えないものに振り回されがちな私たち。ポジティブの代名詞の書道家・武田双雲さんに人生を楽しむ秘訣を聞きました。
<STAY+丁寧=STAYねい精神で 日々の自分をこまめに整える>
── 武田さんご自身、コロナ自粛中はどのよう に過ごされましたか?
「仕事が減ったのでインスタライブやLINEライブをしてみなさんの質問に答えたり、ライブ中ギターを弾いたりしていました。
見ていただいた方からは、寂しい、孤独を感じる、不安という声がある一方、大きな声では言えないけれど家族でゆっくり過ごせて楽しい、みんなが家にいるから安心するという声も聞かれました」
── コロナ禍でイライラすることが増え夫や子供にも当たってしまうという悩みが読者さんから聞かれます。どんな時もポジティブマインド の武田さん流イライラしないコツは何ですか?
「旦那さんが家にいたり、子供たちの学校がなかったりと普段とは違う状況でイライラしてしまいますよね。
人間なので、イライラすることはもちろんあります。だからまず〝イライラしてもいい〟と思うことです。
一度起こったイライラはなかなか抑えることはできません。抑えているといつか爆発してしまいます。大事なのはイライラしないことではなく、イライラを長引かせない、溜めないことです」
── 先が見えない不安や心配はこれからも続きそうです。そんな不安を解消し、安定した心をキープする方法は何ですか?
「二重ネガティブに苦しんでいる人が多いなと感じます。二重ネガティブとは、不安がっている自分にさらに不安になる、くよくよしている自分を嫌になるといったスパイラルのことです。
まずは不安はあって当然、と認める。不安を感じない人はいません。どんな時も100%上機嫌でポジティブな人はいません。そりゃそうです、人間だもの。そして二重ネガティブになったらそれがまだ小さいうちに気持ちを整えること。
僕は楽器を弾きますが、ギターを弾く前にはチューニングをします。放っておくとズレが大きくなり直すのが大変になるんです。私たちも同じ。
そのままにしておくと不安や虚無感、モチベーションの低下に繫がり、気がつかないうちにそれらが化け物化してしまいます。だからこそまだ小さいうちに気分転換したり、話せる人に吐露したり、早めの心のチューニングが大切です」
── コロナ禍で自分のしたいことって何だろうと考えるようになった人も多いです。でも今ま で家族優先できたため、今さら自分のしたいことが思いつかないという悩みが。どうやって探せばいいのでしょうか?
「20代は何もわからないから新しいことへも飛び込めるけど、40代になると一気にハードルが高くなり、チャレンジすることも億劫になってしまいがち。そんな40代が一気にしたいことを見つけようと思うから大変なんです。
まずは日々の中でときめくもの、ワクワクするものに変えてみるのがオススメです。例えば歯ブラシや枕、毎日使うものから始めてみて。そして洋服は本当に自分が着たいものを選んでみる。今まで日常で諦めてきたことってたくさんあると思うんです。
ネガティブな情報を減らして、ちょっとずつ自分の好きなもの、ワクワクするものを整えてそれらに囲まれてみると自分の好きなことが少しずつわかるようになり、ご縁ができたりするんです。
そして自粛中に僕が作った言葉、〝STAYねい〟を心がけてみてほしいです。これはSTAY HOMEの STAYと丁寧をくっつけたのですが、今という時間をちょっとだけ丁寧に過ごす。
例えば洗濯物をたたむ時も柔らかいなと感じながらいつもより少し丁寧にたたんでみる。そうやって〝今〟に集中してみることが大切です」
<リラックス&エンジョイ!「楽しむ力」があると全てがうまく回りだす>
── 40 代、まだまだ諦めたくありません! もうひと花咲かせたい願望が (笑)。どんなことを意識すればいいでしょうか?
「毎日を楽しむことが全て。今まで私たち40代はいつかのために生きてきました。でも今回のコロナもそうですが未来はどうなるかわからない。未来のコントロールできない、わからないことのために今を我慢する必要はありません。
今回みなさんへ向けて書いた文字は〝楽〟。〝楽〟はリラックス&エンジョイという2つの意味があるから好きな言葉です。
私たちはリラックスすることが下手ですが、 40 代こそ力を抜いて楽しむことが大事。今日という一日を楽しみ、今の自分やその環境を味わう、それに尽きると思います。
僕はこの仕事をしたいと自分からお願いしたことはなく周りから舞い込んでくるお仕事ばかりです。幸せな人たちに囲まれ、毎日こんなにラッキーな人生でいいんだろうか、と思うほど幸せです。
それは毎日楽しいと思っているから楽しいことがやってくる、自分はラッキーだと思っているから、今まで普通に見えていたものがラッキーに感じられたり、ラッキーなことに縁ができるんです。
つまらない、なんか嫌だと思ったり、口に出しているとつまらないことを集めます。ぜひ僕に騙されたと思って(笑)、今からやってみてください。いい方向へ向かいだすはずです」
撮影/吉澤健太 取材/稲益智恵子、立花あゆ、小仲志帆 ※情報は2020年9月号掲載時のものです。