本企画いちばんの衝撃は、「〝免疫力〟という言葉は医学的にはない」!
さらに免疫に形はないこと、私たちをウイルスや病気から守ってくれる〝スーパーヒーロー〟ではないことetc. 驚きの事実が……。
じゃあ免疫、あんたは一体何者なんだ!?ということで、基礎知識から免疫で私たちを守る方法まで、ゼロからおさらいしましょう。
○ 監修してくれたのは…竹田和由先生
順天堂大学 大学院医学研究科研究基盤センター細胞機能研究室 准教授。東北大学大学院歯学研究科博士課程修了。アメリカ留学、新潟大学医学部医動物学講座助手、順天堂大学医学部免疫学講座講師などを経て現職。専門は免疫学(NK細胞、腫瘍免疫)。
★そもそも「免疫」ってなに?
【1】だから、 形はない。
「わかりやすく言うと、免疫とはリンパ球(=免疫担当細胞)が異物(=自分でないもの)を排除する現象。だから形はなく、お見せすることはできないんです」(竹田先生)
免疫は〝物質〟ではなく〝現象〟。だから目には見えないし、写真に撮ることもできません。
【2】スーパーヒーローではなく、ただのわがまま反応
病気を防いだり治すための現象ではなく、自分の中に自分以外のものがあってはイヤ!というわがままな反応。結果として病気を防いだり治したりしている。
「外から侵入した異物(ウイルスやばい菌)を追い出したりやっつけたりするのが免疫反応。異物は大体、病気の元だから、結果として病気に罹らなかったり治ったりするのです」(竹田先生)
【3】免疫を上げても健康には ならない。病気にならないだけ。
「免疫はあくまで健康状態を下支えするもの。免疫が上がっても健康状態がよくなるわけではありません。今現在、免疫が高いかどうかはわからず、振り返ってみたときに風邪をひかなかったからあのときは免疫が高かったんだと結果的にわかる。逆に低いと風邪をひくのですぐにわかります」(竹田先生)
免疫を上げれば確かに病気には罹りにくくなるし、治りやすくなる。だけど病気にならない最善の方法は病原体に会わないこと。
【4】「免疫力」という 医学用語はない。
いろいろな病気に罹りやすいかどうか、罹りにくい今の健康状態を表すときに使われる一般用語。
免疫力という言葉をもし使うなら、「○○に対する免疫力」として対象を限定し、後述する獲得免疫について用いるのが適切。
【5】加齢とともに下がる。
あと、なぜかわからないが個人差がある。
「自然免疫のひとつであるNK活性は20代〜30代がピークで、それ以降は加齢とともに下がります。ただし不安定を逆手に取れば、良いことをすれば上げられるので、努力次第でNK活性を10歳若返らせることも可能です」(竹田先生)
NK活性は冬や夏に低下すると言われ、季節にも左右されるほど不安定。その分、自力で上げられる余地があるのです。
【6】免疫には 2つある。
生活習慣など自力で活性できるのが自然免疫で、ワクチンで活性化するのが獲得免疫。協力し合って病気と闘います。
「風邪からがんまで、最前線であらゆる異物と闘っているのが自然免疫。ただし自然免疫は弱いので強敵には負けてしまいます。
〝戦況悪化〟が伝えられると戦闘部隊本部、獲得免疫が立ち上がります。獲得免疫は強いのですが、はしかならはしかの獲得免疫、インフルエンザならインフルエンザの獲得免疫と、担当する強敵がひとつに限られるのと、初対戦相手にはすぐに対応できないのがネック。
そこで、病気に罹る〝本番〟に備え、獲得免疫がいつでも起動するよう呼び覚ますのがワクチンということになります。
獲得免疫は異物を記憶するので、一度罹患するか、ワクチンを打っておけばすぐに対応でき、その病気に罹ることはもうない、ということになります」(竹田先生)
【7】自力で活性できるのは 自然免疫。
自然免疫の代表選手、NK細胞(Natural Killer Cell)。活性化すると風邪をひきにくい&治りやすい、がんや感染症にもなりにくい。
だから、自然免疫≒NK細胞を活性化して病気を防ごう!
「危険な病気と闘うエキスパートである獲得免疫が、一度病気に罹るかワクチンでしか活性化できない一方、さまざまな要因によって大きく影響を受ける自然免疫は自力=生活習慣で上げられます。
中でも血液中に存在するリンパ球の10 ~ 20%を占めるNK細胞(Natural Killer Cell)はその名の通り、生まれながらの殺し屋。日々の生活の中でNK細胞を活性化することで健康を守る土台を作ることは、非常にリーズナブルかつ有効というわけです」(竹田先生)
イラスト/腹肉ツヤ子 取材・文/木村 まい