自然免疫≒NK細胞はどうすれば活性化できる?
「運動」「ストレス」「笑い」「発酵食品」は免疫アップを語る上では外せないキーワード。しかし、正しく理解して実践できている人はそれほど多くないのでは?
ということで、抜き打ちテストでおさらい。◯ or × or △で答えてみてください。正解、はたまた思い違いや思い込み、いくつあるでしょう?
★「免疫」Q & A
○ 監修してくれたのは…竹田和由先生
順天堂大学 大学院医学研究科研究基盤センター細胞機能研究室 准教授。東北大学大学院歯学研究科博士課程修了。アメリカ留学、新潟大学医学部医動物学講座助手、順天堂大学医学部免疫学講座講師などを経て現職。専門は免疫学(NK細胞、腫瘍免疫)。
★「免疫」活性に、いいこと&悪いこと“抜き打ちテスト”
Q1.頑張って激しい運動をするのは?
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【正解は…】✖
「高いNK活性を維持するには、激しい運動は避けたほうがいいです。
運動している間はNK細胞の数もNK活性も上がりますが、運動を終えると急激に落ちます。それは心臓がバクバクするほどの運動はストレスになるから。過度のストレスはNK活性の天敵なんです。
30分運動をすると、運動時間の4倍、つまりその後2時間は免疫が下がってしまう。 つまり激しい運動後は風邪をひきやすくなるなど、病気になるリスクが上がります。
ではNK活性を上げる運動とはどういうものか?
それは話しながら、または笑いながらできる程度の軽い運動です。だけど体力の向上という点からすると物足りない。
ですので、無理なく心地よい運動で徐々に体力を上げながら高いNK活性を維持する。運動で健康状態を上げ、免疫で健康状態を維持するバランスが理想です。
運動により体温が上がり、代謝が上がる、結果的にNK活性に繋がるという利点もあります」(竹田先生)
Q2.ストレスが全くない生活を送るのは?
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【正解は…】✖
「心臓がバクバクするようなこと、無理して頑張る、不幸、密集、孤独etc. 過剰なストレス同様、ストレスが全くない状態というのもNK活性を下げます。
大切なのはメリハリ。適度なストレスで交感神経を刺激した後は、副交感神経が優位になるリラックスタイムを持つ。つまり、ON/OFFの切り替えがある、自分に合った生活リズムを保つことがNK活性には効果的です。
「自分に合った」というのが実はポイントで、いくら一定の生活ペースといっても、早起きが苦手な人が朝4時起き生活を続けるのは大きなストレスになります。
だからあくまで「自分に合った」パターンであることが大切なのです。
また、人は〝ドヤ顔〟をしているときが最もNK活性が高くなります。仕事で成果を上げたとき、サッカーでゴールを決めたときなど、ストレスを乗り越えた後の達成感や高揚感がNK活性をグンと上げることがわかっています。
適度なストレスがNK細胞を活性化するのです」(竹田先生)
Q3.笑うことは?
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【正解は…】△
「よく笑顔で健康になるという話を耳にしますが、笑いを顔の筋肉の動きや脳の活性化で評価すると、NK活性に変化は見られません。つまり、口角を上げるだけ、作り笑い、薄ら笑いでNK活性はできません。
NK活性を上げるのは大笑い。 大笑いによって脳が刺激されてストレス解消に繋がり、腹筋を使うことが適度な運動になるというわけです。
反対に大泣きもストレスを発散し、心を浄化するので有効。もちろん映画を観るなどの疑似体験に限りますが。本気の不幸は当然、NK活性を低下させます」(竹田先生)
Q4.ヨーグルトを食べることは?
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【正解は…】○
「腸内には多くの免疫細胞が集まると考えられていて、腸内環境が免疫を左右すると言っても過言ではありません。
その腸内環境を整えるのが発酵食品。中でも乳酸菌は免疫細胞に直接作用して活性化してくれる優れもので、オススメはヨーグルトです。
納豆や椎茸などももちろんよいのですが、ヨーグルトは摂取量がわかりやすいのがいいところ。1食分の個包装のヨーグルトの中には免疫を上げるだけの乳酸菌が一定量入っています。
中でもNK活性を高めてくれるR-1乳酸菌は、毎日食べると1カ月でNK活性が上がるというデータがあります。
1日1個継続して食べ、毎日腸に刺激を届けることで効果を維持できます。乳酸菌は種類によって効果もさまざま。自分に合った乳酸菌を見つけましょう」(竹田先生)
Q5.楽しく心地よいインテリアの中で過ごすことは?
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【正解は…】○
「ネズミの実験で、狭いケージより、広く、寝床も整えられ、おもちゃなども置かれたケージで飼うほうがNK活性が上がるというデータがあります。たまに小物の配置を替えたり、新しいおもちゃを与えてあげるとますます上がります。
つまり、楽しい、美味しいを集めることがNK活性に繋がるということ。それはネズミも人も変わりません。
おうち時間が増えたwithコロナ時代だからこそ、自分にとって快適な住まいに整えることはNK活性を促し、病気になりにくい体作りに繋がります」(竹田先生)
★「免疫」Q & A
Q1.免疫は上がれば上がるほどいいの?
A.自然免疫は上がっても基本的に悪さをする 可能性は低いのですが、獲得免疫は別です
「獲得免疫が何らかの原因で正常な自身の細胞や無視すべき異物を認識し、過度に活性化して攻撃する場合があり、それによって引き起こされる疾患を自己免疫疾患やアレルギー疾患と呼びます。
リウマチや膠原病、花粉症やアトピー性皮膚炎などがそうで、これらの治療では一時的に獲得免疫を抑える薬が使われます。ですので、一概に免疫は上がるほどいいとは言えませんが、自然免疫については常に高い状態を維持するよう心がけることが大切です」(竹田先生)
Q2.免疫が低い人、高い人はぱっと見でわかるものなの?
A.楽天家は免疫が高いことが多い
「NK活性は採血で調べることができます。低い人はいつも低い(笑)。
心配性な性格だからNK活性が低いのか、NK活性が低いから心配性になるのかはわかりませんが……。僕はNK活性が高いんですが、低い人に言わせると高い人は能天気で人の話を聞かないらしい(笑)。
見た目だけではわかりませんが、ちょっとお話ししただけで大体わかります。やっぱりポジティブな人ってNK活性が高いことが多いです(あくまで個人的見解)」(竹田先生)
Q3.子どものころに清潔にしすぎると免疫が低くなるの?
A.異物(ウイルスや細菌など)と闘う 免疫の働きを正しく制御できずに、 アレルギーになる可能性があります
「これはハイジーンセオリーと言って、清潔にしすぎると免疫が下がるのではなく、正しく作動しなくなるということ。その結果、アレルギーが起きやすくなるという説です。
子どものころから適度にばい菌と共存していると自然免疫(=最前線部隊)が常に働き、獲得免疫(戦闘部隊本部)とのコミュニケーションが上手く取れるようになります。自然免疫がばい菌と闘った後、獲得免疫が攻撃し、その後に免疫反応を止めるよう指示を出すのですが、この止まれのサインが出ずに反応が行きすぎた結果、獲得免疫が抗体を作り続け、それが痒みや発疹などの症状を引き起こします。
では、免疫システムは成長の過程で正常化できるかというと、個人的には15歳くらいまでなら可能だと思います。また一度できた抗体をなくすことはできませんが、減感作療法や舌下免疫療法といった治療法がありますので、専門家に相談するのがおすすすめです」(竹田先生)
イラスト/腹肉ツヤ子 取材・文/木村 まい