● 映画『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』に出演した 坂口健太郎さん(29 歳)
坂口健太郎(さかぐちけんたろう)
1991年、東京都生まれ。2010年に「MEN’SNON-NO」の専属モデルとなり、’14 年に俳優デビュー。近作に映画『そして、生きる』『仮面病棟』、ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」「35歳の少女」などがある。
★ 自分のイメージにない〝アクション〞を、ほとんどスタントなしで やり切りました
「僕が〝アクション〞をやるって、イメージにないですよね。今回は、すっごく頑張ったんですよ(笑)」
韓国の人気ドラマをリメイクし、2018年に放送された『シグナル』が2年の時を経て映画化。坂口さん演じる警部補・三枝健人も、時間を重ねた分どこか成長し、テレビドラマで見た頭脳派のキャラに加え、アクション派という新しい顔が見られるのが新鮮だ。
そして、それが至極本格的で、そのほとんどをスタントなしで行ったというから驚く。
「衣装合わせで監督から『今回は坂口君を血みどろにします』と言われたんですよ(笑)。台本には『手下と闘う健人』くらいなもので、アクションシーンは詳しく書いてなくて……。だから、スーパーヒーローじゃない健人が、殴られても傷ついても、ボロボロになりながら立ち上がる、その痛みが伝わるように、すごく稽古しましたね。北九州ロケでは、歩道橋から飛び降りる練習を何度もして、『何てことやらせるんだ!』なーんてことだらけでした(笑)」
トレーニングをして鍛えたその体は、「ちょっと、長すぎですよね……」と坂口さんが照れるシャワーシーンの、背中の筋肉からも存分に感じられる。
「僕にとって、この作品は特別なんです。初めての主演ドラマでしたし、それが映画化されて。それに、一人の役柄を何年もの時をかけて演じるということが初めてですし。今思うと、昨年の2月頃のクランクアップだったから、それから2週間ほどして、コロナのニュースが飛び交い世界が変わった……」
この映画を撮り終わった後、いつもはポジティブな坂口さんが、珍しく暗いトンネルに入ってしまったのだそう。
「僕は自己愛がすごく強くて。落ち込んでしまうこともあまりないし、自分のことが好きだからこそ、何かあっても『まぁ、大丈夫』と乗り越えてきたんです。でも、今回ばかりは、くらってしまった。ずっとステイホームをして我慢する中、皆どこかギスギスして、誰かが誰かをたたくスキを窺っている。そういう世の中になっていることを感じて、すごく悲しくなっちゃって……。
昔、親父から言われた言葉があるんです。『自分の評価は自分でしてやれ』と。ずっとその言葉が心の中に残っているし、今それこそが大事なのだと思う。そして、ネットが加速化して人の体温が感じられなくなった今だからこそ、人と会い、顔を見て話すことの大切さに気づかされました」
映画のように、過去に生きる人と交信できるとしたら、変えたい過去はある――? 最後にそう聞いてみた。
「いや、ないですね。変えてしまったら、変えた瞬間に今の自分がいなくなってしまう気がするから。例えば10年前の自分に、〝この先こんな失敗をする〞と教えたとしたら、きっと面白味がなくなってしまう。今の自分にはきっと足りないところもあるけれど、でも、それでいいかなって(笑)」
<『劇場版 シグナル 長期未解決事件捜査班』2021年4月2日公開!>
2021 年東京、高速道路でハイヤーが暴走し、政府高官が事故死する。長期未解決事件捜査班は、これを仕組まれた事件だと疑う。一方、2009 年の東京でも政務官が相次いで事故死していた。事故死と発表される中、一人〝事件〟だと疑う大山は2021 年の三枝警部補と無線で繋がり……。
撮影/川崎一貴(MOUSTACHE) ヘア・メーク/Emiy(エミー) スタイリスト/戸倉祥仁(holy.) 取材/河合由樹 ※情報は2021年4月号掲載時のものです。