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隈研吾も注目するデザインクラフトの街・
北海道・東川町を訪ねてきました


北海道のほぼ中央に位置する北海道上川郡東川町は人口約8,400人、大雪山の麓にひろがる自然豊かな美しい町です。そんな東川町が“未来のまちや社会を考えるためのヒント”に溢れる町として注目されているのです。町民も参加して長年にわたり行われている“後世に残し得る町づくり”を目指したさまざまな活動や取り組みには、東川町に暮らす人々の文化意識の高さを感じます。

「写真の町」「木工の町」「移住者が増加している町」、または、全国的にも珍しい「上水道のない町」として、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、前編・後編に分けて、東川町が注目される理由を町の魅力とともにご紹介します。

2021年4月14日「椅子の日」制定・宣言

東川での暮らしを育む文化“東川スタイル”を通じて、未来の社会のあり方を考えるきっかけとなるように制定された「椅子の日」。これによって椅子に感謝する習慣と文化の創造を目指すというものです。

4月14日、東川町複合交流施設せんとぴゅあIIにて「椅子の日」制定記者発表が行われました。


松岡市郎東川町長と建築家・隈研吾氏が登壇。隈研吾氏と連携した新たな取り組み、次世代を担う若者を育成するプロジェクト*「『隈研吾×東川町』KAGUデザインコンペ」の進捗状況について、そして、来年4月に開設予定のサテライトオフィスなどについて語られました。

隈研吾氏との関連事業のひとつとして隈研吾氏がデザインし、町内の木工事業所が製作した椅子も発表。


隈研吾氏デザイン×Time & Style/アートクラフト バウ工房/瀧澤ベニヤ株式会社製作


隈研吾氏デザイン×株式会社ウッドワーク製作

また、「椅子の日」制定記念として「織田コレクション展 世界の名作椅子ベスト20」(〜5月5日・水まで/会場:東川複合交流施設せんとぴゅあI ギャラリー1)も開催されます。


織田コレクションの中から、『No.14』ミヒャエル・トーネット、『アーガイルチェア』チャールズ・レニー・マッキントッシュ『ドンナ アップ5アップ6』ガエターノ・ペッシェ、『キャブ』マリオ・ベッリーニなどデザイン史に名を刻む椅子20点が並びます。


*「織田コレクション」椅子研究家の織田憲嗣氏(東海大学名誉教授、東川町芸術文化コーディネーター)が収集、研究してきたデザイン群。1950〜60年代を中心とした椅子1,350脚、テーブル、キャビネット、陶器やガラス器8,000点以上、書籍、ポスター等の資料も約2万点など、その規模と内容は国内外で高い評価を得ている。

*「『隈研吾×東川町』KAGUデザインコンペ」は、「木の椅子のデザイン」をテーマに国内外の30歳以下の若者から募集。(*4月14日の時点で36の国・地域、834件の応募あり。)6月26日に隈研吾賞(最優秀賞)1作品、優秀賞3作品、佳作6作品を公開審査により選定の予定。

「新しい世界では、人間と環境をつなぐ装置としての家具が今まで以上に注目されることになるでしょう」(隈研吾)

隈研吾氏は「『隈研吾×東川町』KAGUデザインコンペ」開催のメッセージとして、次のように語っています。

「コロナで今、世界は大きく変わろうとしています。閉じた箱から出ること、都市から出て自然に近づくことが、コロナ後の世界のテーマになることでしょう。その新しい世界では、人間と環境をつなぐ装置としての家具が今まで以上に注目されることになるでしょう。そして「家具」というものの定義自体が変わる可能性もあります。そういう新しい時代にふさわしい家具を、思い切った発想で提案してください。自然豊かな東川から、世界に家具の新しいあり方を発信したいと思っています。」

「木工の町」として知られる東川町には大小多くの木工事業所があり、北海道の多様で良質な木材から作られる美しい家具「旭川家具」の約30%を担っています。

こんな取り組みも行われています。

君の椅子
東川町で生まれる子供たちに椅子を贈るプロジェクト。北海道旭川市・旭川大学大学院の磯田ゼミの「誕生する子供を迎える喜びを、地域で分かち合いたい」という想いを込めて2006年にスタートしたプロジェクトに2006年から参加。毎年、デザインが選定され、東川町内の工房で製作されます。名前や生年月日を刻印してプレゼントする、子供の成長を温かく見守る椅子です。


*「アートクラフト・バウ工房」にて撮影。

学びの椅子
東川町内の全小学校(4校)では、町内の職人が手作りした机と椅子を使用しています。また、中学校では、町内の職人が手作りした名前が刻印された椅子を3年間使用し、卒業時にはプレゼントされます。

東川町の工房をご紹介。

「アートクラフト・バウ工房」



1988年に独立した大門嚴(たけし)さんと息子の和真(かずま)さん親子が営む工房。嚴さんは1973年に20歳で出場した技能五輪国際大会(ミュンヘン)で三位に入賞以来、数々の賞を受賞され、遊び心に溢れる豊かな発想力、木材への深い知識、高い技術力で多くの創作家具を製作。樹種の特徴を生かし20種類の木材を使用して製作した17段のキャビネット「20の樹」(写真)は、嚴さんの代表作。のみ肌を残した繊細な取手も美しい。和真さんは6年ほど歯科技工士として働いた後、2004年に工房に。繊細な脚が独創的な「ウインドスツール」は、2014年の国際家具デザインフェア旭川(IFDA)でメープル賞を受賞。嚴さんから受け継いだ技術と高いデザイン力で手仕事の魅力溢れる家具を製作されています。工房に隣接するギャラリーでお二人の家具をゆっくりと眺めることができます。(もちろん購入、オーダーも)「君の椅子」2006年、2009年、2015年、2020年、2021年製作。

北海道上川郡東川町西町9丁目4番1号 TEL:0166-82-2213
営業時間:9:00〜16:00  日祝休

 

「木ライフプロダクト」

プロダクトデザイナーで木工家の出村貴昭さんは、ユニークな経歴の持ち主。造形作家を目指して東京藝術大学を受験するも、残念ながら3度不合格となり、きっぱりと諦めて入学した北海道東海大学でプロダクトデザインを学び、卒業後は日本ビクターに入社してオーディオ機器のデザインに携わります。退職後に北海道の会社で家具職人としての技術を磨き、その後は北海道高等技術専門学院でデザインと木工技術の指導に。20年勤めた後、2016年に現在の場所に工房を開くこととなります。自然の恵みである木材を使い、人の暮らしに寄り添い長くパートナーであり続けられる暮らしの道具を作っていきたいという出村さん。まだ、商品は少ないですが「ペーパーコードスツール」等の家具、「スマートホンスタンド」等の道具からも温もりが感じられます。フィット感に優れた「ペーパーコードスツール」は、ふるさと納税の返礼品に指定され大人気なのだそうです。

北海道上川郡東川町西11号北29番地
TEL:090-2813-5715
http://www.moevenpick-weinland.com

後編も追ってアップします!
人々の暮らしに寄り添う魅力的な家具が生まれる東川町。後編ではさらに、町で行われている取り組みのほか、町歩きに欠かせない「食」の情報もお伝えします。

取材・文/齊藤素子 撮影/よねくらりょう

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