Lifestyle特集

上野千鶴子さんに質問「セレブな専業主婦になりたい娘に、何と伝えたらいいですか」

現在は、だいぶジェンダー平等が進んできたと思います。それなのに、今あえて「セレブな専業主婦」に憧れる娘もいるとか……。これからの時代を生き抜いてもらうために、娘たちにはどう伝えていくべきか、「女性学」のパイオニア・上野千鶴子さんに教えてもらいました。

◯ 上野千鶴子さん

1948年富山県生まれ。社会学者。京都大学大学院修了、東京大学名誉教授。東大退職後、現在、NPOウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長として活動中。女性学、ジェンダー研究の第一人者。

2019年東大入学式での祝辞が大きな話題に。ベストセラー『おひとりさまの老後』や『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。


<娘たちの言葉 >

「母はシングルマザー。仕事に子育てに、いつも大変そうでした。だから私はもっとラクしたい。なれるものならセレブな専業主婦になりたいです」―― 津島奈々さん(仮名)19歳・大学生

◇ 年収は減少し、男性が女性を選ぶ基準も変更。セレブなんて狭き門よ

――ある大学生の娘さんは、母が大変そうなのを見て、セレブな専業主婦になりたいと言っているそうで。母として、娘にはどう説明すればいいと思いますか?

〔上野さん〕
シングルマザーは大変ですね。離別か死別かわからないけれど、離別なら日本の夫は養育費を払わないし、公的支援も貧弱。でも離婚できる自由のある社会の方が、女にとってはずーっとまし。この学生さんは、シングルマザーのお母さんみたいになりたくない、って思ってるのかな。

夫とふたりで支え合って仕事も子育てもって思うのはいいけど、専業主婦になるのはリスクが高すぎます。とりわけセレブな専業主婦は狭き門。

お母さんたちが結婚適齢期だった時代より、今は夫になる男たちの年収が減っています。男性の年収はバブルあたりがピーク、大幅に減少している。自分の父親世代ほど稼げない。妻の収入がマストになってきました。男性の方でも共働きをしてくれる妻の方が魅力的、と思う人が増えてきました。

専業主婦を目指すのはリスクが大きい。離婚したくてもできないし、離婚した後の生活が困難、セレブな夫がDV夫でも逃げられません。

――男性の年収は減っていて、セレブな専業主婦枠に入るのってハードル高いですよね。

〔上野さん〕
そうなんです。年収上位の男性とは、どんな人か。概して、自己中心的で業績主義、仕事中心の男性だから、出世したということ。そういう男性はたいてい、妻に自分のサポートをしてくれるような脇役を求める。つまり彼らに選ばれて過ごす人生は、一生その男性を支える「女子マネ」役を務めること。主役にならず、脇役を務める覚悟が必要です。

そんな年収上位男子には、いくらでも女性が寄ってくるので、そこで選ばれなければなりません。仕事が忙しく、恋愛がなかなかできないとなれば、外見で判断する人も多い。いわゆる「トロフィーワイフ」といわれる、勝利の証しのトロフィーのような妻。その勝ち抜き戦を勝ち抜いても、その後の幸せは保証できません(笑)。そういうセレブ夫には結婚した後も女性が寄ってくるでしょう。それに耐えて、脇役の人生を選びたいならどうぞ。

実はもうひとつ大きな変化があります。

その年収上位男子たちが、以前より「女子マネ」タイプに魅力を感じなくなってきました。エリート男子はエリート女子を選ぶ傾向があります。エリート女子は稼得力も高く、カップルの年収を合計すると豊かな暮らしができます。

――今までなら、美貌の女性を選んでいた年収上位男子が、それだけで選ばなくなったということ? 男性の価値基準も変わってきたということですか?

〔上野さん〕 
そうです。女性もエリート男性を捕まえたいけど、男性もエリート女性を捕まえたい。そのエリートの内容が変わり、女子力の高さで選ばれるとは限らなくなってきました。

――選ばれる基準が、ますます難しくなってきたんですか?

〔上野さん〕
多様化してきて、変わってきました。男性たちが、妻を一生養わなければならないことを重荷に思うようになってきました。女性の稼得力も魅力のうちになってきたのです。稼得力の大きい男性が、同じように稼得力の大きい妻を選好する。ですからセレブ妻になるのは、ますます狭き門(笑)。

男性の年収も減っているうえに、男性の価値基準も変わってるし、社会も変わっています。

ちなみに、①セレブな専業主婦になる。②しっかり働くワーキングウーマンになる。という2択が問われがちですが、今の日本は3つ目の選択肢として、③ほどほどに働くワーキングマザーになる、というのがいちばんいいのかもしれません。

'97年のピーク時から、22年後には43万円・61万円も減少している一方、女性の年収は少々上昇中。

――最近の日本は、女性をワーキングマザーにさせたいという風潮が感じられます。自立した「女」だけではダメで、「妻」や「母」でないといけないのですか?

〔上野さん〕 
日本社会では、「妻」であることより「母」であることのほうが価値は高い。日本では、女の上がりはやっぱり「母」なんです。結婚しても子どものいない女性は肩身が狭い思いをしがちです。

「産め·育てろ·働け」。結婚をして、仕事をして、子育ても、と政府が求めるこの3点セットは政治学者の三浦まりさんが「ネオリベラリズム的母性」と名付けました。全部やらないと一人前と認めない、と。このプレッシャーは昔より強くなっています。原因は3つ。

1. 政府と財界が要求(人手不足で労働力不足なため、女性も働くことを求められる)
2. 女性が働く機会が増えた(女性が稼げる選択肢が増え、自分のような人生を送らせたくないという母が娘に選ばせるなど、女性側の変化)
3. バブル以降、男性の年収が減少(男性が女性にも稼いでもらいたいと思うように、男性側の変化)

今では、ダブルインカム率が6割を超しました。ですが、この「産め·育てろ·働け」の結果はすべて「妻の負担増」です。みんな「キツイ……大変!」と思っています。

私たちが子ども時代の'82年、夫の年収が700万円以上の母たちの就業率は40%にも満たないが、今や約60%に。

――やはり子どもたちも母親を見て「大変そう」と思っているということ?

〔上野さん〕 
そういうこと。全世界的な流れです。

撮影/吉澤健太 取材/東 理恵 ※情報は2021年8月号掲載時のものです。

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