〇富士登山編
<前編>では、星のや富士での前泊の様子をレポートしました。
いよいよ登山当日。3度目の姉と初挑戦の妹の富士登山の体験記。いつかは登ってみたいと思っている方の参考になれば幸いです。
いよいよ富士登山、チェックアウトまではのんびり
ただならぬ気配で目を覚ますと、富士山とバッチリ目が合う。
今からあそこに行くんだと思うと、緊張とワクワクで目覚めもスッキリ。
テラスリビングでいただけるモーニングBOXをオーダーして朝からピクニック気分。
バスフィッシングで知られる河口湖にちなんで、釣具箱をイメージした木箱に入っているそう。ゆっくりと時間をかけてしっかりと食べて、午後からの登山の準備万端!
チェックアウトまでは時間があるので、昨日は取り組めなかった焚き火で焼くマシュマロを堪能しに、再びクラウドテラスへ。
時間の許す限りのんびりと過ごし、名残惜しいけど出発です。
チェックアウトしていざ富士五合目まで
「星のや富士」の専用SUVでレセプションまで送っていただき、マイカーに乗り換えて集合場所の富士スバルライン五合目までドライブ。富士の裾野から徐々に標高2300mまで上がります。
今まで見えていた富士山が見えなくなり、その懐にたどり着いた頃には気圧が低くなって来るのを感じドキドキ。
富士スバルライン五合目に到着、のんびり身体を慣らす
この先の登山を安全なものにするために、五合目で充分に身体を慣らすことが大切だそう。
「グラマラス富士登山」では個室を用意してくれているので、そこで荷物の整理をしたり、荷物を置いて買い物を楽しむことができるのが嬉しい。ガイドの近藤さんと合流するまでの2時間、好きなことをして身体を慣らします。
富士山五合目にある富士山小御嶽神社は、若かりし頃にご縁があって、開山祭で天狗様と私たち姉妹でお神輿を担いだ思い出の神社。
今回はしっかりと御朱印帳も持参しました。ご利益がありそうな御朱印を頂き、登山の無事をお参り。そのほか郵便局で、山小屋で押してもらえる焼印用の木の葉書を購入。新登場のアマビエ様の焼印は絶対ほしい!
ガイドの近藤さんとの合流に胸が高鳴る
近藤さんの指導のもと、荷物の最終チェックを行い、登山靴の結び方、ザックの背負い方、ストックの使用方法などをレクチャーしてもらいます。
過去2回の登山の時はザックが重すぎて終始肩が悲鳴を上げていたけど、背負い方を教えてもらったら重さがかなり軽減されたのにはビックリでした。ガイドさんがいるのといないのでは大違いなんだど実感……。
このように「グラマラス富士登山」では、登山開始までにじっくりと時間をかけて身体を慣らし準備をする時間が設けられています。
仕事や家事を終えて慌ただしい中でのいきなりの登山や、日帰り登山などのハードスケジュールで体調を崩したり、装備の不足などで登頂を断念するケースも少なくないそう。
至れり尽くせりのサポートを受けて、後は山の天気次第。
本日の目標は八合目手前の山小屋
「グラマラス富士登山」の登山は、日中に行うのが原則。お昼過ぎに出発して日の入りまでには宿泊する山小屋に到着するスケジュールなので、初心者には安心です。
まずは七合目の最後にある山小屋までの4時間を頑張って歩こう!
そんな気持ちで登山開始。
登り始めてしばらくは緑も多く、比較的緩やかな傾斜の道が続きます。
歩幅を狭く歩き、深呼吸を意識することが大切だと近藤さんから教わり、酸素をたくさん吸い込むことを意識しながら一歩一歩前に進みます。
想像していたよりも遥かにゆっくりな足取りで、途中立ち止まり休憩を入れ、六合目に到着する頃には山に身体が馴染んでゆくという感覚を覚えました。
落石に注意しながら山側を歩きます。
過去2回の登山の時は、早くもこの時点でふくらはぎがパンパンで登ったことを後悔していました。
今回は近藤さんの登り方指導のおかげで、下界の景色や高地に咲くかわいい花や植物を見ながらおしゃべりする余裕すらあり、富士登山を楽しめていたことにびっくりです。
七合目からは岩場が多くなり、途中雲の中では雨にも遭遇し、なかなか険しい道中でした。岩場では登りやすいルートを近藤さんがナビゲートしてくれるので、引き続きゆっくりと、大きく深呼吸を意識して地道に進みます。
富士登山のお楽しみのひとつでもある山小屋での休憩と焼印で気分を盛り上げて次の山小屋まで頑張る! を何度か繰り返して、ようやく本日のゴール目前まで辿りつけました。
山小屋の歴史や、いかにして物資を運んでいるかなどのお話を伺えたことは、富士山やそれにまつわる方々に対する感謝の気持ちにもつながり、登山の姿勢にも変化が表れました。
アマビエ様の焼印も無事にゲット!!
雨の中、山小屋でいただいた温かいココアは本当に美味しかった(涙)
海抜3000m東洋館でのおもてなしと絶景に感動の夜
本日最後のクライマックス!
見えているのになかなか辿り着けない岩場を登った先では、星のや富士のスタッフがお出迎えしてくれていました。日の入り前に辿り着けてよかった……。
ここまで登った感想としては、過去2回の時よりも加齢による体力の衰えがあるにもかかわらず、以前よりも辛くなかったということに驚いています。
初挑戦の妹も、息が上がったら立ち止まりを繰り返し、はじめて見る景色に感動しつつ頑張ってくれました。
お部屋に到着してまず目に入ってくるのは、キレイにベッドメイキングされた寝具と星のや富士と同じルームウェアやアメニティ。
その他、歯磨きシートやドライシャンプーが用意されていて、快適な山小屋ステイに心が躍ります。山小屋といえば知らない人と互い違いに雑魚寝するスタイルが一般的なので、こんな素晴らしいお部屋で休めるなんてまさにグラマラス!
足湯と温かい食事は感動の一言。星のや富士スタッフ監修の心のこもったおもてなしで別格の山小屋ステイを体験することができました。温かいビーフシチューが富士山でいただけるなんて夢のようです。
山小屋で休む時がいちばん寒いと言われていた通り、しばらくすると体が芯から冷えてくるのがわかります。
でもポットで温かいお茶をいただいたり、身体中にカイロを仕込むことでポカポカに……。
この時点で気温は4℃と真冬並みの寒さ。
東洋館から見える雲海の幻想的な美しさに、寒さも忘れてはしゃぐ姉妹。
登ることに必死すぎると美しい景色を堪能する余裕も生まれないけれど、こんなふうに姉妹で魅せられて、すでに充実感でいっぱいの夜となりました。
最終日、日の出とともに出発
妹にとっては日本でいちばん高い場所から拝むご来光。
感動のあまりたくさん写真を撮っていました。
出発前のオリエンテーションで、午後から積乱雲が発達して雷雨になる可能性があると告げられるが、今のところ天気は問題なし。
ガイドの近藤さんいわく、昨日までの道のりはハイキング、ここから9合目までがトレッキング、最後の岩場が登山だそう。
朝日に照らされながら、標高3000mから高みを目指します。
平地のおよそ3分の2の酸素濃度の中、“深呼吸・深呼吸”と心の中で唱えながら近藤さんの後に続いて行きます。
標高3200mにある山小屋白雲荘。
日本で2番目に高い北岳よりも高い場所なので、紛れもなく日本でいちばん高い場所を自分たちの足で踏み締めました!
こちらの山小屋は歴史が古く、1733年に「万民を救済したい」と烏帽子岩のたもとで入定(断食をしてミイラになること)された方の姿が祀られているそう。
ここまでの無事に、感謝してお参りさせていただきました。
干支の焼印も人気だそうで、忘れずに押してもらう。
標高3360mの本八合目に到達した頃には、山の景色が一変。真っ白な霧に包まれてしまいました。
近藤さんが雷雨予報を慎重に検討し、これから山頂までに要する時間、下山の時間、下山時の体調、全ての最善を考慮して今回は早めに下山をする提案をしてくれました。
あと2時間ちょっとで登頂なので残念ではありますが、富士山のプロに異論はありません。
登頂だけが目的ではないグラマラス富士登山
登頂の達成感や絶景を堪能するだけでなく、富士山がもつ歴史や日本人に与えた文化的背景を学び、知的好奇心を満たしてくれるところもグラマラス富士登山の目的のひとつ。
近藤さんから伺った、昔は女人禁制だったあらましや信仰の対象としての富士山の物語は興味深く、登山道の鳥居や社にも奥深さを味わうことができました。
そして富士登山700回以上の経験値からのアドバイスによって、より安全な富士登山ができたことがなによりでした。
さて、下山が決まって腹ごしらえ。海抜3400mの富士山ホテルでみんなで仲良くカップ麺をいただきました。
富士山のカップ麺って本当に美味しいんです! 疲れた身体に染み渡るスープに泣けてきます。
ここから約4時間、積乱雲に追いつかれないように下山開始です。
下山時にいつも思うのは、すごく向き不向きがあるってこと。
体幹がしっかりしてるほど転げずにテンポ良く下りられるそうなので、日頃から体幹はしっかりと鍛えておくことが大事だと再確認。
近藤さんの予報どおり、途中から雷雨に見舞われ、遠くで雷の落ちる音も。
そんな時は穏やかな近藤さんも大きな声を出して、避難場所まで走るように指示を出します。
2回ほど重いザックを背負ったままシェルターまで走る経験もできました。
時に命を奪う雷の怖さを知っているからこその下山の決断に感謝の瞬間でした。
雨でびしょ濡れなのに、達成感でいっぱいの笑顔で無事に下山。
今回の富士登山は登頂することはできませんでしたが、近藤さんの言葉でとても印象に残ったことがあります。
「ガイドをするときは、自分の娘をガイドするつもりでやっている!」という言葉。
天気予報を知って心配した私たちの父親が毎日電話をかけてきていていたのを見ていた近藤さんは、やはり父親の気持ちを察して下山を提案してくれていたそう。
いい歳をした娘に毎日電話をかけてくる父親にちょっと恥ずかしかったけれど、近藤さんの言葉にホロッときました。
「<前編>の冒頭の言葉には続きがあって、『3度登ると幸せになる』と言われている富士登山。今回3度目を経験して、辛くて苦しくてもどうしてまた登りたくなるのかがわかった気がします。やはり感動や喜びが勝るからなのでしょう。今回のプログラムでは登頂以外の達成感が盛りだくさんで、特にガイドの近藤さんから伺った富士山にまつわるお話が心に響きました。日本一の山、日本人の誇りである富士山を身体と頭で深く知ることができて、さらに富士山のことが好きになりました。姉妹での一生の思い出が、日本一の富士山だなんて素敵すぎます」
奥ノ谷ふみ
「今回は姉の取材に同行し、富士登山にチャレンジすることになりました。最初で最後であろうと思っていた富士登山に向けて、できる限りの体作りからスタート。登山道具は、提携しているLa Mont https://lamont.jp/ でフルセットをレンタルできたのも気負わずにチャレンジできた要因でした。『星のや富士』での夢のようなおもてなしに加え、ガイドの近藤さんと登る富士山は、初心者にとってこの上ない体験でした。登山を終えてまず思ったことは、来年もまた登りたい! ということでした。そんな自分に驚きです。生涯に一度とは言わず、登りたいと思えるうちは何度でも登ってみたい。そんな心の変化こそがグラマラス富士登山なんだと思いました」
ガイドの近藤光一さんが代表を務める「富士山登山学校ごうりき」
星のや富士「グラマラス富士登山」2021年開催日等の詳細はこちら
取材/木村まい
*撮影時のみ、マスクを外しています。