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Lifestyle特集

「ファッション業界で培った経験や知識が、小さい頃から好きだったモノ作りという世界に足を踏みいれる後押しに」 加藤麻里さん【趣味キャリ生き方図鑑vol.16】

人生100年時代。一つの仕事・肩書だけで働くというモデルそのものが変わりつつあります。結婚や出産等がきっかけで、それまでと全く違った仕事や働き方をスタートさせるケースも珍しくありません。STORY読者の間では‟好き“を仕事にして、耳慣れない肩書で活動している人が増えています。そんな、人生のセカンドキャリアをスタートさせた方を取材。第16回目は、長く関わってきたファッション業界での経験を踏まえて、幼少期から大好きだった‟作る”という世界へ新たに足を踏み入れた女性。ジュエリーブランドmari lagunaを主宰する加藤麻里さんのお話しです。

加藤さんのお仕事は…
ジュエリーデザイナー

34歳で出産し、息子の幼稚園入園を機に、出産前まで携わっていたファッションの世界へと戻ることに。勤務地は家からほど近い鎌倉由比ガ浜のセレクトショップ。商品セレクトや仕入れだけでなく、今までに経験がなかったデザイナーとしてジュリーとバッグを手がけるように。ここでの勤務を経て、より自分らしい作品を制作してみたいという思いが強くなり、2012年、自身のブランドmari lagunaを立ち上げることに。

加藤麻里(50歳)
プロフィール
アメリカロサンゼルスデザイン学校で3年間学んだ後、アパレル企業に就職し、マーケティングやバイヤーとして勤務。結婚・出産を経て、セレクトショップで初めてバッグとジュエリーのデザインを担当。その後、退職し、自身のブランドを立ち上げる。店舗は持たず、不定期に開催されるPop Up Store(主に湘南地区)やネットを中心に販売。昨年はrooms40 creative festival 2020(@国立代々木競技場 第一体育館)に出展。自身の心地いいペースで少しづつ活動の幅を広げている。
HP:https://marilagunacoshop.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/marilagunaco

制作風景と作品たち

「20代の時、数年間留学していたロサンゼルスで足しげく通ったラグナビーチ。あるいは、インドやベトナムの日本では見たことない草花の色。南アフリカに旅した時のミューゼンバーグビーチ。モロッコを題材とした映画の風景……。訪れた海外の街並みやそこでの暮らしの中にある色彩。私の中で今も色あせない印象的な色の調和を、天然石や糸を使い作品の中に投影させています」。

好きを仕事にしようと思ったきっかけis…

経験が投影された‟私の作品“で社会とつながっていたい

小さい頃から作ることが大好きでした。今でも元気にフル稼働しているミシンは、中学生の時に電車に乗って一人で渋谷に行き、手に入れた一台。20歳の時の米国留学の時も一緒に海を渡り活躍してくれました。

ロサンゼルスのデザイン学校卒業後は、日本へ帰国。アパレル企業に勤務し、Display Merchandisingとして2年間勤務しました。大きな転機となったのは二社目の会社で新規事業立ち上げに関わったこと。新しく取り扱う事となった‟ジュエリー”の買い付けを命じられたんです。買い付けのため訪れた国はインド、ベトナム、ヨーロッパ各地、アメリカ各地。ここでの経験や人脈は現在のアクセサリー制作や販売に大きく影響しています。

バイヤーとして多くの経験と知識を積み上げた三年間を経て、再び渡米。刺激的な街‟ニューヨーク“で生活をスタート。ショールームで働き始めて、数か月後に大きな事件が起きたんです。9・11、アメリカ同時多発テロ事件でした。この先の不安を感じ、まだ基盤ができていないうちに帰国したほうがいいと考え、渡米後半年で帰国することにしたんです。

帰国後は結婚。その頃、バイヤーとして世界各国の商品に触れてきた経験を生かして、製作側に行きたいという気持ちが湧いてきたんです。しかし、その反面でマーケティングの経験も積んでいたので、「売る」ことの難しさもわかっていました。なかなか勇気がでなかったんです。次に考えたのは海外デザイナーのアクセサリーブランドを日本で紹介する、ジュエリーのセレクトショップの立ち上げでした。そこで、バイヤーとして訪れたことのあるロンドンのショップに声掛けをしてみましたが……。明らかに先方が大企業とのビジネスを望んでいることを感じたんです。ビジネスの難しさを痛感しました。色々と試行錯誤しているなか、ある企業からの誘いを受け、一年間Merchandiserとして勤務することになったんです。

仕事が忙しくなるにつれ、もっと自分のペースで自分の好きなものを作りたいという気持ちが湧いてきた私は、セレクトショップを退職。本格的に制作を開始し、2012年、mari lagunaを立ち上げました。ブランド名は、留学時代に足しげく通っていたお気に入りのLaguna Beachに由来しています。

材料はすべて自分の好きなものを使い、自分が欲しいと思うようなデザインを作り上げる喜び……。立ち上げ当初はそれが楽しくて、時間を忘れて制作に没頭することもありました。以前は妨げになっていた、ファッション業界での経験や知識が、作る喜びと相まって自信となり、小さい頃から好きだったモノ作りという世界に足を踏みいれる後押しになってくれました。私の「好き」で形作られたジュエリーが色んな人の腕や胸元、耳に添えられ、その人自身の良さに彩を与える存在になってくれれば嬉しいです。

好きを仕事にするまでのスケジュール

1985年 中学時代
現在も現役ばりばりの大切な相棒‟ミシン“と出会い、
大好きなモノづくりの幅が広がる。
1991年 20歳
アメリカ西海岸に相棒のミシンと共に留学。
デザイン学校に通う。
1994年 23歳
卒業後、日本へ帰国。Esprit入社。
Display Merchandisingとして2年間勤務。
1997年 26歳
オンワード系VIA BUS STOP入社。
アクセサリー事業新規立ち上げに伴い、世界各国での買い付けの命を会社より受ける。
2001年 30歳
VIA BUS STOPを退職後、再び渡米。NYマンハッタンのショールームに勤務。
しかしここで9.11を体験。
渡米後半年で日本へ帰国。
2002年 31歳
結婚。
2005年 33歳
アニヤ・ハインドマーチから声がかかり、
Merchandiserとして一年間勤務。
2006年 34歳
出産。
2010年 38歳
息子さんの幼稚園入園を機に、
鎌倉市由比ガ浜のセレクトショップに勤務。

2012年 40歳
2年間のセレクトショップでの勤務後、もっと自分のペースで、自分の好きな物を作りたいという気持ちから自身のジュエリーブランド「mari laguna」を立ち上げ、現在に至る。

1日のスケジュール

今年の4月にサッカー強豪高校に入学した息子は、現在家を出て、寮暮らし。それまではサッカーをする息子の生活リズムに合わせる毎日だったので、今は自分の時間がものすごく増えました。特に、夜のリラックスタイムには、お気に入りのYou Tubeチャンネルを見るのが私の至福の時。中でもお気に入りは、タレント、ホスト、そして高校時代はサッカーに打ち込んでいたというローランドのチャンネル。彼のチャンネルを見ながら美意識を高めたり(笑)、時には「こんな息子がいたらいいな~」なんて思ったり。一人時間を存分に楽しんでいます。

1週間のスケジュール

45歳の時に多発性硬化症を発症したため、ジュエリー制作の細かい作業に没頭するような状態にならないようスケジュールを組んでいます。もちろん、Pop Up Storeの出店等の前はリラックスタイムを制作時間に充てることもありますが、なるべくからだには負担をかけないよう心がけています。週末は夫との時間。以前までは、夫の週末はもっぱら息子のサッカーの試合観戦。しかし、今は自宅から遠い学校のため気軽に行けず、私との時間へと変わっていきました。ショッピングしたり、海まで一緒に散歩したり……。ファッション関係の仕事に従事している夫と過ごす時間が、時には作品のアイデアをもたらしてくれることもあるんです。

加藤さんに3つの質問!

使用する材料へのこだわりは?

暮らしている鎌倉材木座は、海や山などの自然多い地域。この環境がとても気に入っています。この美しい景色を子供や孫の代まで残していきたい。美しい自然を守るという意味で、私の作品に使用する材料は天然石やシルクコードなどの自然由来の物を積極的に用いています。人工的には到底出せないような美しい色。カラフルな色彩のジュエリーが元気をくれると、多くのお客様が言ってくださいます。

作品のインスピレーションは?

大好きなイラストレーター・密田恵さんの絵が、私の作品に多くのインスピレーションをもたらしてくれます。彼女の絵、中でも柔らかい色合いが大好き! 自分の作品だけでなく、私自身、彼女の絵を眺めていると、気持ちがとても癒されるんです。彼女の絵は医療やメンタル系の雑誌に使用されることが多いというのも納得できます。

日ごろ欠かさないことはありますか?

自然とのふれあい。海からほど近い材木座から鎌倉駅まで、徒歩で毎日買い物に行きます。少し遠回りになるけれども、海沿いを歩いて行くのが私の日課。徒歩で片道30分程の道のりを、散歩しながら海を見たり、近所に咲いている季節ごとの花を眺めてみたり……。この買い物 兼 散歩は、心とからだの健康維持にも大切なんです。お花を飾るのも大好き! 自宅の庭の花、近所の人からいただいたお花、買ってきた花。癒しを与えてくれて、時にジュエリーデザインのインスピレーションまでも与えてくれます。

撮影/BOCO 取材/上原亜希子

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