● 舞台 『醉いどれ天使』に出演する桐谷健太さん(41歳)
桐谷健太(きりたにけんた)
1980年、大阪府出身。2002年にドラマ「九龍で会いましょう」でデビュー。 ’07年『GROW 愚郎』で映画初主演し、 ’08年のドラマ「ROOKIES」で注目を集める。映画、ドラマ、CMを中心に活躍し、ミュージシャンとして「第67回NHK紅白歌合戦」にも出場。近年の主な出演作品は、NHK連続テレビ小説「まんぷく」、ドラマ「ケイジとケンジ~所轄と地検の24時~」「俺の家の話」、映画『火花』『ビジランテ』など。主演映画『ミラクルシティコザ』が’22年に公開予定。
★ ○○しなきゃとか、○○すべきみたいな考えを 1回取っ払って、自分の感覚を大事にしながら、 流れに身を任せていきたい
–「稽古はこれからですし、なにせ12年ぶりの舞台。未知数なところが楽しみですね。ただ、自分にとって間違いなく素晴らしい経験になるだろうなという予感はあるので、しっかりと味わっていけたらと思います」
そう話すのは、舞台『醉いどれ天使』に出演する桐谷健太さん。2009年の初舞台『恋と革命』以来、2作品目となる主演舞台に挑みます。黒澤明監督と三船敏郎さんの初タッグ作品となった、1948年公開の同名の映画を舞台化したもので、演出は三池崇史さんです。
–「出演が決まった時は、率直に嬉しかったですね。〝目がギラギラしている〟とよく言われた20歳前後の頃、何度か〝若い頃の三船敏郎さんみたい〟と言われたことがあったので、黒澤監督作品で三船さんを観るたびに、勝手に親近感を抱いていたんです(笑)。しかも、この舞台のお話をいただく1週間くらい前に、三池監督と久々にお会いする夢も見たんですよ(笑)。なので、縁を感じたと言いますか、何かこう〝繫がったな〟という感覚がありました」
戦後の混乱期を舞台に、闇市を仕切る肺を病んだ若いやくざの松永と、酒好きで口は悪いが腕は確かな人情家の町医者・真田の交流を描く本作品。脚本を手がけたのは蓬莱竜太さんです。時代背景の補足とともに、登場人物のキャラクターや関係性が細やかかつ魅力的に肉付けされ、アクションやダンスシーンも盛り込まれています。野性味と繊細さをあわせ持った桐谷さんの魅力が、存分に発揮されそうです。
–「僕が演じる松永の故郷への想いや、何気ない日常の描写が、読んでいるとすごく染み込んでくるんです。本当は家族に会いたい気持ちがあるのに、自分を恥じて帰ることができない松永は、時代の濁流にのみ込まれてしまった男。時代が違っていたら、きっと違う生き方をしていたんじゃないかなと思います。当時の状況を感じながら、そんな松永の素直になれない悲しさを体現したいですね」
澄んだ大きな目が印象的な桐谷さん。5歳の時に初めて映画館で『グーニーズ』を観たことが、役者になろうと思ったきっかけなのだそう。
–「辛いこともありましたけど、やっぱり〝この仕事がやりたい!〟とか〝好き!〟というワクワクした気持ちがあったからこそ、やってこられたように思います」。
現在、41歳。程よく肩の力が抜けたナイスガイは、「○○しなきゃとか、○○すべきみたいな考えを1回取っ払って、自分の感覚を大事にしながら、流れに身を任せていきたい」と言います。
–「そうすると、想像もしなかった面白いことが起きたりするんですよ。もちろん、これからも色々あるとは思うんですが、自分がワクワクする感覚は大切だなと最近また改めて感じています。子どもの頃の自分が、今の自分を見た時に〝なんでそんなしんどそうな顔して仕事してんの〟と思ったら嫌ですしね(笑)」
ちなみに、29歳で初舞台を経験した頃は「まだガチガチに力が入っていましたね。セリフを忘れたらどうしようとか、声が嗄れたらどうしようとか、そんなことばっかり考えていたなあ(苦笑)」。
–「今回は、そこはもう自信をもってやるつもりです。戦後間もない頃の闇市で、もがきながらも懸命に生きる人たちの姿を、しっかり届けられたらと思っています。生のエネルギーを、ぜひ感じに来ていただけたら嬉しいです」
<舞台 『醉いどれ天使』2021年9月3日開幕!>
戦後間もない闇市を仕切る松永は、銃創の手当てをした町医者の真田に肺病の治療を勧められるが……。
9月3日~20日/東京・明治座 10/1~11/大阪・新歌舞伎座
www.yoidoretenshi.jp
桐谷さん:シャツ¥37,400(エズミ/RI Design)
撮影/網中健太 ヘア・メーク/石崎達也 スタイリスト/岡井雄介 取材/岡﨑 香 ※情報は2021年9月号掲載時のものです。