教育ジャーナリストの鳥居りんこです。
数回にわたりました「実際に気になる学校へ行ってみよう!」編、今回は主に6年生のママたちに向けて語ってみましょう。
秋から入試直前までは、複数回にわたって学校説明会を組む学校がほとんどです。
6年生秋ともなると志望校のラインナップが組まれていることが多いので、ママの中には「受験予定の学校には行ったことがあるから、もう行かなくていいわ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
これもご家庭の考え方次第ですが、もし、受験予定校の説明会が入試直前まで複数回、開かれているのであれば、ご都合を付けて参加されることをお勧めします。
「え?『説明会での内容はどの回も同じです』って明記されているのに、すべてに出向くの?」と思ったあなた。
それは正しいご指摘です。皆さん、お忙しいので、すべての説明会に参加する必要はないですし、“定員ありき”が普通ですので、他の人に席を譲るという慈愛の心に溢れた方もおられるでしょう。
しかし、例え「勝手知ったる学校」であったとしても、6年生ママは可能であれば、最終説明会のいずれかの回にはエントリーしておくことをお勧めします。「すべて同じ内容です」と断りが入っていても、秋には秋でしか聞けないこと、晩秋には晩秋でしか聞けない内容が含まれており、初冬、師走、受験直前もそれぞれ同様です。
嬉しいことに、秋以降は6年生には特別に入試体験教室を組む学校もありますし、親には具体的入試対策を説明していくこともあります。
なぜなら、入試直前説明会が開かれるころには、入試問題が完成しているからなんですね。もちろん、問題そのものを教えてくれることはありませんが「ここまで開示してくれるの?」という攻めた説明会をなさる学校も少なくありません。
何よりも、同じ学校であっても、説明会に複数回参加することで、より深く、その学校を理解できるようになることが一番のメリットです。
さて、第9回で「説明会の予約を取るために名まえ、メアド等を書き残しておくことは決して損にはならない」という話をしました。
私立中高一貫校は良い意味で評判をとても気にしております。自校が更に発展するためには、どうすればよいかについては貪欲でして、それ故、アンテナを立てて、あらゆる情報収集に熱心なことが多いのです。
この学校説明会に於いても、それは顕著でして、情報発信と同時に情報収集にも余念がないんですね。
皆さんが、何年生のママで、どの地域からいらして、どこの塾に通っているのか。更にはアンケート等を通じて、志望理由、どこに魅力を感じているのか、中には、併願予定校などの情報を収集する学校もありますが、これはすべて、より良い学校運営に生かそうとしている行動なわけです。
もちろん、受験生にもメリットがないわけではありません。「参加した」という実績を残すことにより、優遇されるケースもあるからです。
それは「繰り上げ合格」。この同点のライン上に何人もがひしめき合っている時に威力を発揮することがあるのです。
先生方に「いつも熱心に通ってくれているご家庭」と記憶の片隅に留めていただければ、繰り上げ合格の際に優遇されるケースもあるよってことです。もちろん、繰り上げ合格に値する点数を取っていることが大前提ですが、もし、熱望校がある場合はチャンスになるかもしれません。
繰り上げ合格者は複数回受験者の中から、或いは何度も来校してくれているご家庭から選ぶとする学校は少なくありません。基本的に私学は「第一志望のご家庭に門戸を広げたい」という思いが強いんです。
何故ならば、私立中高一貫校はその理念に賛同された人たちが集う場所。いわば、ファンクラブ員たちの集まりなわけですから、「この学校が大好き!」と分かる行動をしてくれたご家庭を優先したいという意識が働くんですね。
意外と先生方は熱心に通ってくださるママのお名前を覚えているものなんですよ~。
今年も某女子校の先生が「何度も本校を訪ねてくださった〇〇さんが合格だって分かった瞬間は涙が出た」とおっしゃいましたが、この手の話は毎年、色んな学校の先生から伺います。
中学受験は親子の受験です。子どもががんばっているのですから、親も自分ができる最大限の援護射撃でお子さんを支えてあげてください。
このコロナ禍における緊急事態宣言で秋の学校説明会もリアルで開催されるかが不透明ではございますが、この晩夏の時点では多くの学校が受け入れ人数を絞った上での実施を予定していますので、各校のHP等で情報把握に努めてくださいね。
次回は9月15日にお会いしましょう。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
ブログ:湘南オバちゃんクラブ https://note.com/torinko
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香