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科学が教えてくれる動物たちのために本当に私たちがすべきこととは

コロナ禍で在宅時間が増え、ペットを飼う方が多いと聞きます。でも、中には、飼いきれず、捨ててしまう人も。自治体では、殺処分ゼロへの取り組みが実施され、数は減っています。しかし、背景には、愛護団体やボランティアが引き取る数が増加したことで、保健所の引き取り数が減ったという実態も。今回は、人と動物がともに生きる社会の実現に尽力する方々にお話をうかがいました。

加隈良枝さん(48歳・東京都在住) 帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科准教授

感情論とは別。
科学が教えてくれる動物たちのために本当に私たちがすべきこと

「大学時代は動物行動学を学びました。学びを深めるにつれ、私たちは畜産、動物園やペットなど様々な形で彼らから恩恵や癒しを受けているけれど、動物たちは一体何を感じているのか?という素朴な疑問を抱くようになったんです」と語る加隈良枝さん。現在は帝京科学大学で犬や猫の行動学と動物福祉に関する研究を行っています。

人は動物の行動に惹かれ、彼らを飼い始めます。しかし、動物との暮らしを放棄する理由もまた、その行動から。一緒に暮らす私たちにとっては不都合な行動、いわゆる“問題行動”も、彼らの置かれた状況下では正常な反応であり、問題行動ではないことがわかることも多いのです。
「多くの時間を動物たちの行動観察に費やし出した結論は、私たちが今まで信じてきたものが、必ずしも彼らにとって最善ではないということ。動物たちの行動意図を考えるとき、個人の思い込みだけで判断しないで、動物をちゃんと見て、知ってほしいのです」。

行動学と共に、加隈さんが専門としているのが「動物福祉」です。「動物福祉とは、動物が幸せかということ。動物を苦痛から救うためにはどうしたらいいのか? 日本では、そのことが科学的な根拠や理論で語られることが少なく、『殺処分は良くない』や『可哀想』という感情論で議論されることが多く感じます。動物愛護に携わる方々の中にはデータや根拠に即していない独自の考えを持つ方も多く、活動家同士の意見の相違から個別の活動が多く見られます。動物福祉活動の盛んな欧米の団体は、科学者や専門家を抱え、科学的根拠を基にした共通認識を持って活動していることも多いです。日本でも、そうした共通認識を持って活動することができれば、全体力が高まり、より効率的で効果的な活動ができるはず。私もそのお手伝いができればと思っています」。

動物福祉の研究者として、加隈さんが日常的に念頭に置いていることがあります。「動物に優しくありたいので、“消費者”や“利用者”として何を選ぶかを心がけています。食品を選ぶときも、味や安全性に加え動物の飼育方法も含め商品を選ぶ。高くてもバタリーケージの卵ではなく平飼いの卵を選んだり、ペットを飼うときも安売りのペットショップよりきちんと愛情と手間をかけている店から子犬を購入するといったことを考えていく。そういったことが動物の飼育方法や扱われ方に大きく影響するのだということを考えてほしいと思います」。

  • キャンパス内には行動観察の際に活躍してくれる犬や猫の飼育室が完備。
  • 学内に建てられた附属動物病院。同院では、加隈さんが問題行動カウンセリングを担当されることも。
  • 学内で飼育されている猫。学生たちに大切に飼育されています。
  • 英国留学時に使用していた動物福祉学のテキスト。日本語の専門書がなかったので帰国後に、出版社と交渉し出版。監訳を担当しました。
  • 中学時代に10歳の愛猫と出場した『日本猫コンテスト』。見事『敬老賞』を獲得!
  • 留学先は英国のエジンバラ大学。旧市街にある寮近くにはエジンバラ城も。
  • NHKあさイチでの一枚。「メディアを活用し、研究による知見を還元できればと思っています」。

撮影/BOCO 取材/上原亜希子 ※情報は2021年11月号掲載時のものです。

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