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「犬を売っているのではなく、人生を売っている」ブリーダーの立場から見たペットの命とは

コロナ禍で在宅時間が増え、ペットを飼う方が多いと聞きます。でも、中には、飼いきれず、捨ててしまう人も。自治体では、殺処分ゼロへの取り組みが実施され、数は減っています。しかし、背景には、愛護団体やボランティアが引き取る数が増加したことで、保健所の引き取り数が減ったという実態も。今回は、人と動物がともに生きる社会の実現に尽力する方々にお話をうかがいました。

萩原京子さん(55歳・千葉県在住) ウィペット・ブリーダー/ 犬服専門店「ippuku」主宰

家族と犬の幸せのために迎え入れる家族を選び、
計画的に繁殖をすることが 私の役目です

萩原京子さんは、千葉県西船橋でウィペットとイタリアングレーハウンドの犬服専門店「ippuku」を経営しながら、ウィペットのブリーダーとして活動しています。

元々、飼っていた小型犬に赤ちゃんを産ませたいと繁殖したことがきっかけで、ブリーダーになりました。そんな萩原さんとウィペットとの出会いは’18年のこと。「宝石のように美しい姿に、一瞬で魅了されました。それが、ここにいるテンです。現在、テン、ポ、リンの3匹と、一緒に暮らしています。これまでに約50匹の子犬たちが巣立っていきました」。

萩原さんは、ペットを取り巻く現状に疑問を呈します。ガラスケースに陳列された子犬たち、家族が決まらない子犬の末路…、“ペットも家族”と言いながら、余剰犬を生み出す現実。萩原さんは、この矛盾に果敢に挑みました。「まず子犬が生まれる前に、家族を決めることにしました。生まれていないため子犬は見られません。そこで店舗にいる親犬たちを見て、成長した姿をイメージしてくださいと伝えています。これが余剰犬を出さないための大切な取り組みなんです」。この考えに賛同してくださる家族が集まったときに、計画妊娠させています。

そして犬を迎え入れた家族に、お願いしていることは“困ったときには頼ってほしい”ということです。「人生、何が起こるかわかりません。病気、事故、被災など…飼い続けることが難しくなったときには、どうぞ私に返してください。ippukuファミリーたちもいます。だから安心して頼ってくださいとお伝えしています」。

そんな萩原さんの喜びをお聞きしました。「生後60日までは、毎日2時間睡眠の日々。世話は大変ですが、待ってくださる家族のために頑張れます。そして家族にお渡しするときに、いつも思うのです。“犬を売っているのではなく、人生を売っている”のだと。犬がいることで家族の会話が増えたり、嫌なことがあっても癒してくれたり、あるいは犬の病気や怪我で心配したり。犬がいるから一喜一憂することができ、それが人生の彩りになっていると思うからです」。

最後に萩原さんは、こう話します。「ペットを迎える選択肢は様々です。私は、自分が考え抜いたことをしているだけ。それに賛同してくださる方たちが集まったときに、計画妊娠させて、生まれてきた大切な子犬をお譲りするのです。犬と家族の幸せを追求することが私の信念です」。

  • 生後2カ月の子犬たちを飼い主にお送りする卒園式。萩原さんは「いってらっしゃい。また会いましょう」と見送ります。
  • テン・ポ・リンの3匹の繁殖犬と、生活を共にしています。
  • 可愛い子犬の時期は一瞬です。衝動的に飼ってしまうのは、犬にも飼い主にも不幸なだけ。萩原さんは成犬の姿を見てもらい、共に過ごすイメージを持ってもらうことを大切にしています。
  • 休日のドッグランには、ippukuファミリーが集うこともあります。
  • 母犬の妊娠~子犬の巣立ちまでの成長記録を小冊子にまとめ、ご家族にお渡ししています。
  • 母犬の妊娠期に、ご家族に来てもらっています。「お迎えする家族の子どもたちは、母犬に安産祈願のお守りをつくってくれました。待ち望まれて生まれくる命なんです」。

撮影/BOCO 取材/高谷麻夕 ※情報は2021年11月号掲載時のものです。

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