● 舞台『彼女を笑う人がいても』に出演する 瀬戸康史さん(33歳)
★ 生のお芝居からは、プラスのエネルギーをもらえるような気がします
–「無台をやるたびに、いろいろなことを思い知らされるんです。自分を成長させてくれる、すごく大事な場所ですね」
そう話す瀬戸康史さん。12月に、活躍目覚ましい気鋭の劇作家・演出家、瀬戸山美咲さんが書き下ろし、現代日本演劇界を代表する演出家・ 栗山民也さんが演出する新作舞台に出演します。タイトルは『彼女を笑う人がいても』。現代と1960年安保闘争の時代を舞台に展開する、無力感に苛まれていた新聞記者の青年が、今は亡き祖父もかつて新聞記者だったことを知り、祖父がなぜ記者を辞めたのか調べ始める……という作品で、瀬戸さんは新聞記者の青年と、年前の祖父の二役を演じます。
-「プロットを読んで、瀬戸山さんはコロナ禍にある今というものを描きたいんだなと、まず思いました。安保闘争が題材ではあるんですが、テーマの一つになっている〝声なき声〞は、今の 僕らの暮らしともすごくリンクしていて。いつかご一緒したいと思っていた栗山さん、瀬戸山さんと、このタイミングでこういう作品をやれるなんて、何かこう計ったようにいろいろな巡り合わせが重なったなと感じています。お二人とも、お芝居の基本ともいえる〝人と人との会話〞を大事にされている印象があるので、稽古で共演の皆さんともたくさん話をしながら、役としてつの時代をしっかり生きたいです」
今回演じる役柄は、実年齢とほぼ同じ32歳だという瀬戸さん。ご自身が30代のうちにやっておきたいことは?と尋ねると、う〜ん……としばらく考えて、「今のところ、ないです」。そもそも、年齢をあまり意識していないそうです。
-「30代、40代と区切ることに、僕はあまり意味を感じていなくて。20代になる時は、法律的にも大人になるということで、気持ちが引き締まるようなところがありましたけど、そこからはもう、その人次第じゃないですかね」
20代の頃から変わらぬ美肌の秘訣も、「保湿と、気にしすぎないこと」だと言います。
-「たとえば、ちょっとした吹き出物ができたとしても、自分以外の人には意外と見えていないもの。それをいちいち気にしていたらストレスになるし、生活がしんどくなりますよね」
穏やかな表情に、内面の充実ぶりが滲む瀬戸さん。ジャンルを問わず幅広く活躍しているのも、きっとこうして自分をしっかり持っているからに違いありません。
-「ネガティブな思考になりすぎて立ち止まってしまうことが、いちばんよくないと僕は思っていて。コロナ禍に対しても、もちろん不自由さは感じていますが、その中でやれることを見つけていくしかないとずっと思っています。僕はお芝居を観に行く時も、いつもどこかに希望を見つけて帰るんです。どんなに悲劇的な話であっても、生のお芝居からはプラスのエネルギーをもらえるような気がします。悲しい出来事は描かれていますが、それでも僕らは未来に向かって進まなくちゃいけないというメッセージが込められたこの作品。頑張っていこう!と思ってもらえるようなものになると思うので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです」
<『彼女を笑う人がいても』 12月4日開幕>
新聞記者の伊知哉は、亡くなった祖父・吾郎もかつて新聞記者であったことを知る。 彼が記者を辞めたのは1960年、安保闘争の年だった……。
作/瀬戸山美咲 演出/栗山民也 出演/瀬戸康史、木下晴香、渡邊圭祐、近藤公園ほか
12月4日~18日/世田谷 パブリックシアター 福岡、愛知、兵庫でも上演
https://setagaya-pt.jp/performances/202112kanojyo.html
撮影/網中健太 ヘア・メーク/小林純子 スタイリスト/田村和之 取材/岡﨑 香 ※情報は2021年12月号掲載時のものです。