「実は楽しい中学受験」シリーズ、様々な角度から中学受験を綴っております。今回も前回に引き続き、中高一貫校の“校則”について綴ってみることにします。
人が集まるところにルールあり!ですが、ルールとは多種多様な考えを持つ人間たちが平和で安心安全な環境を保つ目的で整備されることが多いでしょう。学校も社会のひとつですので、大勢の人たちが同じ時、同じ空間を共にしている関係上、そこにはルールがありますが、それを明文化したものが校則になります。
特に、私立中高一貫校には独自の風土・文化がありますので、校風も様々。世間一般でいうところの厳しい校則で知られる学校もまあまあな数、存在しています。
校則が「こんなに細かくある!」という男子校にお邪魔した時のことです。生徒さんに次々とインタビューしていき、校則のことを聞き回ったことがあります。
「校則、厳しいですか?」
「注意がうるさいと思ったことはないですか?」
そんなこんなを中学生から高校生まで、ザっと1クラス分くらいの生徒さんたちに聞いたのですが、答えは、全員が「NO!」。そもそも、校則の存在を意識したことがないというのです。
一番、言い得て妙だ!と感心した高校生の答えがこれでした。
「校則が細かくあるのは当然、知っていますが、特に厳しいと思ったことはなく、てゆーか、取り締まりすらあったことがないです。民法みたいなもんですかね?」
さすが、法学部志望の子の回答だなと感心したのですが、彼は、細かい決め事はないと困るので設けられているが、要は法律と同じで、その範囲内で常識的に暮らしていれば、その法律に引っかかることもなく、ごくごく平和に暮らしているという意味合いのことをおっしゃったのです。
校則というルールは明文化されているものの、違反者がいないので、事実上、ないも同然ということのようでした。
一方で校則が厳しいことで知られる女子校さんでも、同じように多くの生徒さんに聞いて回ったことがあります。
「厳しい校則で嫌になったことはありませんか?」
もちろん、「ちょっと厳し過ぎる・・・」と苦笑された生徒さんもいなくはなかったのですが、その割合は極めて少数派。反対に「このくらい厳しい方がむしろいい」という歓迎派の方が断然、多かったのです。
「髪の毛を結わくゴム色が黒と紺だけ」「傘の色も指定あり」の学校ですが、高校生の生徒さんたちが教えてくれるに「逆にその方が楽」なのだそうです。
ある生徒さんがこう説明してくれました。
「制服があると何を着て行こうかと迷わなくて済むメリットがありますよね?髪ゴムも、それと同じなんです。もし、どんな色、どんな素材でもOK!となったら、やはり女の子なので、毎朝、それに悩む時間が生じてしまうと思うんです。
それで、学校に来て、周りの子たちの髪ゴムが目に入りますよね。すると、やはり女子たちの集団ですから、そこで比較があったり、批評があったりってことが良くも悪くも出ると思うんです。でも、そこに『黒と紺の2択』っていうルールが存在すると、比べる必要も、悩む時間も自動的になくなります。
時間は有限ですから、そこに割く必要がないってことはある意味ではとても楽ってことになります。一生、ゴムの色を選べないわけではないですし、もちろん、休日などにはプライベートファッションを楽しんでいる子も沢山いると思いますので、学校にいる時くらい、誰と比べることもない、ただの私でいられる時間も気に入っています」
髪ゴムは一例ですが、こういう考え方もあるのか!?と感心しながら、高校生たちの話を聞いていたことを思い出します。
中学受験は、その志望校となる学校が、どういう学校なのかということをあらかじめリサーチすることが可能であり、当然ながら、校則も含めて、その学校が意図している教育方針を理解した上で入学してくる子がほとんどなのですね。
学校にお邪魔して、生徒さん達にアトランダムにインタビューをさせて頂くと、その生徒さん達の「自分の学校が大好き!」って思いをヒシヒシと感じることは本当に沢山あります。
厳しめな学校がいい、自由な学校がいいと人の好みは様々ですが、入学する前から、自分に合っている学校を選べるというメリットがある受験は「自然体な自分でいられる」環境を手に出来るものなのだなぁ・・・と、改めて、中学受験がブームになっているのも無理はないと思うところです。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香