行ったことはあるけれど、ただ「きれい!」で終わってませんか? チームラボボーダレス――この新感覚ミュージアムが目指す「共創社会」について、子どもたちと一緒に考えてみます。
【アートで共創教育 連載vol.1】デジタルアートは「インスタ映え」だけじゃなかった!
飽き性の子どもたちを飽きさせない仕掛けと技術
初回記事の後に
「噂は聞いてたけど、まだ行ってないの~」
「子どもが行きたいって言ってるんだけど、チケット取れないんでしょ?」
「豊洲には行ったよ。一緒でしょ?」
といった声をいただきました。
それを聞いて、ライター東理恵、思わず大阪弁で叫んでしまいました。
「いやいや、ホンマ行かな、もったいないって!」
まだ行かれていないという方も思ったより多かったみたいです……。
百聞は一見に如かず! チケット取れます! お台場も行って!
ちなみに豊洲にあるのは「チームラボプラネッツ」“水に入るミュージアムと花と一体化する庭園”で、お台場のこちらは「チームラボボーダレス」“地図のないミュージアム”。どちらもチームラボによるデジタルアートの展示空間ですが、コンセプトも展示内容も別物です。
「チームラボボーダレス」は暗闇の中を進み、順路のない展示空間内で迷子になる巨大な展示空間が特徴。中で働いているスタッフでさえ、最初は迷ってしまうといいます。実際、取材の時も「あれ? ここだったっけ?」と行ったり来たりです。
子どもって、行きたいところにしか行かないし、飽き性だから、ウロウロしますよね。子ども2人と一緒だと、左右別々の方向に行って、それぞれ好きなことを言って、バラバラになって……。カラフルな世界で半ば迷子の状態。でも、それでいいんでしょうね。そこで、何を思い、考えるか、が大事。しかも、ここには子どもたちを飽きさせないものがいっぱい。娘・息子・母の3人でじっくりと、新しい価値観・発見を探してきました。
人間に反応してランプの光が次から次へと伝わっていく
チームラボボーダレスの一番人気といってもいい「呼応するランプの森」。ランプはすべて特注手作りのムラーノ・ガラス(ベネチアン・グラス)です。
ランプの森は、季節と時間によって作品が変わり、冬の限定作品は、青くランプが輝く「呼応するランプの森 – ワンストローク、氷洞」だそうです(写真のようにピンクにも光る「呼応するランプの森 – ワンストローク、メトロポリス」にも出会えました)。
このランプのスゴイところは他にもあります。
人に反応するとランプの光は、いちばん近いランプが強く輝き、その次に最も近い2つのランプに伝わっていく。そうやって、次々と連鎖していくランプの光は、一本の光の線でつながっていき、最後には最初のランプに戻ってくる。しかも、一度通った光のランプには重ならず、すべてが一本の光の線でつながるというじゃありませんか!
絵で書くと、↓ こんなふうに光のランプがつながっていたなんて!
広報の桑原さんに聞くまで、全然知らないことだらけでした。子どもたちも、「え? これ一本の光なの? 重なってないの?」とびっくり。
ランプの配置は数学的なアルゴリズムに基づいているそうです。
感覚的なものだと思っていたアートに、私の苦手な数学が使われていたなんて!
ぱふぱふ・ポンポンしながら重力について考えさせられる世界
次に「重力にあらがう呼応する生命の森」では、重力にあらがって浮く巨大な球の動きに夢中になりました。
「ママ、おっきいタマゴ~見て~」
「玉が浮いてる~!」
「上に押して飛ばしてみていいの?」
「いいよ、どうぞどうぞ!」
触ったり押したり。
「なんで落ちてこないんだろう……」
「うん。そうだよね。不思議だね。重力があれば、普通球は下に落ちてくるはずなのにね」
「タマゴの先っぽが下向いてるのもある……」
「確かに普通はタマゴの先っぽが上を向いているよね」
いろんな疑問を抱きながら、子どもたちにとっては重力を考える勉強になっていることに気がつきました。
「色が変わっていくんだけど、どうしてなの?」
娘の質問に、広報の桑原さんが答えてくれました。
「向こうのほうから色が変わっているのは、向こうに人がいるということなんだよ。人が触れたところから色が変わっていくんだよ」
と教えてくれたと思ったら……
「かくれんぼしようよ~!」
と息子が駆け出していき、
巨大タマゴの後ろにかくれんぼ。
はい、すぐに見つかりました。
そして、なるほど見事にタマゴの色が隠れていた場所から変わっていきました。
同じ空間にいる他の人の存在を普段より意識する――そんな仕掛けのアートです。
「なんか、かわいい音もしてる……」と娘。
「光っている球は触れると、色を変えながら音が鳴るんだよ。そして次々と隣に伝播して、光と音が作品内に呼応していくんだよ」と広報・桑原さん。
普段の生活ではほとんど意識しない重力を、こういった場所で考える機会があるとは思ってもみませんでした。子どもたちにとっては、ちょっとした理科の勉強です。
40代の私も、日々下がっていく顔や体の‟老いの重力”にあらがいたいですが……。
娘と息子は、タマゴたちを抱っこして、ぱふぱふ・ポンポンしながらいろんなことを考えたようです。疑問を持ちながら、いっぱい考えて、自分なりの答えを導いてほしい。私自身は、苦手な数学や理科が、こんなに楽しいことに生かされていることに驚きました。
もっと私も、勉強しないと!
【アートで共創教育 連載vol.1】デジタルアートは「インスタ映え」だけじゃなかった!
取材/東 理恵 撮影/西 あかり
https://borderless.teamlab.art/jp/