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【アートで共創教育 連載vol.9】デジタルな河原の中での飛石遊びに母が思ったこと

行ったことはあるけれど、ただ「きれい!」で終わってませんか? チームラボボーダレス――この新感覚ミュージアムが目指す「共創社会」について、子どもたちと一緒に考えてみます。

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空間認識能力を養う「飛石遊び」は交通安全にも役立つ!?

先日、私の娘が学校帰りにランドセルを放り投げ、友達と縄跳びをしながら帰ってくるのを発見してしまいました。
娘は「キャ~、見つかった!」と叫び、周りのみんなは逃げ帰っていきました……。
逆に息子は、早く帰って来たいがために毎日ひとりで走って帰ってきますが、「この前、道路を渡る時に車が飛び出してきたんだよ」と……。

「え~! 大丈夫だった? 怖いよ!」

5~6月の子どもたちは、進級した学年にも慣れてきて、学校の行き帰りの交通安全に注意が必要です。
車を運転したり、自転車に乗る人たちも、春の環境変化による疲れや気候の変動で注意散漫になりがちな時期ですから。

さて、そこで……突然ですが、今こそ親子で「飛石遊び」をしましょう!

昔、遊びましたよね? 川を渡るために、飛び飛びの石をぴょんぴょんと乗り移る、あの遊び。
実は飛石遊びをすることで、子どもの空間認識能力が発達するのだそうです。危険予知を察するのが早くなるんだとか。
学校からの帰り道、〈あの角から車が良く出てくるから注意しよう〉〈この商店街は自転車が後ろから来るから気をつけよう〉――そんな先の見通しを立てる空間認識力が鍛えられます。目の前の信号だけでなく、歩道に人がいるか、曲がり角から自転車や車が来るかどうか、注意深く幅広い視野で見ることができる。

一方、親としては、飛石遊びで「ジャンプ力」を鍛えましょう。
歳を取れば取るほど、ジャンプすることもなくなって、たまに上に置いている荷物を取るためにジャンプしたりすると足をぐねってしまったり……。
「あぁ、無理せず脚立を使えばよかった」と後悔したり……。
体幹が弱っていることを痛感します。
思考力だけでなく、親は子どもに負けない体力をつけることも必要。
子どもはすぐに「ママは、こんなのでしんどいの~(笑)」と言い出す。
いえいえ、子どもにまだ負けてたまるもんですか!

見た目だけではわからない飛石は、まるでソファの上の感覚!

そして、チームラボボーダレスの創造的運動空間「運動の森」にもありました。
その名も「インビジブルな世界のバランス飛石」という作品。

「インビジブル」とは「目に見えないもの」「視覚だけではとらえないもの」。
サンテグジュペリの『星の王子さま』みたいですね。

「大事なものは、目に見えないんだよ」

 飛石といいながら、素材は石ではありません。1人用のソファを飛び続ける感触です。そう、ここではソファのようなものの上を飛んでも怒られない(笑)。
子どもって、どうしてソファやベッドを見ると飛びたくなるんでしょうね。息子やその友だちも小6にもなって、うちのソファの上で飛び跳ねています。ソファをトランポリンのように思ってしまうのでしょうか……。
そういえば、以前STORYで赤江珠緒さんに取材した際、お子さんがベッドの上で飛びまくるので代わりに小さなトランポリンを購入したと言っていました(笑)。

でも、ここ「インビジブルな世界のバランス飛石」は、ソファのように柔らかい飛び石になっているために足元が不安定。見た目だけではとらえられない、飛び乗ってこそ初めてわかる感覚。次の飛び石に早く移動しないと、体はぐにゃりとなって沈み込んでゆく……。ずぶずぶ沼にハマる感覚です。

これは大人にはしんどいです。体重増加した私には、飛び移るのが本当に大変な作業です。
「よいっしょっ」
思わず出てしまった声にオバ化を実感……。

子どもたちは体が軽いので、ぴょんぴょん飛び移っていきます。

うん? 感触を確かめながら飛び越えてゆく息子

立方体、直方体、家の屋根のように上部が斜めになっているものもあり、乗ったときの感覚が全く違う。また、踏む度に飛び石の色が空間に広がったり、様々な音色を響かせるので、作品がどんどんと変わっていきます。
息子は一歩一歩飛び越えながら、脚とからだ全体で感覚を楽しみながら「この斜めの石、片脚だけで立つとめっちゃムズイ」。なんだかんだで、息子は体感して受け止めながら、それなりに考えているようです。
どこへ誘っても、最近は一緒に出かけるのを渋るようになってきた思春期の息子。

「ゲームしたい、メンドクサイ」。

今回も、半ば強引に連れ出したのですが、からだを使って覚えた感覚や、そこで考えたことは、きっと自分のためになる。
動きながら感じたり考えたりしたことは、からだも心も覚えています。
目で見るだけでなく、直接触れて感じることの大切さ。子どもたちにも届いてほしいです。いつかきっとわかるから。
直接その場に行って体験する思い出は、仮想空間での感覚とは比べ物にならないと思います。

くらいつく娘。体幹トレーニングになっている!

娘は、生まれてすぐ心臓の手術をしました。
そのせいかどうかはわかりませんが、人より体幹が弱く、歩き方もぎこちないぺたぺた歩き。運動会の徒競走でも毎回いちばん最後。
でも、娘は自分でちゃんとわかっているのか、へこたれません。それが娘のスゴイところ。遊びも全力で思いっきり遊ぶ。こけても、何度も立ち上がる。
「インビジブルな世界のバランス飛石」でも、ぐらぐらしながらくらいついていました。
最先端のテクノロジーに満ちたミュージアムでも、どこでもチャレンジ精神は鍛えられるんですね。
いつ、どんな場所でも、子どもは親に気づきを与えてくれます。

くらいついて必死で頑張れること――私も、しないといけないな。

朝起きてすぐYouTube、帰宅してすぐゲーム。
いま私は、子どもたちのデジタル社会との関りに悩んでいます。
STORY1月号のJuniorSTORYで取材した国立成育医療研究センターの児童・思春期リエゾン診療科診療部長・田中恭子先生が言っていました。

「“守ってほしい、認めてほしい、でもほっといて!”というのが、思春期の心のサガ。……家族より、仲間や異性との関係性が大事になる」と。

確かに、今はお友達がいちばんの中心。息子はオンラインゲームで友だちと交流し、「13時に待ち合わせしてるからやりたいの!」とゲーム内で待ち合わせをしています。
以前、父親に「ゲームはダメだ!」と言われたときには、この世の終わりみたいに号泣。息子のあんな姿は久々に見ました。
こんなちっぽけなことで、どうしていっぱいいっぱいになっているんだろうと思いましたが、これも思春期ならではのこと。ささやかな抵抗なんでしょうね。

子どもたちはチームラボボーダレスで、自分なりに楽しみを考えていました。
会場までは親子で一緒に来たけれど、その後は〈ご自由に〉〈好きにしてね〉と、ほっといておく。
それぐらいの距離を保つのがいちばんなのかな、と実感しました。
私も「子離れ」をしっかり考えないといけませんね……。

撮影/西 あかり 取材/東 理恵

森ビル デジタルアート ミュージアム : エプソン チームラボボーダレス 森ビル株式会社とアート集団・チームラボが共同で2018年6月から東京・お台場のパレットタウンで展開する「地図のないミュージアム」。10,000平方メートルの中に520台のコンピューターと470台のプロジェクターを駆使して、圧倒的なデジタルアートを繰り広げる。
2023年に東京都心部において新たなチームラボボーダレスを開館する準備に入るため、2022年8月31日をもって閉館。

https://borderless.teamlab.art/jp/
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