留学=語学という時代は今や昔。ボランティアにスポーツ、ダンス、音楽……、と最近ではジャンルも様々。心の柔らかな思春期こそたくさんの経験が、子どもの可能性を広げるきっかけに。 書道家・武田双雲さんに伺いました。
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日本の学校の枠に収まりきらず、 不登校になった息子の 留学という決断を応援しました
父 武田双雲さん(47歳)
書道家。音楽家や彫刻家など様々なアーティストとのコラボや独自の創作活動で注目される。新著に『「ありがとう」の教科書』(すばる舎)
息子 智生さん(17歳)
15歳の時、カリフォルニアへ。
双雲さん(以下敬称略)
中学3年生の時、智生が急に学校に行けなくなってビックリした。小学校、中学校と生徒会で活躍していたし、勉強もできて友達も多かったから理由が見つからなかった。
智生さん(以下敬称略)
朝起きられないし、学校に行こうと思うと体が動かなくなる。自分でも何で? って。
双雲
中学校1、2年では、自主的にSDGsの活動もしていたよね。
智生
地理の授業でのアフリカの児童労働問題を知って、〝チョコプロ〟という活動を立ち上げて。自主映画やバレンタインにフェアトレードのチョコを売ったりするうちに、外部の団体とも交わるようになって、自分がやりたいことへの思いが強くなったのかも。コロナで休校も重なって、自宅学習のほうが有意義だと思えたし。
双雲
お母さんは、「最初は学校に行った方がいい」という意見だったよね。
智生
そう。でも、僕の話をじっくり聞いたうえで、学校にも掛け合ってくれた。
双雲
あの時は、あえて口にしなかったけれど、父さんは学校という枠の中で収まっている方が不自然だと思うし、不登校のほうがまともなんじゃないか? とずっと思っていた。
智生
でも、僕は学校に行けなくなってから、自分をどうにかしたい! とずっと悩んで……。それで、留学しよう! と。日本から離れるのが唯一の選択肢かもしれないと思ったから。
双雲
コロナの影響で1年延期になったけれど、その間に高卒認定を取ったのは立派だな。
智生
高認取ったのは保険かな。アメリカでも学校に行けなくなるのが怖かったから。向こうに行って強く感じたのは、世界は広くて多様性が認められていること。そして、学びに関しては自由度が高いけれど、格差が激しい。日本の教育は丁寧だから。日本を客観的に見る機会にもなって、電車は定時に走るし、清潔だし、おもてなし精神もあって、日本すげー! って。
双雲
人生で一番辛いのは、心まで引きこもってしまうこと。そこの土が合わなければ、違う場所を選べばいい。留学は、異なる土壌で子どもの心と感性を育てるチャンスなんだと思うな。
撮影/吉澤健太、沼尾翔平 取材/竹永久美子、松葉恵里 ※情報は2022年10月号掲載時のものです。