同じステージで結婚したはずなのに、結婚後10年もすると男は仕事で輝いていき、女は子育てで疲弊していく……。この現実にまさにぶつかっている貴女に読んでほしいお話です。
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今が心から幸せだから、あんなに憎んだ前の夫にも感謝の念が生まれます
浮気夫への愛
◯ 話してくれたのは...矢田亜紀子さん(仮名)
夫は浮気常習犯。飽きることなく常に愛人がいました。最初は私が35歳、夫が38歳、結婚10年目のことでした。
そもそも社内恋愛で結婚。イケメンではありませんが、生真面目でエネルギッシュ、恋愛に対しても情熱的で私はすっかり虜になり、大恋愛でゴールイン。仕事もできる人で順調に出世し、経済的にも何不自由ない生活でした。
長男にも恵まれて幸せいっぱいのはずでしたが、私がどんどん太っていったのです。運動もせず、外食が多く、お菓子を食べては子供とゴロゴロ。加えて、子育てのストレスもあり、ベスト体重46㎏のはずが気づけば80㎏を超え、にっちもさっちもいかない体型に。大好きだったオシャレも諦め、30代にして、どう見ても誰が見ても老けたオバサンにしか見えなかった。
一方、夫は毎朝スーツでビシッと決め、上昇志向も強く、どんどん輝いていった時期。当然夫からは、あまりの変貌ぶりに冷たい目で見られ、〝座敷豚〟呼ばわり。「お前と結婚したことが俺の人生の汚点」と冗談交じりに言われていました。
そこで気づけばよかったのに、ここまで太ると簡単にダイエットも無理! 少し痩せてもリバウンドを繰り返し、自分に自信がなく惨めな日々を送っていたのです。そんな頃、夫のカバンの中から愛人と抱き合っている写真を発見。ちなみにこの写真は 今も実家に隠してあります(笑)。
砂が崩れるがごとくその場に座り込んでしまうほどのショックでしたね。同時に怒りが収まらず、間髪入れずに夫に電話をし、責め立てたところ、「すまない」の後は開き直り、「何が悪いんだ」と。結果、その女性とは別れましたが、その後も何人とも浮気は続きました。不思議に離婚しようとは思いませんでしたが、どこに持っていっていいかわからない悔しさと悲しさが入り交じり、この不幸は夫のせい、子供のせい、そして愛人にまで心の中で怒りをぶつけていました。
ところがある日、ママ友から「あなた、醜いわよ」のキツーいひと言を投げかけられ、そうか、家族にそう思われているだけでなく、周囲にも同じ印象を与えていたんだ、私がこうなっているのは誰のせいでもない、自己管理できていない自分のせいだったんだと気づいたんです。
本気で自分の心身の健康と美を考えてみようと決意新たにし、和食中心に食生活を整え、ジムに通って体を鍛え始めました。5年くらいかかったでしょうか。元の46㎏に安定すると心まで穏やかに。夫にキレイに思われたいという甘い期待は微塵もありませんでしたが、自分を諦めたくないという気持ちで頑張れたんです。
するとモテ期到来。道で声をかけられたり、空港でお茶に誘われたり。体の関係はありませんが、今も男友達はいて、悩み相談やアドバイスをしてもらうこともできました。夫とは相変わらずの仮面夫婦でしたが、そういう友達ができたことがすごく嬉しかった。
そもそも楽天家でケセラセラの性格の私。ちゃんとお金も入れてくれるし、子供にも優しいし、この生活を大事にしよう。いいや、ほかの女に気持ちが向いていても、と思うようになっていたのです。
夫は夫で出世街道に乗り、43歳のとき香港支店の支社長に抜擢。まだ息子も高校生だったので単身赴任することに。これで間違いなく浮気し放題ですが、一方で離れてみるのもいいかもしれないと思ったのです。
その頃私はパートや語学の勉強などを始め、毎日がとても充実していました。語学の成果を生かしたくて、数カ月に1度香港に通うようになりました。行くと必ず、1カ月分の食事の支度をし、完璧に掃除して帰国。妻の役割はきちんと果たしました。当初はぎこちなかったのですが、回を重ねるごとに夫婦で食事に行ったり、観光に行ったり、結構楽しいんです。私も楽しかったけど、夫も楽しそう。何かしら変化が見え始めました。
夫はくれませんが、私は夫に誕生日やクリスマスなど、必ずプレゼントすることも続けてきました。いつの日かを境に夫には何も期待しなくなっていたので、会話ができたり、一緒に出掛けたりだけでも嬉しかったんですよね。実は仲が悪い時期も浮気中も夫婦生活は定期的にありました。単身赴任後は私が行くとほぼ毎日(笑)。どんなときでも拒んではいけない義務と思っていましたが、最近は結構楽しんでいます。
今も単身赴任中ですが、浮気もやめ(おそらく)、とてもいい関係が続いています。夫が帰国したらどうなるかが最大の不安ではありますが、結局、夫が幸せにしてくれるわけじゃない。結婚していても、幸せは自分で摑まないと。最近は女性であることの幸せも感じられるようになりました。
取材/安田真里 刺繍/みずうちさとみ ※情報は2015年掲載時のものです。