――さっきおっしゃっていた“圧倒的な何か”を表現するには、何が必要だと思われますか?
河原さんがよく言っている「支配力」というものが必要になるだろうなと思ってます。僕がイメージする支配力は、劇場空間の一つ一つの粒子まで一瞬にしてその人の色に染めてしまうような力。それを発するためには、とんでもない熱量を放出しながら瞬間的に3000°Cくらいになる芯の通った存在にならなきゃいけないなと思っていて。まだ稽古の途中ですけど、目指している方向は間違ってないと感じているので、長い公演期間も加味しつつ、どこまで持って行けるか。日々トライ&エラーしながら積み重ねていくしかないですね。
――中村さんにとって、舞台はどういう場所ですか?
感覚的には、「ホーム」とか「育った場所」になるんですかね。でも結局のところ、好きでやっているだけなんだなって、最近は思ってます。ご存知の通り、僕には、仕事がなくて鬱屈としていた若手時代がありまして、演劇がそんな自分の生きる支えになっていたのは確かです。ただ自分の性格上、好きじゃなかったら舞台をやってなかったと思うんですよ。自分の役者としての特性的にも、舞台がいちばん合っていると思うし、みんなで稽古する期間があって、本番を迎えて、それを観てくれた人たちの反応をその場で感じられるというのは、ものづくりの場としても、人としても、すごく健全な気がしますね。勤務時間的なことも含めて。もちろん、よりしっかりと役としてそこに立っていないと、全部バレてしまうのも舞台なので、その辺の怖さみたいなものはありますけど。
――役者として自分が舞台に向いてると思われるのは、どういったところですか?
それは秘密です(笑)。だから、観てくれる人が勝手に「こういうところかな」って想像したり、「いやいや、そんなに向いてないでしょ」と思ってもらって全然構わないです。ただ自分の中では、結構前から「向いているんじゃないかな」と思ってます。
――12月で36歳になる中村さん。40代、どうありたいですか?
40代か……うーん。僕は、こう見られたいとか、こうなりたいというのが、あんまりなくて。いろんなことに対して「知ったこっちゃねぇ」っていうマインドで生きてます。強いてあげるなら、健康で、主役も脇役もやりつつ、過ごせればいいなと。あと、優しくなりたいですね。どんどん、どんどん優しくなっていきたいなと思っているんです。僕、すぐ「そんなの知らねーよ」とか言っちゃうから(笑)。