――稽古時間は今、どれくらいなのですか?
だいたい5時間程ですが、3時間で帰れたりします。稽古を重ねると疲れも出てくるのですが、今のところ楽しいだけで「今日、終わりですか?」みたいな毎日です(笑)。ただ、言葉では苦労しています。セリフの量は少ないものの、方言が難しくて。
――ほぼ全編が長崎の言葉で書かれた戯曲、確かに慣れないと大変そうです。
音の抑揚も難しいのですが、字面を読んでいると呪文を覚えているような気分になって、ここは「と」の次に「や」がきているのに、なんでここには入らないんだろう? とか思いながら、苦戦しています(笑)。そこに感情を乗せるのが、また難しいんです。だから今はとりあえず、音にはあまりとらわれずにやらせてもらって、稽古が終わってから方言指導の方のところに行って、変なところがあったら直してもらう、というふうにしています。
――ご自身が演じる、職を失くし、妻とも別居している主人公・小浦 治に対しては、どんな印象がありますか?
とにかく無気力というか、日々を何となく“作業”のように過ごしている人、です。セリフにも、自分は機械だというような言葉が出てくるのですが、毎日同じ日常の中で、死んでいるように淡々と時間を費やしている印象があります。でも一方で、家を出て行った奥さんや同僚に対してはムキになったり、姪の優子に人間らしい面を見せたり……そういう血の通ったところも当然あるわけで。その出し加減や、そこのアンバランスさに、すごく苦労しているところです。生きているのと死んでいるのを常に混在させて演じるって難しいな、どうしよう? と思っています。