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Lifestyleママとパパに贈る「ジェンダーレス学」

【上野千鶴子のジェンダーレス連載vol.15】デジタルなつながりだけでもダメ。学校の友達だけでもダメ。親の役目は選択肢を広げてあげること。

進みつつあるジェンダーレス社会について、私たち親は、娘や息子たちにうまく説明できるだろうか? ジェンダー研究の第一人者に聞きます。

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「デジタル社会と男女」について④

Q.本当に今は、子育ての現場でのデジタル被害の話が多いですよね。11月号の本誌STORYでも、SNS被害の話を紹介したのですが、とても複雑化しています。子どもたちも、グループLINEを作っては、返答しなきゃ! と必死になってやっています。

親だって同じようなことやってますよね。

Q.確かにそうですね。

子どもの世界は大人の縮図ですから……。

Qそれが怖くて、なかなか子どもにスマホを持たせない親もいます。そうすると、デジタルに触れる年齢が上がってきて、それはそれで、どうしたらいいのか……と悩んでいる方もいらっしゃって。

そのとおりです。デジタル・コミュニティは、子どもたちのコミュニティにとって今は必須です。ただ大事なことは、デジタル以外の多様な種類のリアルなコミュニティ、リアルな他人や大人にしっかり触れさせることです。
〈デジタルだけが自分の世界ではない!〉 と、思ってもらうこと。必ずどこかに逃げ場があるというのを知ってもらうこと。どうしても子どもたちは、“ここだけが自分の世界だ”と思ってしまいます。
うちの学生なんて、エゴサ(エゴサーチ、ネットで自分の個人情報を検索すること)なしですごせない。でも、エゴサでいい結果なんてないじゃない(笑)。

Q.確かに(笑)。悪いことしか出てきません。

そう、悪いことしか書いていないからね。褒めてくれるアカウントなんて、ほぼありません(笑)。
だから見るたびに落ち込んで傷つくんです。かと言って「やめたら?」といってもムダ。ネットコミュニティの中の自分というのが、自分の大切な一部になっています。私たちの世代であれば、“遮断して終わり”というのができるのですが、今の子どもたちは遮断できないのです。

Q自分の一部ですか……。

だからこそ、〈ネットの世界だけがすべてではない!〉ということをしっかり学んでもらうことが必要です。
ただ、今の大学生たちはコロナ禍でキャンパスに入れなかったため、リモートで2年間ほど過ごしています。ネットの良いところは、その気になれば、いろんなコミュニティを探すことができること。
一方で、親の役目は、リアルやオンラインで、代替選択肢があることをしっかり子どもに教えてあげることです。〈ここに行けばこんなものがあるよ〉〈イヤなら止めてもいいよ〉と教えてください。子どもだけでは情報に限りがあります。
ネットで今の問題は「性被害」です。子どもたちが自分で裸の写真を送ってしまったりします。

Q脅迫されてしまい、親に相談できなくて、結局、自分で撮影して相手に送ってしまうと聞きましたが……。

脅迫というより、今の主流は相手にのせられて送ってしまう「グルーミング」ですね。
「かわいい姿を、おじさんに送ってくれない?」「僕を喜ばせてくれない?」などと懐かせて、信頼させて、気分よくさせて、送らせるのです。子どもは性的な意味がわからずに、自発的にやってしまいます。
脅迫の場合は、もう少し大人の女性が対象で「流すぞ」というリベンジポルノですね。

Q親の見えないところでやられると、気づかないですよね……怖い。

そうね、怖いですね。

Q子どもは小6ですが、実は私も、まだ子どもにスマホを持たせていません。

遅いよ! 大学で情報処理まで学んだ母親にしては遅すぎます。小6ならPCを与えてもよい年齢です。ネットの効果を教えながらそのネガティブな側面から子どもを守る・・・それが親の役目です。

Qキッズ携帯は持っていますが……。ちなみに息子は、ゲームのオンラインチャットで会話をしていますね。

そう、ゲームから始まるんですね。私はゲームの世界には疎いからゲームにハマった人たちのことは全然わからないのだけれども……。

Q.今の子どもたちはゲームの「オンライン世界」がスゴイです。家で友達と一緒にいるのに、他の子たちともつながりながら同じゲーム内でオンラインチャットをしています。

それがコミュニケーションツールになっています。そこに参加しないと“ハブられる”(仲間はずれにされる)のよね。

Qそうなんです! コミュニケーションツールになっていて、友達登録を外されるとショックのようです。

昔は同じテレビ番組やマンガを見たかどうかだったけれど、今は同じゲームをやっているかどうかなんでしょうね。

Q.そうみたいです。

確かに学校のクラスだけの範囲は非常に狭いです。その世界だけが自分のコミュニティだけではない。コミュニティがひとつしかないと追いつめられます。
子ども食堂やボーイスカウト、習い事のお友達など、ネットも含めて、学校とは違うお友達のつながりのコミュニティの選択肢を増やしてあげたら良いと思います。

取材/東 理恵

上野千鶴子 1948年富山県生まれ。社会学者。京都大学大学院修了、東京大学名誉教授。東大退職後、現在、認定NPOウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長として活動中。2019年東大入学式での祝辞が大きな話題に。『おひとりさまの老後』や『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。
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