人生100年時代、まだまだたくさん学び直しもしたい! とはいえ、物覚えの悪さ、気力や体力の低下で心細くなる40代。加齢に伴う老化でなく「脳は進化中」という黒川伊保子先生に、目下スキルアップ勉強中の読者と40代の学び方を伺いました。
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★ Q.年齢を重ねると、脳は老化するのが必然なのでしょうか?
★ Q. 学生の頃と同じように、反復法ではなかなか覚えられません……
★ Q. やる気も集中力も年齢のせいか、まるで出なくて……
★ 黒川先生の学びのコツを実践!
下降線をたどる記憶力......みんな悩んでいた!
こんな悩みも……
- 53歳から、スペイン・マラガへの大人留学に挑戦中。10代や20代の同級生を比べると、てきめんに覚えが悪く、勉強が深夜に及ぶことも。スマートに覚える方法を探っています。/Ritaさん(53歳)
- 中学生の子どもと一緒に英検や漢検を受けようと一念発起したものの、学生時代得意だった暗記力はいったいどこへ?/前田香菜さん(44歳)メーカー勤務
- 異動した新しい部署で、商品知識や専門用語など、年下の先輩に教えを乞う毎日。年齢のせいだなんて言い訳もできず。/渡辺かおりさん(43歳)商社勤務
- 子育ても落ち着き、8年ものブランクを経て上級資格に挑戦中。何度テキストを読んでも頭に入らず、年齢と睡魔に負けそう。/中野英里子さん(46歳)医療関係
- 娘の好きなボーイズグループ、メンバーがすべて同じ顔に見えて名前覚えられず、「いい加減覚えたら?」と呆れられてます。/高木真由美さん(45歳)IT関係
今回教えてくれたのは......黒川伊保子先生
Q.年齢を重ねると、脳は老化するのが必然なのでしょうか?
<相談者>中島 望さん(46歳)金融関係
A. 脳は老化しておらず、むしろ進化しているんです!
40歳を過ぎ、名前が思い出せない、物覚えが悪いなど、以前に比べて記憶力の低下に不安を感じるのでしょうね。けれど、私から見れば、それはあなたの脳が「不必要なことは覚えなくていい」と判断できるように進化し、あなたの思考回路の必要な部分だけ抽出して、大事な思考を素早く処理することに活用できている証。老化でなく、進化です!
そもそも、なんでも覚えられる入力装置としての脳を「頭がいい」というのであれば、人工知能(AI)の研究を長年してきた私からしてみれば、AIのほうが記憶力に優れてます(笑)。むしろ、人生を深く味わい醸成し、その人だけの生き様を表現できる出力性能のいい脳こそ「良い脳」だと考えています。
年齢や成長のステージで脳の性質は異なり、受験勉強のようにたくさんの単語や公式を覚え、物事のあらゆる面を覚える、がむしゃらな記憶力(単純記憶力)においては、15歳でピークを迎え、28歳まで続きます。学生時代と合致するこの時期、勉強することは脳にとっても合理的なのです。
けれども、その後、脳が経験を積み、必要な回路だけを強化するので、40代からは「自分に必要な記憶」だけを素早く取捨選択して、要領よく取り込めるようになります。このため、語学も自分の興味に結びつければ、かえって記憶力アップ。がむしゃらに覚えるのではなく、楽しめば、若い頃よりも本質をつかみやすくなります。
・思い当たる感覚や経験と結び付けて記憶するとGOOD
・覚えにくいものは捨てていい、脳からのサインかも!?
Q. 学生の頃と同じように、反復法ではなかなか覚えられません……
<相談者>長尾麻貴さん(41歳)茶道カフェ&教室運営
A. 40代の脳の発達部分をうまく使った学びのコツもあります!
中高生~28歳くらいまでの脳は、何でも吸収して情報をストックする力が旺盛な時期。たとえ興味の薄いテーマでも、物事をあらゆる面で捉え、部品1つ1つを組み立てから行うので、身につきやすいもの。
一方、40代に突入した脳は、若かりし頃の暗記力の良さでは太刀打ちできません。別物なのです。20~30代の経験という柱が既に何本も立ち、40代からはそれに壁を張るかのように効率よく、脳内で必要なもの同士のつながりや世界観の構築が出来上がります。腹にスッと落ちたデータは頭に入りますが、腹に落ちなかったデータは、捨てていいとあなたの脳の回路が判断したのです。
日本将棋界を牽引した米長邦雄永世棋聖は、「若い頃はいくつも手が浮かぶがどれで勝てるか選べなかった。しかし年を重ねてからは、限られた選択肢の中から『これが最善手だな』と直感で分かった」という話もあるほど。脳内に格納した情報を用途に合わせて選択、抽出して活用する能力は、56歳まで進化をたどります。
一見忘れているように思えても、関連するキーワードが出てきたら瞬時に思い出せる力が40代以降の脳には備わっているので、気になる新しい学びに挑戦するには好機です。
◆ 脳科学上、40代の脳は有利です! 若い脳はやみくもな回答になってしまう
・関連ワードとともに思い出せる力が備わっている
・気になっていた学びなら今からが学ぶ絶好のチャンス
Q. やる気も集中力も年齢のせいか、まるで出なくて……
<相談者>中野英里子さん(46歳)医療関係
A. モチベーションUPが記憶力UPの肝!
「モチベーションが上がらない」という人は、年齢のせいにしていませんか? 更年期は、女性ホルモンの低下から相対的に男性ホルモンであるテストステロンが優位になるため、むしろ社会的興味がわきやすく学びに適した年代です。閉経してからが本番(笑)。「でも・だって・どうせ」は今すぐ封印して、諦めずに興味あるものに邁進し、自分の中にある人生の本質を磨き、見つめ、学びのステージにしましょう。
私自身、更年期の時から、体と脳の疲弊防止にも、良質なタンパク質や鉄分、アミノ酸、葉酸、ビタミンB群を積極的に摂っていました。卵、肉類、乳製品です。40代以降の脳には、記憶力を育む食品を上手に摂取し、脳のマネジメントをしてあげて。また、夜遅いスマホ操作をやめて睡眠の質を上げれば、記憶の定着にも効果的。よく歩くなど適度な運動も大切で、将来的には認知症予防にも繋がります。
他には、好きで好きでたまらないもの、何かのマニアになれるものを見つけてみてください。脳は、何かにハマる回路を作ると、他の物事に対しても同様のハマる回路を作りやすくなるので、結果的にさまざまな学びの習得度向上も狙えます。
◆ 好きな文房具で勉強したり......
使い勝手やデザインなど、お気に入りの文房具はやる気に直結。勉強仲間とも何気ない文具の話から盛り上がっても◎
◆ 好きな香りに包まれるのもOK
集中力が切れてきたら、お気に入りの香りでリフレッシュ。その後の記憶力を高める、良いきっかけにもなります。
・脳を健やかに保つ食品や運動、睡眠を大切に
・「好き」「マニア」になれるテーマを見つけて輝いて
黒川先生の学びのコツを実践!
記憶力がアップしたらやりたいことを考える
脳の栄養補給に 卵・肉・乳製品を
短期記憶を高めたければ、卵をたくさん食べるといいそうなので、早速続けてみます。脳のエネルギー補給に糖分、というのは若いころの話、必要な栄養素の違いにも驚きました。(長尾さん)
忘れて当然、で安堵!
暗記に時間がかかるし、忘れてしまうし、くじけそうでしたが、忘れても仕方ないという先生の言葉に、余計な力が抜けました。栄養補給にサプリメントも良いそうなのでリサーチ中。(中島さん)
モチベUPさせたら、 覚えやすく!
大好きな海辺に行って、テキストを広げる工夫をしてみました。気持ちいい風にふかれ、少し記憶力が上がったように感じます。(Ritaさん)
撮影/河内 彩 取材/羽生田由香 ※情報は2022年11月号掲載時のものです。