第14回は今の子の友達づくりに違和感をおぼえるママのお悩みについて伺いました。
尾木ママ’sAnswer
SNSの普及により世の中が激変している中、今の子どもたちの人間関係はSNS抜きには考えられませんから、親御さんも心配が尽きませんよね。このお悩みの中3のお子さんが学校のクラス以外に部活など何かの集団に所属し、そこでの人間関係を意識した日常生活を送っているとしたら、お母さんが心配している、フォロワーの数を優先するような友達関係にはなりにくいのではないかと思います。部活やサークル、ボランティアなどひとつの集団の中で共に活動する中でトラブルや失敗を経験したり、切磋琢磨して成果を得たりするような経験を重ねていけば、利害関係を越えた人間関係が育つはずです。基本的にはリアルな生活がまずあって、人間関係がつくられていくので、そんなに心配することはないでしょう。ただ、実生活の中で特に所属集団がなく、友達関係を結べるような環境がないようなら、SNS上での人間関係が主となる可能性が高いですから、親として実態を知り気にかけておきたいですね。
SNSを通じたコミュニケーションがより活発な時代になり、さらに、コロナ禍の行動制限がある中で人とのリアルな関わりが持ちづらい状況の影響もあって、人によって、とりわけ先ほどお話ししたような所属集団がなく、時間を持て余しているような思春期の子どもたちにとっては、SNSの世界が日常の多くを占めることになりますから、SNS上での交友関係を大切に思う気持ちや、フォロワーが多い子と友達になって自分もフォロワーを増やし、繋がりを持とうと必死になる心情も理解できます。一方で親としては、対面を伴わなかったり、ましてや利害を重視するような友達づくりの価値観には心配や不信感から否定してしまいがちです。しかし、そもそも私たちの時代には想像もできなかったことですから、まずは今の子どもたちの感覚を理解することが大切ではないでしょうか。親世代はSNSで見知らぬ人と友達になるという感覚に違和感をおぼえても、子どもたちにとっては当たり前のことなのかもしれません。その感覚がどのような感じなのか、お子さんに興味を持って聞いてみることから始めるといいと思います。「フォロワーの多い子ってどんな子?」「どうしてそんなに人気があるの?」「その子と友達になるとどんな風にフォロワーが増えていくの?」と子どもから教えてもらう。そうすることで、今の子どもたちの友達づきあいの実態が見えてくるかもしれません。そうなれば、親としてもどんなフォローやアドバイスが必要か、SNS上で友達と上手く付き合っていける方法など伝えていくべきことがわかってくると思います。
一方で、いくらSNS時代とはいえ、人間関係における価値観が利害関係だけに一変したわけではありません。友達づくりの根幹の部分は昔も今も変わってはいないのです。ただ、その価値観を言葉で教えるのは難しいからこそ、部活やサークルなどでのリアルな生活を通して、本人が体験することが一番なのです。今、中学3年生なので、高校入学をきっかけに部活などリアルな友人関係を構築できるような生活・環境づくりも親御さんが意識してサポートしてあげてくださいね。
思春期の子どもは自己確立をしていく成長・発達のプロセスの中にいます。自立に向けて親から離れ、また社会的には何者にもなり得ていないという不安から友達に依存するのです。そして、友達関係の比重が大きくなる分、友達づくりに一番必死になる時期でもあります。お母さんたちも昔を振り返れば、友達に依存していた時代、あったのではないかしら?次の日学校に行けば会えるのに友達と夜中までずっと長電話をして怒られたり(笑)。でもこれは健康的な成長の証であり、この時期の特徴なんです。だからこそ、今はフォロワーの数=人気度という認識や、そういう子と友達になる=自分も周囲に評価されると“錯覚”していても、成長や経験をへて、利害関係ありきの友達関係ではうまくいかないと気づいていくはずです。大学生や社会人にもなると興味は別な方向にも広がりますし、SNSばかりに時間を費やす暇もなくなる人が多いでしょう。SNSは今の時代一生ついて回るものかもしれませんが、SNSとの付き合い方には本人が気づく機会が必ずあると思います。
時代と共に変化している子どもたちの環境を理解し、友達関係においても親は否定から入らず、状況を把握しつつ、適宜フォローをしながら見守ってあげたいですね。
取材/小仲志帆