子育てや仕事を続ける中で「このままでいいのだろうか……」と立ち止まり、女性としてこれからのキャリアについて悩むSTORY世代。
身近にロールモデルが少ないため、リーダーになることを躊躇するなど課題も多いですが、’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。
個人として評価される機会を掴み、女性リーダーとして生き生きと活躍される方には、キャリアの狭間で自分自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。仕事以外でも女性ならではの自分磨きを怠らない、彼女たちの秘密を取材。子育てにも通用する、部下に対しての接し方の秘訣も含め、語っていただきました。
第1回は、ビューティーブランドで有名なオルビス株式会社の歴代最年少女性取締役・西野英美さん。
西野英美さん(43歳)
オルビス株式会社 取締役執行役員
Q1:これまでの仕事遍歴を教えてください。
‘02年に新卒でオルビスに入社。商品企画部門に配属され、大好きな化粧品の仕事に携われる喜びでいっぱいの毎日。順調なスタートでした。
けれども、’15年に受けたマネジャーになる初めての管理職の昇格試験に落ちてしまったんです。
主任試験のように合格する気満々だったので、不合格を通達されたとき本当にショックでしたが、「自分がどんなマネジャーになりたいか」「そのためにどんな努力をしているか」をしっかり自分の言葉で語ることは出来ていませんでした。
面接官からは「意欲やポテンシャルは感じるが、このまま昇格させることに躊躇するのも事実」と評価されました。今思えばこの時に不合格になったことが、初めて自分のキャリアを考えるきっかけだったのだと思います。
それからは、実践も踏まえて自分なりにマネジメントとは、をかみ砕き、構成されるメンバーも違う中で複数のチームで経験を積みました。
‘18年で部長昇進の打診をされたときは、全く想定していなかったので、「しっかりと部長並みに働くので課長のままでいいです」と断ったのを覚えています。
もちろん性別だけの問題ではないですが、男性に比べると、女性は昇進を敬遠しがちです。オルビスの女性管理職比率は、現在は 46%と、市場から見ると高いほうではありますが、部長以上に限定すると、その比率はとても少なくなります。
私自身、断る理由が明確にあったわけではないですが、ロールモデルが少なく、働き方やキャリアが具体的にイメージできなかったことが不安に繋がっていたのかもしれません。ですが、「ここで私が昇進を断り道を途絶えさせてしまったら、この先続かないのでは?」と考え直し、期待してくれて、任せたいと思ってくれる人が一人でもいるのであれば、やれるところまでやってみようと前向きに捉え、昇進を引き受けました。「いつか誰かのロールモデルになれるように頑張ってみよう!」と決意が固まった瞬間です。
Q2:転換期はどう乗り越えられてきましたか?
「自分が何をしたら会社や部下が明るくなるのか」と、自分自身にベクトルを向けることに集中します。
まわりと比較したり、環境など何かのせいにしたくなることもありますが、けれども、大変な時こそ、“自分は何ができるのか”を突き詰めると見えてくるものがあるのです。
私自身は、‘18年のリブランディングの時に部長として商品全体の変革・統括を任されたため、「戦略に基づき、会社や部下のために何ができるか、何をすべきか」に集中し、その道筋で考えて出てきた“やるべきこと”を“やってみよう”に変えて、どんどん行動に移していきました。仕事だけでなく、「私は家庭のために何ができるのか」と考えることもあります。
Q3:私だからできること、一番得意なことは何ですか?
キャリアを重ねる中で身についたと思っていますが、相手に気付きを与えるフィードバック、でしょうか。
マネジャーになると自分で手を動かすことは減り、メンバーに頑張ってもらう立場になります。自分の期待していたレベルに到達していなかった時に、相手のためのフィードバックではなく、出来ていないことを伝える時間に陥っていたこともありました。でもそれでは誰も前向きな気持ちにはなれないですよね。(反省)
なので、頑張ってやってきたことをまずは一旦受け止め、そのあとで、ではなぜ自分の期待値に到達していないのかを考え、何が必要かを相手の立場に立って伝えるようにしました。
そのためには“その人をよく見ること”がとても重要で、「西野の館」という 1 対 1 で話す場も定期的に設けています。その人ならではの努力や工夫をキャッチアップして伝えると、自分のことをしっかり見てくれている!と信頼が生まれます。
“感謝をしっかり言葉にして伝える”ことも忘れてはいけません。
Q4: これだけはブレたくない、ご自身が最も大切にされていることは何ですか?
「私は私」ということを大切にしています。環境などに流されず、人にどう思われたとしても、自分がここまでしてきたことをまずは大事にすること。自分が見聞きした経験を頼りに、自分の考えやスタイルをブラさずに自分軸を持ちながらも、人と対話するときには自分の価値観を押し付けないことを心がけています。
撮影/BOCO 取材/孫理奈