あなたは、配偶者と死別した後の自分を思い浮かべたことはありますか? 今回は、早くして夫との別れを経験した女性たちにお話をうかがいました。
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小鹿 京さん〈仮名〉(52歳・千葉県在住) 会社員
夫 小鹿元春さん〈仮名〉 1971–2017年(享年45歳)
夫の死に向き合えていない
自分もいるけれど、一人だから
楽しめることをしながら “今”を
大切に心穏やかに過ごしています
自分もいるけれど、一人だから
楽しめることをしながら “今”を
大切に心穏やかに過ごしています
小鹿 京さん(仮名)は29歳のときに、2歳年下の元春さん(仮名)と結婚しました。「私たちは自他ともに認める“仲良し夫婦”。スーパーに行くのも、散歩をするのも一緒。共通の趣味のライブや旅行に行くのも一緒。常に二人の時間を楽しんでいました」。
結婚17年目の,16年、夫がステージ4の大腸がんと診断されました。その後、抗がん剤治療に取り組みつつ、二人で過ごす時間も大切にしてくれたそう。そして病気が発覚して半年後の,17年4月5日、45歳の若さで旅立たれました。
小鹿さんは、夫が亡くなった当時を振り返ってくれました。「どこに行っても何をしていても、彼との思い出がありました。二人で過ごす時間が長かった分、一人になった寂しさを突きつけられ、毎日泣いていました」。それでも、少しずつ日常を取り戻していった小鹿さんは、部屋のインテリアを変えたり、ベランダでガーデニングを始めたりしたそうです。「体を動かすことで、考えないようにしていたんだと思います。けれど心は正直で、毎日“早く死にたい”と思っていました」。
そんな小鹿さんに、生き方を変えるきっかけが訪れます。夫が亡くなって3年目に、胆のうの手術を受けたときのことです。「生死の境をさまよう事態に見舞われました。朦朧とする意識の中で、川の向こう岸に夫が佇んでいたんです。彼を見て、このまま死んでしまうのかもしれないと思ったときに、叫ぶ自分がいたんです。“親が亡くなるまで、もう少し待って”と。この体験が夢なのか現実なのかは、わかりません。けれど私は生きたがっているんだと、考えがシンプルになりました。夫が気づかせてくれたのかもしれませんね」。
この体験から小鹿さんは、“今”を大切にするようになりました。親や友達と過ごす時間を大切にしたり、自分ひとりで過ごす時間も楽しめるようになったそうです。「夫の死に向き合えていない自分もいるけれど、一人だからできることが増えたと実感します。例えば会社帰りに一人で映画を観に行ったり、週末に都内の温泉つきホテルで一人で過ごしたりしています。気の向くままに、楽しめるようになりました。今、心穏やかに過ごしています」と笑顔を向けてくれました。
撮影/BOCO 取材/髙谷麻夕 ※情報は2023年1月号掲載時のものです。