丸の内テラスにあるNINE by La Cime(ナイン バイ ラ シーム)に、「香り」をテーマにしたシーズナルテイスティングコースがあると聞きつけ、なぜ香りなのか? 料理の邪魔をしない? どんなコースが出てくるのか気になったので体験してきました。
昨年オープンしたばかりのこのレストランは、ダイナースクラブフランスレストランウィークのフォーカスシェフにも選ばれた徳島 亨シェフが手掛けるイノベーティブなフレンチ。2016年から6年連続で二つ星を獲得している大阪のレストラン「La Cime」の高田裕介氏をパートナーシェフとし、両シェフのコラボレーションによる独創的なメニューが話題です。高層ビルの中にありながら、どこか隠れ家的な雰囲気が漂う、喧騒とは無縁の大人な空間が広がります。
注目したいのは、高田シェフと徳島シェフの感性が融合した12皿の「シーズナルテイスティングメニュー」。信頼ある生産者から取り寄せた国産の食材を使い、様々な技を駆使した見たことないフレンチのコースを披露してくれます。一見しただけでは分からないミステリアスなメニューに、想像力が掻き立てられます。
まずは、大阪La CimeのスペシャリテをNINE by La Cime仕様に仕立てたブーダンドッグ。大阪ではブーダンノワールを使っていますが、徳島シェフの故郷、福島県の「鯉」とホットドッグを掛け合わせたメニューで、、竹炭を使った生地で球体に仕上げています。黒く光る石の上にオブジェのように美しく鎮座しているので、食べてしまうのが勿体ないくらい! 外はカリッと中はしっとりとした不思議な食感です。
料理とともに香のエッセンスを吹きつけたムエット紙も置いてくれます。いただいている途中に少しずつ香りを楽しみながら食事と飲み物と香りのトリプリングを楽しめる、なんともオシャレなコースです。初めに季節限定の山桜の香りを楽しんだ後、食事をし、食後にまた香りを楽しむというように、ちょっとした箸休めのような感じです。時間の経過とともに香りが変化していくので、その時々で感じる香りが違うのが面白いところ。
ソムリエが料理に合わせてセレクトしたドリンクを一皿ごとに楽しめる、ペアリングをオーダーすることもできます。シャンパーニュから始まり、この日はオレンジワインや宮崎の芋焼酎といったちょっと意外なペアリングも楽しめました。
そして、こちらのレストランは、ノンアルコールのカクテルもこだわりが凄い! マンゴーとほうじ茶を一緒にブレンドして、アガーアガーという寒天でゼリー状にしてから濾した中に桜海老の氷を加え、グラスの縁にゆかりとカカオニブをブレンドしたものをリム付けしたものや、ウーロン茶に黄な粉と黒蜜、ヨモギの蒸留水をブレンドした和テイストのカクテルなど、飲み物を料理するように工程に時間をかけているので、ノンアルでも十分に楽しめます。もちろん、ノンアルのペアリングもあるので、オーダーするとコースに組み合わせてくれます。
ここで、サーモンを使ったお料理と合わせる、ピンクグレープフルーツ、白檀、バラのエッセンスを合わせた香りが加わります。香りは速いスピードで変わり、時間の経過とともにまろやかな香りに変化していくので、この後なんども楽しみました。
阿武隈川は徳島シェフが小さい頃釣りをした思い出の川。故郷の福島の食材を見直したいと出合ったメープルサーモンを、まるで石庭のように盛りつけています。金美人参に山葵をつかったペーストを合わせて食感のアクセントに。
そして、熱々の石の上に、スパイスをつけた海老の頭をのせたプレートが登場。お湯を注ぐと蒸気が立ち昇り香りが広がります。バイマックル(こぶみかん)のエキスの爽やかな香りもほんのりと。
プレートに盛り付けられた真っ白なお料理は、うどのスライスにココナッツを使った泡のソースをのせたもの。うどのベールの下にあるのはボタンエビで、ピクルス状にした赤トウガラシとライムのゼストを忍ばせています・・・と、もはや想像を超えたフュージョン! 写真には写っていませんが、大葉入りの子羊のトルティーヤを食べ合わせながらハーモニーを楽しめます。
3つめの香りは仄かに龍涎香(りゅうぜんこう)が香ります。お香の香りが漂い落ち着いた気持ちに。
エイジングした但馬牛は、醤油の搾り粕で作ったたれを周りに塗りながら炭火でじっくりと火を入れたもの。外は香ばしく中はジューシーに焼きあがっています。まずはお肉の旨味を感じてから、ソースと付け合わせで味の広がりを感じます。醤油粕の味が染みているので、普通に焼いたお肉とは風味や旨味が全く違う。見えないところで手間をかけているシェフに脱帽です。
初めは12皿も食べきれるかしら? と思っていましたが、少しずつ出てくるのでコースを食べ終えた後は心地よい満腹感でした。お料理はどれも繊細な手仕事で、さっぱりといただけるメニューが多いのも女性には嬉しいですよね。
香りはすべて、調香師と高田シェフがともに考えるオリジナルの香り。メニューが変わるごとに香りも変えており、シェフの料理を試しながら調香師が香りを調香しているのだそうです。食事だけでなく香りも楽しめるので、お店の方との会話がはずみディナーが一層充実したものに。洗練された店内はとっても素敵な雰囲気なので、特別な日に夫や友人と足を運ぶことをオススメします。
東京都千代田区丸の内1-3-4 丸の内テラス 9F
18:00-23:00(L.O.19:30) 日・月曜定休(祝日を除く)
https://the-upper.jp/nine_by_lacime/jp/
*シーズナルテイスティングコース ¥25,000
取材/本條千春