コロナ以前の生活に戻りつつありますが、コロナ禍で外出自粛を経験した子どもたちは家にいる機会が増え運動習慣がなくなったり、一日中だらだら食べることが習慣化したりしていることも。「うちの子太ってきたかも…」と感じているママたちも多いかもしれません。
実際に、スポーツ庁が小学5年生約99万人、中学2年生約91万人に行った2022年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を見ても、肥満の割合は小学校男女・中学校男子で過去最高を記録しています。特に高いのが小学校の男子で、14.5%にのぼります。
実は「肥満」は体の病気だけではなく、心の不調を引き起こすこともわかってきました。子どもの心身の健康を守るためにママたちが「肥満」について知ることはとても重要です。そこで、医学博士の乾あやの先生に子どもの肥満についてお話を伺いました。
そもそも、子どもの肥満の定義とは?
肥満かそうでないかは見た目ではなく、客観的に数字で判断しましょう。6~18歳までの子どもの肥満の指標となるのが肥満度です。肥満度は標準体重に対して実測体重が何%上回っているのかを指します。
※標準体重=身長(m)×身長(m)×22
20%を超えたら肥満になります。
また、子どもにもメタボリックシンドロームの基準があります。
または
腹囲÷身長が0.5以上
子どもが肥満になると、将来どんなリスクがあるのでしょうか?
子どもの肥満のリスクは、将来的に、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心房細動、心不全、心臓突然死、胆のう疾患、悪性腫瘍などの原因になるということです。これは日本肥満学会のガイドラインにも出ています。病気以外でも、肥満の子どもで脂肪肝になると肝臓で活性化される成長ホルモンが減ってしまうので、身長が伸びないというリスクもあります。
また、体だけでなく、心の健康にも影響が出ます。最近では、国立精神・神経医療研究センターが約1万2000人を対象に行った大規模調査で肥満傾向の人はそうでない人よりもうつ病の割合が1.6倍多くなるという結果も発表されました。
さらに、若いときから生活習慣病になると通院を余儀なくされることもあり、職業の選択肢も狭くなってしまうことも考えなくてはいけません。
親として、子どもの肥満を防ぐためにどんなことができるでしょうか?
親が子どもにしてあげられることは、食事の管理と運動習慣をつけさせること。基本的には1日3食、寝る2時間前までに夕ご飯を終わらせるのが理想です。
食事は1日の総カロリーで考えましょう。その子どもの年齢に合った一日の必要カロリーがとれていれば、食事の量は足りています。逆にカロリーがオーバーしていたら食べすぎなので、注意してあげましょう。
カロリーを管理するのは、携帯のアプリを使ってみるのもおすすめです。「カロミル」というアプリを使えば、食事の写真を撮るだけでAIが解析し、総カロリー、たんぱく質、脂質、炭水化物、糖質、食物繊維、塩分を簡単に計算してくれるので、無理なく食事管理ができます。
食べさせるものとしては、私たちが提唱している<さわやかダイエット>をおススメします。やはり日本人には魚を主菜とした和食が一番いいので、意識して食べさせてあげてください。
わ:和食
や:野菜
か:海藻
だ:だし、大豆製品
また、運動はハードな運動ではなく、まず歩くことを習慣化させましょう。一日15000歩から20000歩が目標です。子どもが楽しく歩けるように万歩計をつけて歩いたり、携帯のゲームアプリなどを使ったりするのもいいですね。私の患者さんでは、「ポケモンGO」で痩せた子もいます。
思春期の子どもは心の自立を求めて中々大人の言うことを素直に受け止められません。もし目標に達しなかった日でもできなかったことではなく、できたことを褒めてあげて、毎日続けられるようにしてあげてください。
受験期などは食事の時間が不規則になったり、運動する時間が減ったりするかもしれません。ですが、その時期だけのことだと考えて、ママも子どもも負担にならない程度にやる方がいいでしょう。
イラスト/沼田光太郎 取材/山崎智子