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Lifestyle大特集「大人の恋愛」

私たちの恋愛バイブルが復活!迷える40代の答えは「後ハッピーマニア」にある

長年の関係を解消してふたたびシングルになるにせよ、初めての運命的な出会いを求めているにせよ……40代女子、恋愛を新たに始めるためには、価値観のアップデートが必要!?
「その答えは女子マンガの中にあります!」と教えてくれたのは、マンガ研究者のトミヤマユキコさん。

恋愛に悩める40代女子のヒントになりそうな作品が、安野モヨコが描く『後ハッピーマニア』。1995年より『FEEL YOUNG』(祥伝社)にて連載が始まり、ドラマ化など一世を風靡した『ハッピー・マニア』の続編です。かつてのリアル恋愛バイブルは時を経て、私たちに何を教えてくれるのでしょうか?

タカハシの衝撃の一言に固唾を飲む…第1巻!©️安野モヨコ/Cork

『後ハッピーマニア』とは

1995年~2001年にかけて連載されていた『ハッピー・マニア』では、ハッピーを追い求め数多の男たちと20代を大暴走した主人公カヨコ(旧:シゲタカヨコ)。普通で真面目なタカハシに惚れ抜かれ、紆余曲折の末に結婚し15年を共に暮らしたが、ある日タカハシから離婚を切り出される。しかもその理由は“好きな人ができたから”だった…!45歳・専業主婦、子どもなし、スキルなし、金もなし…別れたくないと思うのは愛なのか?生活のためなのか?大ピンチの中、ふたたびハッピーを求めて奔走するカヨコの姿を描く、大人の幸せ探しラブストーリー。

お話ししてくれたのは・・・
トミヤマユキコさん

1979年、秋田県生まれ。東北芸術工科大学芸術学部 文芸学科 准教授。早稲田大学法学部を卒業後、同大大学院文学研究科に進みマンガ研究で博士(文学)を取得。手塚治虫文化賞選考委員。著書に『女子マンガに答えがある 「らしさ」をはみ出すヒロインたち』(中央公論新社)など。大学院生時代に「ハッピー・マニア」と出会い、文学研究者からマンガ研究者に転身したほどのファン。

「大学の授業でも前作『ハッピー・マニア』を教材として使用しています。絶対恋愛主義ではない若い世代には『このカヨコって人は何がしたいの?』と言われることも。感情を揺さぶられることに疲れてしまう彼らにとって理解が難しいキャラクターのようです。さて女性マンガといえば、ヒロインは若くないといけないというイメージがありませんか?特に40〜50代はハザマの時期というか、子育てもあリますし、身体も心も揺らいで自分が主人公とは言い難い世代。描くのがとても難しいように思えますが、『後ハッピーマニア』ではその世代ドンピシャで突いてます。リアリティを出すことで40代女性を活き活きと描いているんですね。さすが安野先生の技術力!恋に恋する時代ではない40代の恋愛、観察眼が鋭い安野モヨコ先生がどう描くのか目が離せません!」

今回は、一筋縄ではいかない、40代に刺さる名シーンをトミヤマさんに選んでいただきました。

【INDEX】 夫婦の愛とはなんぞや
なんでもかんでもアップデートすればいいってものじゃない
若い時とは違う!
主導権は自分にあり!
40代の恋愛は自分のハッピー探し

夫婦の愛とはなんぞや

揺らぐカヨコ。悩むときも眉間と目元のスキンケアは欠かさない…。©安野モヨコ/Cork

結婚してすぐは“恋したい”気持ちがくすぶっていたカヨコも、安定した生活には抗えず、タカハシとの結婚継続を選択。ただし、夫に対しては無関心だし、専業主婦としても落第ギリギリレベルで15年が経過する。

絶対に夫は自分のことを永遠に愛し続けているだろう、この平穏で平坦な生活は変わらないはず、と信じて疑わなかったカヨコに突き付けられた、「離婚危機」という青天の霹靂。

「“夫への愛なのか? 人生の既定路線を失いたくないだけか?”自分自身を見つめ直す、カヨコのターニングポイント。

自分が何を欲しているのか?すらもわからなくなったのは、生活だけでなく考えること自体を放棄し、夫に丸投げしてきたからでしょうか?パートアルバイトも続かず、夫の稼ぎがなければ立ちゆかないのに、突然放り出されるなんて!しかも45歳。巻き返しをはかるには、やや遅いというのが世間の見方かも。ただ、最近この手の話が増えているように感じるのは…私だけでしょうか」

なんでもかんでもアップデートすればいいってものじゃない

寿子の必勝術

大人の魅力で絡めとる、まさに魔性の女性©安野モヨコ/Cork

ネタバレしてしまうと、カヨコの親友・フクちゃんは夫に不倫されてしまう。しかもその相手は、若い女ではなく59歳のバツ2女性・寿子。

自分で始めた化粧品ブランドでも成功し、結婚生活も子育ても順風満帆か?と思いきや、こんな落とし穴が!女社長になったフクちゃんは、完璧主義さながら、家族にもその完璧さを求めてしまう。夫・ヒデキは、フクちゃんとの気が抜けない結婚生活に疲れを感じ、前時代的で尽くしてくれる寿子の元に入り浸るようになる…。

「寿子は登場キャラのなかでもとくに考察しがいのある女性ですね。

せっせと男の世話を焼き、とことん甘えさせ、かつ夜の快適さも約束してくれる(笑)。なんでもかんでもアップデートすればいいというわけではなく、古いやり方がハマる恋愛もあるということを教えてくれます。特に、相手の男性が、新時代の自立した女性に疲弊してしまっていた場合…寿子沼にハマるのかもしれません。

選ばれた後が大切、というのもなかなかの名言です。選ばれただけで満足せず、瞬間のトキメキに振り回されたりもしない。たとえ若さや美しさがなくとも、勝ちパターンを知っている女は強いということですね!」

若い時とは違う!

カヨコ、次の恋愛に足踏み

「次の恋愛」に進む必要性を自分で問い直す!©安野モヨコ/Cork

不倫相手に片思いするタカハシに呆れ、孤独でいることを選ぶカヨコ。その後、過去の男や新たな男たちとも出会い怒涛の日々が始まる。離婚するからには、次の恋愛に行くべきか否か?そんなときに飛び出すこのセリフ。
「ハッピー・マニア」のシゲタカヨコでは考えられないこの言葉。カヨコが言うことに意味がある…。

「タカハシとのぬるま湯のような結婚生活で人が変わってしまったかと思いきや、再びままならない人生に翻弄されるカヨコ。基本的には何も変わっていないなあと安心感すら覚えました(笑)。何も考えずに中年期まできてしまったことを悔い、まずは自分の足で立つんだと決心するあたり、40代になったカヨコの底力を見る思いです。ここから、四十路カヨコの新たなスタート!でも、長らく恋愛から遠ざかっていると、最初の一歩がなかなか踏み出せない…ということもありますね。リハビリも必要なんですよね、40代の恋愛には」

主導権は自分にあり!

フクちゃんの格言

  • 変わらず頼りになるフクちゃん©安野モヨコ/Cork
  • 割り切ったアドバイスでカヨコに発破をかけるフクちゃん©安野モヨコ/Cork

フクちゃんは女子マンガで知りたいことを教えてくれる先導者。かつてカヨコのルームメイトでもあったフクちゃんは、前作から恋にも仕事にも手を抜かない素敵女子で、カヨコへも辛辣にアドバイスする完璧主義のリアリスト。本作では、家庭や仕事、そして恋と、40代の揺らぎをリアルな視点でえぐってくる。

事故物件オトコとのワンナイトチャンスをものにするも、遊ばれるかもしれない…と二の足を踏むカヨコに、「いつまで受け身でいるつもりなの」と喝!遊ぶも遊ばれるも自分次第、男をどうしたいかを想像しろと、カヨコを奮い立たせる。

「厳しい言い方をしていますが、求められることが当然ではないというのは、たしかにそう。待ちの姿勢では誘われにくくなるけれど、かといってすぐに動けるわけでもないんですよね。若い時の感覚のまま恋愛してしまいそうになるのは、なぜなんでしょう…。40代の恋愛は価値観をアップデートし、自ら行動すべし。主導権は“我こそにあり”なのです」

40代の恋愛は自分のハッピー探し

「『後ハッピーマニア』で描かれる大人の恋愛模様。今回はその中でもとくに印象的な3人の女性をご紹介しました。あえて古風な女性を演じる寿子と新しい女性として生きるフクちゃんでは、正反対のように見えますが、実は主体的に行動しているという共通点があります。主体的であるためには、経済的に、精神的に自立していることがキーポイントになるのかもしれません。そして、たとえいま、あなたの家庭がうまくいっていたとしても、カヨコの例を心に留めておくと、後々いいことがあるかもしれません。いつ何時、何があっても良いように、心の準備をしておくことは大事です。恋愛のリハビリももちろん必要!ちなみに、私自身は“推し活”がちょっとしたトキメキの練習になるのでは?と思っています(笑)」

酸いも甘いも嚙み分けた40代。

待ちの姿勢ではなく、自分のためのハッピーな恋、掴み取っていきませんか?

『後ハッピーマニア』
著者:安野モヨコ
判型:ソフトカバー
現在4巻まで好評発売中。

取材・文/竹永久美子

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