「一生、添い遂げる」と一度は誓った夫婦。しかし、さまざまな理由で離婚という答えを出すこともあります。憎しみのない円満離婚は難しいことなのでしょうか。いろいろあったけど、今は支え合う間柄――結婚というカタチにはこだわらない元夫婦の様子を取材してきました。
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澤口珠子さん 45歳・東京都在住
婚活コンサルタント
今はまた家族3人で一緒にお風呂に
入るような関係を築くことができました
入るような関係を築くことができました
婚活コンサルタントの澤口珠子さんは40歳で長女を出産。8歳下の元夫の長岡武司さんとは婚活アプリで出会いました。「苦手な音声編集を彼が手伝ってくれたことがきっかけで、その年に結婚しました。今考えるとご縁があったんでしょうね(笑)」。
長岡さんは結婚後に退職し、澤口さんのビジネスパートナーに。「公私ともに支え合い、24時間一緒にいて楽しかったですね。離婚をする気配など全くありませんでした」(長岡さん)。
そんな2人の関係が崩れ始めたのは出産後でした。「高齢出産でバセドウ病にもなり、育児と仕事に体調が追い付かなくなりました。娘との時間を増やし、規模を小さくしてでもゆっくり働きたい、と仕事への意識が変わりました」。それならば、と澤口さんのビジネスとは別に、長岡さんは起業。収入を増やそうとするも業績は低迷し、貯金は減っていくばかり。「離婚の原因のひとつは経済力です。僕に稼ぐ能力がなかった。お互いの心がすさみ、負のスパイラルで言い合いが増えていきました」(長岡さん)。
決定的なケンカから長岡さんを自宅から締め出した澤口さん。「4日間で離婚を決断し、ファミレスで離婚届を渡しました。話し合いは15分で終わりましたね。嫌いになったわけではなく、彼には一人前の男性になってほしかった。私といると、いつまでも経済的に困らない。それなら一度離れたほうがお互いのためになると思いました」。
澤口さんはけじめをつけるために、あえて距離を置きました。長岡さんは転々と宿を替えてその日暮らしの日々。どん底まで落ちる経験をしたそう。「貯金も底をつき、娘が欲しがっていた苺すら買えなかったことがありました。父親としての不甲斐なさに本当に情けなくて、そこから仕事への意識を変えることができました」(長岡さん)。
離婚後、コロナ禍に長岡さんが澤口さんの家に泊まる際は、1泊1500円を徴収するルールを決めて、仕事に取り組む姿勢を見てきた澤口さん。「『パパ、パパ』と娘が泣いて彼を追いかける姿を見て、娘から父親を取り上げるわけにはいかないと思いました。今は私よりも稼ぎが多く、子どもへの接し方も離婚してからのほうが上手で、本当に良い父親になりました」。
離婚しても徒歩10分の距離に住み、1カ月に一度は3人でホテルに泊まるなどの関係が築けているのは、「お互いに人として尊敬しているから」と言います。「僕たちは憎しみがマックスになる前に別れられた。憎しみが募ると、そのぶん悪循環になりやすい。彼女が相当早い段階で離婚を決めたのが良かったんだと思います」(長岡さん)。「離婚をしてお互いに自分のスペースがあるのは大きいですね。今の関係に満足しているので復縁の必要性は感じません。私は離婚をしたことで彼との良い関係を築けました」。
撮影/BOCO 取材/孫 理奈 ※情報は2023年10号掲載時のものです。