せっかく今まで取り組んできたスポーツを子どもが急に「やめる」と言い出した。これを乗り越えれば成長するかもしれないのに……。そんな時は、どうやって対処すればいいのか。若きアスリートの母たちに聞きました。
今回はパリ2024オリンピック柔道代表内定の阿部一二三選手、詩選手の母・阿部 愛さんです。
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パパとは違って、私は黙って見ているようにしました。普通のお母さんですよ…(笑)
<中>阿部 愛さん(51歳)主婦
結婚後、35歳から神戸で喫茶店を経営していた。夫は消防士。寂しがり屋の詩さんからのお願いで単身上京、同居中。
<右>パリ2024オリンピック 柔道男子66キロ級代表内定 阿部一二三選手(27歳)
1997年兵庫県生まれ。柔道は6歳から。高校生の頃からシニア大会で活躍。パーク24所属。緊張しやすい。
<左>パリ2024オリンピック 柔道女子52キロ級代表内定 阿部 詩選手(23歳)
2000年兵庫県生まれの末っ子。5歳から柔道を始め、IJFツアー史上最年少優勝記録保持者。パーク24所属。オシャレ大好き女子。
愛さん
長男と次男の一二三は、元気すぎてパワーが有り余っていたから何か習い事を、と思って柔道に通わせたんですけど。パパはいちばん世界に近い競技やしって始めた頃から言ってたけど、ホントに世界にいくとは思わなかった(笑)。最初はずっと負けてたよね。
一二三さん
小5ぐらいからかな。勝ち続けられるようになったのは。
愛さん
試合になると一二三は“緊張しがち”だから、小学生の時に「赤いパンツはいていったら? 赤いパンツはいたら勝てるよ」って言って以来、ずっとはいているよね。
一二三さん
僕がゲン担ぎで赤いパンツ(スパッツ)をはくのがよく知られるようになって。それから柔道界で赤いパンツがめっちゃ多くなった。赤がなくて、お願いして作ってもらったら、今では一般に販売するようになってん。
愛さん
詩のゲン担ぎは「うどん」やった。
詩さん
そうそう(笑)。「素うどん」ね。好きやったからかなぁ、中学生の頃から試合当日の朝はポットに入れて持っていってた。今は東京やけど関西からダシを取り寄せてくれて、ホント助かります!
愛さん
試合といえば、いちばん感動したのは、一二三の東京2020オリンピックの代表内定選手決定戦。試合見て泣いたのは初めてかな。
一二三さん
いやー、あの時はもう関係者全員が顔色悪かった。
詩さん
私は気づいたら号泣してた(笑)。
愛さん
東京2020オリンピックで2人が優勝した時はTVの前でパパと長男と3人で大騒ぎしたけど、泣かなかった(笑)。
詩さん
東京2020オリンピックで優勝した時は「ああ良かった」という解放感が強かった。
一二三さん
僕も一緒。とにかくホッとしたって感じやった。
詩さん
ホントにママがいてくれるだけで安心感があって、存在がありがたいです。ママは自分を過小評価しすぎです。
愛さん
そうなん?(笑) 昔から家でもあまりガミガミ言わないようにしてたからかな。パパが勢いよく話すタイプだから、私は黙って見ているようにしました。普通のお母さんですよ(笑)。厳しい人もおらんとね。夫婦としてのバランスよ。でも2人がイライラを私にぶつけてくれたりすることが、実は私は嬉しい。悩みを溜め込まずに、言ってくれて良かったと思います。
詩さん
ママにしか言えないこともたくさんあった。ママがいなかったら追い詰められすぎて、私は「やめたい」って言ってたと思う。
一二三さん
“言える存在”は大事やと思います。なんか照れくさいっすね。
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撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/陶山恵実〈ROI〉、榎田茉季〈ROI〉取材/東 理恵 ※情報は2024年4月号掲載時のものです。