結婚後、パートナーを一筋に愛し、健やかなる時も健やかなる時も、真心を尽くし生涯添い遂げる……。これはおそらく一般的に理想の夫婦像かと思いますが、果たして、実際に実行できる女性はどれほど存在するのか? 職業柄、多くの女性の話を伺っていると、ふと疑問に思うことがあります。
この記事では、綺麗事だけでは語れない女性の人生の、公には語られない秘密をこっそり教えていただきます。今回は、家族に隠れて時折マッチングアプリを使い、気分転換をしているという真紀さん(仮名・38歳)のお話。
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家族構成:同い年の夫、5歳の女の子
マッチングアプリに手を出した理由は「失恋」
真紀さんが人知れずマッチングアプリを使い始めたのは、コロナ禍が落ち着き始めた3年ほど前だそう。
長身にロングヘア、上品な顔立ちと佇まい、そしてどちらかというと大人しい印象もある真紀さん。そんな彼女が既婚・子持ちでありながら、定期的にマッチングアプリで男性と会っているというのは、第一印象からはあまり想像ができませんでした。
そして何より、真紀さんが「マッチングアプリを始めたきっかけ」には非常に驚かされました。
「当時、付き合っていた彼と……まあ不倫なんですけど、別れたことがきっかけです。相手は娘が生まれる前から長く付き合っていた会社の上司で、彼が海外に転勤になったんです。ついでに奥さんが第二子を妊娠中で、さすがにもう関係を続ける余裕はない、みたいなことを遠回しに言われて。
簡単に言えば、いい歳をして酷い失恋をして。つらくてつらくて……どうすれば立ち直れるんだろうと真面目に考えたら、次の恋愛、“上書き保存”できる相手を探すしかないと思ったんです」
手元の紅茶をじっと見つめて淡々と語る真紀さんの様子から、不倫経験が彼女に与えた深いダメージを想像できました。ひょっとすると、未だに気持ちが回復していないのかもしれません。
「恋愛」よりも「現実逃避」
「先に言っておきますが、私はただの不良妻、不良母で、この話には何のオチもありません。事情を知る親しい友人の中には、『娘ちゃんも小さいんだし、いい加減もう恋愛で疲弊しなくていいんじゃない?』と苦い表情をする子もいましたし、大概の人は客観的に私の話を聞いたら、母親なんだから不倫相手なんか探すより家庭で大人しくしていればいいと不快になりますよね。
私だって、家庭で気持ちが落ち着くならそうしたい。でも、そうもいかないんです。このどうしようもない気持ち、わかってくれる女友達もいるんですけどね」
少し話が逸れますが、真紀さんの娘さんはADHD(注意欠如多動症)の特徴が見られ、言葉も少し遅れていると健診などで医師から指摘をされたことがあり、保育園の他にも娘さんのケアをできる施設に通いながら成長を注意深く見守っているそう。また、娘さんの対応のことで幾度となく夫と口論になるうち、夫婦関係は冷え、夫はほとんど育児をしなくなったと言います。
「娘が大切で、宝物であることは前提で……でも、どうしようもなく疲れることも多くて。いわゆる現実逃避、息抜きできる場所が欲しい。私がアプリを使う理由は、そんなところです」
簡単な登録を済ませると、大量のマッチングのオファーが...
真紀さんがマッチングアプリをインストールしたのは、年下のシングルマザーの友人の勧めでした。彼女からマッチングアプリで恋人ができたと聞き、また周りの友達も気軽に利用しているとのことで興味が湧いたそう。
「勧められるがまま、いくつかのアプリをインストールしました。でも独身証明や顔写真の掲載が必要なものもあり、結局私は主に既婚でも問題なく使えるカジュアルなTinderを使うことにしました。大したプロフィールを書かなくても顔写真を載せなくても大丈夫で、●km以内の距離にいるという位置情報と年齢が表示されます。
少ない情報で関係が進むのか疑問でしたが、ごく簡単な登録を済ませると、数時間でマッチングのオファーが大量に届き驚きました。アプリを使い始めたばかりの頃は、子どもを寝かしつけたあとにしばらくスマホに向かうのが日課になっていました。気が合いそうな人を探したり、マッチした人とやりとりしたり。
出会いへの期待、ワクワクドキドキというより、仕事と育児で疲れた体を休める、気持ちを切り替える作業に近い感じです」
当時、真紀さんの娘さんは2歳でイヤイヤ期真っ盛りで、体力も精神面も限界にあったと言います。夫にも頼れずに仕事も多忙で心身を休める時間がない中、真剣に恋愛相手を探すというよりは、彼女なりに辿り着いた逃げ場がマッチングアプリだったのでしょうか。
真紀さんはしばらくの間アプリをいじるうち、何となく感覚を掴んだ複数人と対面し、その中には身体の関係を持った男性もやはりいると言います……。
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作家・コラムニスト。ミモレ、現代ビジネス、東京カレンダーWEBなどで人気連載を多数執筆。「不機嫌な婚活」(講談社)や2022年ドラマ化された「恋と友情のあいだで」(集英社)など、東京で生きる女性のリアルな心情を描いた作品が話題に。プライベートはトイプードルと5歳男児の母。
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