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こんなハズじゃなかった…「中学受験」の後にも子どもの人生は続く【エピソード5選】

思春期の挑戦として取材を重ねてきた「中受」。そこで知ったのは、中受後に不登校になってしまう子が多いこと。実は「中受のその後」にこそ家族にとって乗り越えるべき壁があるのです。読者のエピソードをご紹介します。

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目次 ★ 入学するも不登校に―
★ 進学校に合格したものの…
★ 不合格にイジメ…
★ 慶應を目指すものの不合格
★ 高受でリベンジ合格


入学するも不登校に―

Y・Mさん(43歳)コンサルタント会社勤務 息子13歳、夫44歳 

◇ 唯一合格した第三希望の中学に入学するも不登校に――。食卓を囲む家族会議の中、家族が「本当の家族」に

息子は、仲の良い友達が公立の中学に行くことから、地元の中学へ行きたがっていました。それを、私が「将来を見据えて高校、大学までの一貫校へ行ったほうがいいよ」と説得し、息子は受験に挑みました。ところが、3校受験して唯一合格したのは、第三志望の中学。明るく何でも話す子だったのに自信を失ってしまったようで、受験以降は口数も減り、自分の部屋にこもるようになってしまいました。そして、そのまま不登校に……。

そんな息子を見て、子育ても受験も私任せだった夫が、息子のことを真剣に考え、息子と話すために夕飯めがけて帰ってくるようになりました。部屋にこもる息子と話すのはゴハンの時だけが唯一のチャンス。それで、夫と共に、必死で息子との会話を心がけました。そして、徐々に口を開くようになった息子と共に食卓を囲み、家族で出した結論が、私立中学を退学し、2学期から息子が行きたかった公立中学に編入するということ。

自分でサッカー部への入部を決めて帰ってきた息子に理由を尋ねると、「サッカーというスポーツは、一人一人が考えてプレーをするのはもちろん、仲間のことも大事にしなくてはいけないスポーツなんだ。僕も、自分で人生を選択して、仲間のことも思いやれる人になりたいから」と。小学校の大好きだった先生が元サッカー選手で、その先生の言葉を覚えていたそうです。

今では、夕飯の時間、レギュラーではないけれど、楽しそうに友達やサッカーの話をする息子がいます。受験の失敗、そして不登校を経て、家族が「本当の家族」になれた気がします。

進学校に合格したものの…

H・Mさん(42歳)商社勤務 娘15歳、夫46歳

◇ 偏差値トップの進学校に合格したものの、成績は底辺で浮かんでこれない深海魚に……

娘は、昔から本を読むことが好きで、勉強ができて、成績も毎回トップでした。本人も学力には自信があったようで、「女子校に行きたい」と、名門中学を受験。そして、見事に合格しました。

ところが、中学に入ると成績は毎回下から数えたほうが早いほどの順位でついていくのに必死。娘は、今まで味わったことのないイラ立ちを感じながら学校生活を送るようになりました。ストレスからか、家の壁を殴ったり、お皿を割ったり、家出をしたり……。落ち着いて話ができないほどに荒れてしまったのです。

初めは娘も頑張っていて、夫もそんな娘に付き合い夜遅くまで勉強を見ていたのですが、いくら頑張っても成績は変わらず最下位になったことも。そして、中高一貫校のため、「こんな苦しみが高校まで続くのはもう無理!」と毎晩暴れるように。どうしてよいかわからず、商社に勤める私は娘と向き合うために時短勤務へと変え、専門家の先生にすがる想いで話を聞きに行ったり、娘を連れ精神科にも行きました。

そして、小学校の時に通っていた塾の先生や小学校の先生にも相談に行く中で、娘は英語が得意だったことを思い出しました。「英語に触れることができる学校への編入を考えようか……」そう娘と話し合い、インターナショナルスクールへ。英語に囲まれた環境の中で娘は心から解放的になれたようで、いまでは楽しく学校へ行っています。

偏差値が良い学校に入るだけが全てではない、今はそうつくづく実感しています。

不合格にイジメ…

N・Aさん(41歳)外資系IT会社勤務 娘14歳、夫46歳

◇ 不合格にイジメ……。自ら決めた海外留学を機に、得点では得られない自信を得て成長しました

塾では、トップのクラスだった娘は、当然のごとく難関校を受験するものの全滅。結果、公立中学へ進学しました。ところが、「あれ? ○○学校受けたんじゃなかったっけ?」といじめに発展。2年生で不登校になってしまいました。

ずっと学校に行けない日が続いたある日、近くのインターナショナルスクールに貼ってあった夏休みの海外プログラムの広告を見た娘が、「お母さん、参加してみたい」と初めて前向きな言葉を口にしました。すぐに申し込みをし、1人で1カ月間オーストラリア留学を体験。帰ってくるなり目を輝かせ、「私、高校は海外の学校に行きたい!」という娘を見て、「今度は偏差値じゃなく、娘に合う学校選びをしなくては」と強く思いました。

一緒にワクワクしながら調べ、共にTOEFLを勉強し、娘との会話が増えていきました。そして、見事合格! 「お母さん、ありがとう!」の言葉に涙がこぼれました。

今は寮に入り、楽しく海外で高校生活を送っています。会えないことは残念ですが、毎日のようにテレビ電話やZOOMができる時代で助かりました。「今日こんなことあってねー」と笑顔で話す娘の表情を見て、遠回りしたけれど、あの不合格は、今に辿りつくための道のりだったのだと思っています。

慶應を目指すものの不合格

Y・Mさん(42歳)商社勤務 息子15歳、12歳、夫48歳

◇ 家族一丸で慶應を目指すものの不合格。それにより崩壊した家族を、今、修復中です

「何としても慶應へ!」と、有名進学塾2校の難関校クラスに通わせ、私は商社に勤めていましたが、仕事を辞めて家族で中受に没頭していました。ところが、「慶應」と名の付く全ての学校を受験するものの、全て不合格。併願した私立中学に通うことになりました。

息子は、バスケ部に入り、学校生活を楽しんでいたのですが、慶應出身の夫がそんな息子を見て怒り心頭。「バスケ部を辞めろ!」と怒鳴り、辞めさせたことで息子は不登校になってしまいました。

以前は、毎週のようにキャンプに行き、仲が良かった家族が中受により崩壊してしまったことから、私のメンタルも崩壊し、精神科に通うようになりました。そんなことから、今年、次男の中受は見送ることにしました。

そして、最近では昔のように週末、家族でキャンプに行くようになりました。すると、2年間不登校だった息子が、最近、学校へ行くようになったのです。家族で幸せ探しをした3年間、今もその途中にいます。

高受でリベンジ合格

野村 茜さん(44歳)外資系IT会社勤務 娘15歳、娘13歳、息子10歳、夫46歳

◇ 高受で第一志望だった付属校にリベンジ合格。強くなった娘に私たち夫婦も救われました

長女は、5校を受験したものの、全て不合格でした。私と夫は中受の戦い方を間違えたと悔やむばかりで、娘の前で「たくさん課金したのに無駄だったね」と言ってしまったことも。娘の偏差値より高い学校を勧めて受けさせた夫の考え方も要因だと、夫婦の教育方針の違いに夫婦仲が悪くなり、夫とはだんだん口をきかなくなっていきました。

一方で、娘は公立中学校に進んだ後も「塾はやめたくない」と通い続け、第一志望だった私立大学の付属校を目指しました。そして、自ら本気で勉強した娘は、高校で見事リベンジ合格を手にしたのです。

入学式の日、家族3人で出かけた時の娘の嬉しそうな顔といったら……。娘は、私たち夫婦を仲直りさせるために頑張ったのかもしれません。もともとは、仲が良かった私たちをずっと見てきていましたから。自由な校風の中、娘がどんどんキレイになり楽しそうな姿を見るのが今、私の幸せです。

取材/山崎智子、小出真梨子 イラスト/大内郁美 ※情報は2024年6月号掲載時のものです。

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