結婚後、パートナーを一筋に愛し、健やかなる時も健やかなる時も、真心を尽くし生涯添い遂げる……。これはおそらく一般的に理想の夫婦像かと思いますが、果たして、実際に実行できる女性はどれほど存在するのか? 職業柄、多くの女性の話を伺っていると、ふと疑問に思うことがあります。
この記事では、綺麗事だけでは語れない女性の人生の公にはできない秘密をこっそり教えていただきます。今回は、インスタグラムで高校時代の初めての彼氏と繋がり、禁断の扉を開いてしまった麻子さん(仮名・40歳)のお話。
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元彼の懐かしい面影
「きっかけは半年ほど前、インスタグラムで彼と繋がったことです。新しいフォロー通知があり、たまたまアカウントを見に行ったら、名前と懐かしい面影のある写真を見つけて“彼”だと気づいたんです」
上品なママ、という印象の強い麻子さん。ネイビーのブラウスとフレアスカートに身を包んだ姿の通り、現在は専業主婦で、息子さんの小学校受験にほとんどの時間を費やしているそうです。
プレッシャーも多く、なかなか身動きも取りにくい生活。お受験という道を選んでしまった自分にたびたび疑問を持つこともあるそうですが、後に引くこともできず、多忙な日々を乗り越えていると言います。
「元彼の健太(仮名)とは、地元の中学と高校で同級生でした。交際は2年ほどでしたが、別れても地元の仲良しグループであることは変わらず、以前は数年に一度くらいの頻度で地元の集まりで顔を合わせていました。
でも、さすがに結婚後・出産後は地元の友だちと会う機会も減って。だから彼と繋がったときは懐かしかった。健太も結婚して家族がいて、今は仕事の都合で東北に住んでいることもインスタグラムで知りました」
気づけば、“彼”に向けてストーリーズを上げるように...
元彼の健太さんは、10代の頃はいわゆる人気者・モテるタイプで、生徒会や運動会では応援団長を務めるような明るく爽やかな男子だったそう。人生初の彼氏だったこともあり、当時はお互いに夢中、人生を振り返っても健太さんはやはり特別な存在だったよう。
2人は大学受験の前にストレスや進路の違いで仲違いが増えケンカ別れをしてしまったそうですが、その後も良き友人・心を許せる理解者という存在でした。
「インスタで健太とちょくちょくDMを交わすようになってから、心の拠り所ができたような気分でした。現状の生活に耐え難い不満があるわけではないですが、都心で子育てやお受験をしていると息が詰まることも多くて。結婚10年になる夫は自営業でかなり多忙でほとんど子育てもしないので、私はシングルマザーみたいな感覚です。昔はケンカも多かったけど、もう今はお互いさほど関心もありません。
だから、彼とやりとりしているときは気持ちが思春期に戻るようで癒されました。手料理や息子の姿など他愛のないことをストーリーズに上げると、『息子くんかわいいね、麻子に似てる』『料理うま!』なんて、彼からちょっとしたコメントが来るのが嬉しくて」
健太さん自身はインスタグラムを頻繁に更新するタイプではないそうですが、麻子さんのストーリーズにはまめにコメントが来るそう。いつしか麻子さんは、ほとんど健太さんに向けてストーリーズを更新するようになっていました。
40歳の女が「女子高生」に戻った瞬間
そして今年のGW前、『連休は実家でのんびりする予定』と麻子さんがストーリーズを上げたとき、彼女は池に釣り針を落とすような感覚で、心の中にはわずかな期待があったのだそう。
「ストーリーを上げてしばらくすると『麻子が帰るなら俺も帰ろうかな』とDMが来て、久しぶりに胸がドキドキしました。そこからトントン拍子にお互いに帰省の日程を合わせて、健太は1人で地元に帰るから飲みに行こうという話になり……。
私も息子と2人で実家に戻ったので息子は両親に預けられるし、『健太と久しぶりに飲んでくる』と嘘なく告げても、両親は『ああ健太くんね、よろしく伝えて』と、幼馴染感覚で懐かしそうに微笑んでいました」
幼馴染にも似たような存在とはいえ、麻子さんがご両親に元彼に会いに行くことを隠しもせず、また何も疑われないことに少々驚きました。
「思春期の元彼」「地元の友だち」の境界線が曖昧なのか、一般的に盲点なのか。昔から麻子さんは地元の友人と仲が良く、家族同士も顔見知りであったことから、ご両親も「娘の友だち」という感覚のままなのかもしれないと麻子さんは言います。
「当日、健太は『家に迎えに行く』と言ってくれました。待ち合わせの時間にLINEが鳴り外に出ると、自転車にまたがった彼がいて。
その瞬間、強烈に高校時代の感覚を思い出しました。いつも自転車2人乗りで、毎日のようにいろんな場所へ遊びに行ったことを。久しぶりに彼の自転車の後ろに乗って、その身体に手を回したら、懐かしい匂いがして……」
つい先日の思い出を語る麻子さんの顔は、自制が利かないようで徐々にはにかんでいきます。
「……恥ずかしいんですけど、頭の中にゆずの『夏色』が流れはじめたんです。夫のことも息子のこともお受験のことも不思議なくらい頭から消えて、気持ちが女子高生に戻っちゃった」
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作家・コラムニスト。ミモレ、現代ビジネス、東京カレンダーWEBなどで人気連載を多数執筆。「不機嫌な婚活」(講談社)や2022年ドラマ化された「恋と友情のあいだで」(集英社)など、東京で生きる女性のリアルな心情を描いた作品が話題に。プライベートはトイプードルと5歳男児の母。
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