高級車の並ぶ大きな家、完璧な家族と愛犬……幸せな人生の象徴と思いきや、内情は全く違うよう。国際結婚の不条理に翻弄されながらも 自分の意志を貫いて幸せを手に入れた女性のお話です。
杉本 綾さん(仮名)/ 50歳
’68 年兵庫県出身。大学卒業後 外資系航空会社に勤務。’91 年結婚、’93年離婚。’95年再婚後イギリスへ。’97年長女を出産。’15 年離婚成立。家事も育児もテキパキとできる才女。外見は杉本彩さん似の華やかなゴージャス美人。
彼
’68 年生まれ。大学で政治学を専攻後、サンドハースト王立士官学校を経て英国陸軍太尉として過ごした後、政府関係の仕事に従事するも、40 代で過労症に倒れ療養、離婚。その頃に絵画を勉強するため美大に入学。 数多の入賞を経験。現在は multidiscipli nary(集学的)artistとして注目。
第3話 愛犬を薬殺しろ!と怒鳴り散らす夫。そんな夫との離婚を決意するも、泥沼の離婚劇へ
愛犬ジョージの足にヒビが入り…
忘れもしない’11年の夏、とんでもない事件が起こりました。
夫婦で溺愛していたボーダーコリーのジョージが足にヒビが入り、獣医通いをしていると、「お金がかかるだろ。なんてもったいない。テーピングくらい俺がやる」と元夫がやったせいで、ジョージの足が余計悪化。夫がいない間に病院に連れて行くと、足を切断しなければならなくなる事態に。もう悲しくて、夫に電話をしたら信じられない反応。「手術は金がかかる。薬殺しろ」 と怒鳴り散らしたんです。とっても頭の良い犬で、夫は溺愛していたのに。
そして「俺は完璧じゃないものは嫌なんだ。獣医を出せ」と。その先生は神のように優しい方で、「薬殺という選択はありません。後ろ足だし問題ありません。大丈夫です」とおっしゃると、「手術費は出さないからな」と。もう最低な男、下の下の下、品がないったらありゃしない。結果、先生はお金を取らずに手術をしてくださり、引き取って育てるとまで言ってくださったのですが、私は連れて帰りました。その後、夫はどれだけジョージに冷たかったことか。
限界が訪れる
もう限界でした。娘が希望する医学部合格を見届けた’14年の夏、いつものようにいちゃもんを付けてきた元夫に対して、珍しく言い返し、家を出たのです。車で2分の友人宅の離れに住まわせてもらい、離婚手続きを始めました。「絶対に離婚しない」と結婚当初から元夫は豪語していたので、裁判になり、大揉めに揉めましたが、結局、子供の学校関係者、近所の方々がいかに元夫がひどい人間かを正しく証言してくれたことと、イギリスではモラルハラスメントが社会問題であることも大きく作用して、私の完勝。売却した家の半分の金額と元夫の多額の年金の45%をまとめてキャッシュでもらい、それを投資して、私は1人でも食べていけるようになりました。
今思うと、前妻との離婚原因もこの夫が原因だったんですよね。元夫は子供たちに前妻の悪口を言って丸め込み、だから子供はお母さんの方に行かなかったんです。実はそれと同じことが娘にも起こり、娘が私に会いたがらないので今は会うことができません。でも今も娘の近くに住み、絶対に誤解を解くことが目標。だからそれまではイギリスにいようと思っています。
私は裁判で勝訴したとき、関わってくださった人の友人知人を呼んでガーデンパーティを開きました。みんな心から喜んでくれました。
新しい出会い
そしてその裁判中、1人の男性と出会いました。彼はイギリス人のアーティストで、裁判を抱えた大変な時期に相談に乗ってくれた1人だったのです。
こんなにも一緒にいてラクな人がいるのかと思うほど。優しくて、「得意なのは知っているけど、料理はしなくていいよ」 と自分が作ってくれる。でも一緒には住まずに、入籍にこだわってはいません。
完璧主義な私だから、あんな夫2人を引き寄せてしまったのでしょうか? 50代も間近になり、今はリラックスが一番で、この恋を長く楽しみたいと思っています。
終わり