彼女たちは一体どんな女性なのか? そんな議論が度々上がるけれど、港区で暗躍する素人美女、パパ活女子、あるいはラウンジ嬢など……「港区女子」の意味合いや捉え方は人それぞれ。
そして謎に包まれた彼女たちにも時間は平等、歳をとる。港区女子たちは、一体どんな着地をしているのだろうか。現在アラフォーとなっていると思しき元港区女子たちの過去と現在に迫る。
※この物語は実際の出来事を元にしたフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
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ブランド品にお小遣い…経営者から大金を貢がせる「おじさんキラー」港区女子。その意外な苦悩は…
「パパ」と「恋人」の境界線
「ねえ、由利って本当にすごいよ。なにこの家? 家賃いくらなの? 広すぎてウケるんだけど!」
朝美は高らかに笑いながら私の新居を歩き回っている。先週東堂さんが私に用意してくれた元麻布の低層マンションは、たしかに女1人で住むには笑えるほど広い。
「最近やり手の女の子はいっぱいいるけどさ、由利はレベルが違うよ。しれっとこんな豪邸をパパに借りさせるなんて。もはや才能!」
ウォークインクローゼットに侵入した朝美は、さらに興奮したように叫んでいる。「これ、全部貢ぎ物?! エルメス博物館みたいになってるけど?!」私は彼女を放置して、先日表参道のお教室で習った紅茶を入れることにした。
「パパ」「貢ぎ物」なんて言葉を使われると通常は苛立つけれど、裏表なくあっさりした性格の朝美に言われるとなぜだか気持ちが緩む。
彼女はちょっと素人には見えない、慣れないと引け目を感じてしまうほどの美貌の持ち主だ。しかし本人は至って平和主義の愛嬌のある気質で、いつもただただ楽しそうにのほほんとしていて居心地がいい。
「ここの家賃、100万円は絶対超えてるでしょ。それに毎月お小遣いもらって、お買い物へ行けば何でも好きなもの買ってもらえて……。しかも、一生面倒見てくれるって言うんでしょ? 由利って本当に凄すぎる。はあ、うらやましい!」
朝美は少々行儀悪くソファに足を投げ出し、エルメスのクッションを抱きしめ溜息をついた。
最近は秘書をしている弁護士事務所の弁護士に熱心に口説かれているらしいが、本人もまんざらではないようだ。
しかし彼女のレベルなら、私なんかをうらやむまでもなく、芸能人やスポーツ選手、大富豪でも余裕で狙えるだろうに……と内心思っている。
「魔性の女」が「普通の男」を選ぶ理由
そう。朝美ならば、本気で望めば、贅沢な暮らしなんて簡単に実現できるはず。
朝美は過去に人気アイドルに熱心に言い寄られしばらく付き合っていたり、他にも彼女をやたらと気に入ったサッカー選手が、海外遠征の同伴者として公式のスポンサーに旅費を出させたりしていた。
仲間内でも、朝美は間違いなく“魔性の女”と誰もが感服していたのだ。
にも関わらず、同僚なんかと普通のデートを楽しんでいるのには、きっと何か理由がある。誰よりも楽観主義の朝美が、刺激的な楽しさよりも、凡庸な男を選ぶメリット……。
「今夜のディナーも楽しみすぎる。『かわむら』の白トリュフコースなんて、東堂さんと由利の力がないと絶対にいけないもん」
無邪気な朝美の声に、ハッと我に返る。
同時に、やや強烈なトリュフの香りが鼻先に蘇り胸焼けがした。『かわむら』は知る人ぞ知る銀座の小さな紹介制のステーキ屋で、どんなに安くても1人5、6万円はするという高級店。さらに冬の白トリュフの時期には、野球ボールのような巨大な白トリュフをほとんど1人一個提供し、その値段は1人単価6、70万円に跳ね上がるというとんでもない店だ。極めつけにロマネ・コンティなどの希少なワインも揃えているから、最後にはとても飲食費とは思えない値段の伝票が出てくる。
東堂さんはこの『かわむら』が大好きで、毎週のように通っている。最初は私も口の中でとろける肉の味に夢心地になっていたが、ここぞとばかりに使われる高級食材は胃にかなりの負担をかけるため、正直高頻度で口にするものではないと思う。
しかしながら、私より20歳以上も年上にもかかわらず、東堂さんはいつもぺろりと豪快にコースを平らげてしまうから驚く。
食べ物だけじゃない。彼は仕事面でも周りの敏腕経営者が驚くようなギリギリの手法で大儲けをしたり、思い立ったら世界の僻地にプライベートジェットで旅行に出かけることもしょっちゅう。側から見れば一つ一つがまるで映画並みのスケールだが、それが彼にとってのごく普通の日常なのだ。
そして、稀なエネルギーの持ち主である東堂さんは、永遠に女に飽きることもない。
最近は、私以外にも気に入った若い女の影がチラチラ見えた。
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取材/山本理沙 イラスト/黒猫まな子