親の介護が始まったら自分の生活はどうなるのか、漠然とした不安を抱えている方、多いですよね? そこで、今まさに介護中のみなさんに、お話を伺いました。耳を傾けるうちに、介護は大変だけれど、発見や学び、笑いや楽しさがぎっしり詰まった、家族との濃密な時間なのかもしれない、と思えてきたのです。
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にしおかさんが、介護と直面したのは、4年前。「コロナ禍で実家に帰ってみると、ちょっとしたごみ屋敷のような部屋に母が座っていて、その変わりように驚きました」。知人の勧めで、地域包括支援センターの職員に来てもらいましたが、お母さんはとても嫌がりました。にしおかさん自身が疲れてしまい要介護認定を受けるには至りませんでした。同居のお父さんは常にお酒が大好きな人であてにはならず、お姉さんはダウン症です。そこで、実家に移り住み、仕事と家事一切と、母や姉の病院の付き添いなどを担ってきました。
「母は、姉の面倒は最後まで自分が見たいと思っていて、姉も母とずっと一緒にいたいんです。それなのに、例えば母がデイサービスに行った場合、姉がウチに残ります。私は母の代わりはできませんし、やりません。じゃあ、姉は別の施設へとなったら、私は誰の幸せのために動くのかなーと。また、いま、調査員の方に質問されたら、母はきっとうまく答えられなくて、母を傷つけることになるかも。差し迫って必要なサービスがなさそうなのに、先々を心配して、今認定を受けるべきか、などと思い、ぐずぐずしてきました。でも、母の症状は進みますし、私も日々疲れます。」
そんなとき、かけていた県民共済の保証が85歳で終了になることをお母さんが知りました。「『介護保険というのがあって(本当は要介護認定ですが)、それを受けると、うちはとても助かるよ』と話すと、『いいじゃない』と母が言い出して。調査員さんが健康状態を見にくることにも承諾してくれたんです。いいタイミングかなと思い、実は、今日、介護認定の申し込みをしてきました」。
認定を受ければ、ケアマネージャーが付き、適切な公的支援に繋がる可能性が広がります。「4年前に、地域包括支援センターに電話をしたときにも、家族を見守る側の気持ちに寄り添ってくださり、プロの方って凄いなって思いました。今回動き出すことで、選択肢が広がるのは助かります」。
「実家に戻ったころ、認知症について本やネットでいろいろ調べて知識を詰め込みました。そうすると、たまに、〝症状〟に気をとられてしまい、〝本当の母〟を見ていないときがあって、ハッとします。誰しも認知症になる可能性はあります。もし私がそうなったとき、周囲が本当の私を見てくれなかったら、きっと悲しい。正しい知識を持つこともとても大事だと思いますが、やはりその人がどういう人かが大事だと私は思います。母の生きてきた歴史、人となり、何が好きか、何を思うからその行動をとるのか。わかったところで腹のたつことは多々ありますが(笑)。お互い様だし、できる範囲で母と一緒に笑いたいです」。
ワンピース¥38,500(ジェッシュ)ピアス¥2,860(ムク/アンティローザ)
撮影/BOCO ヘア・メーク/JHUN スタイリスト/奥田ひろ子〈ルプル〉取材/秋元恵美 ※情報は2024年12月号掲載時のものです。