働く女性は増えましたが、それでも女性社長はいまだに全体の10%にも満たないのが日本の現状です。そこで今回は、今注目の女性リーダーにお話を伺いました。すると意外なことに、トップへの道筋は野心や夢がもたらした果実ではなく、目の前の仕事に誠実に取り組んだ先にあった、と語ってくれたのです。
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人気家事代行サービス副社長、画像で振り返る起業当時と今【カット集】
髙橋ゆきさん 55歳・東京都在住
株式会社ベアーズ 取締役副社長 CVO&CLO
家事代行産業を創る経営は困難の連続。
「順風満帆だったら
輝くことはできません」
「順風満帆だったら
輝くことはできません」
家事代行サービスのパイオニアである株式会社ベアーズの創業者である髙橋ゆきさん。’95年、夫婦で香港の現地企業で働くことになった髙橋さんは、直後に第一子を妊娠していることがわかります。異国の地で頼れる人がいない髙橋さんは、メイドを紹介されました。
「当時の私は、メイドを雇うなんてお金持ちだけという先入観がありましたが、フィリピン人のメイドが来てから1カ月もしないうちに、偏見や先入観が覆されましたね。サポートはもちろんのこと、人間的にも素晴らしいメイドだったので、近くに頼れる人がいるという安心感がありました」。帰国後、日本で家事代行サービス産業を確立させるため、夫婦でベアーズを創業します。
現在のベアーズの存在感からは想像しがたいですが、髙橋さんは「自分の人生には安泰や安定という言葉はなかった」と話します。「創業した直後は、他の会社に〝出稼ぎ〟をしている時期もありました。自分の家族や会社の資金のため、また、事業に失敗した両親を養うために働きづめでした。そんな過酷な労働と精神的プレッシャーで無理をしているうちに心身ともに限界を超え、パニック障害を発症。32歳のときには倒れて入院しました」。
また、最愛の父や親友の死によって、髙橋さんは大きな喪失感に苛まれます。「仕事は大変なことの連続です。でも、どんなに辛いことがあっても、自分や自分の大切な人の命が脅かされること以外に、本当に大変なことはあるのだろうか、と考えるようになりましたね。そう考えられるようになると、仕事の辛さや自分の迷いがなくなりました」。
2人の子供を育ててきた髙橋さんは、育児で悩んだこともありました。「仕事中に長男が救急搬送されたことや、長女が首のヘルニアになってしまったことがありました。幸い大事には至らなかったのですが、働きすぎて子どもの変化に気がつかなかったのではないかと自分を責めましたね。仕事を辞めようと思ったこともあります。でも後から気がついたのです。子どものせいにして自分が休みたいだけなんじゃないかと。それほど私は疲れていたんだと。だから私は今社員がそう思うときは、子どもは大丈夫だよ、あなたが疲れているから休みなさい、子どもに元気をもらってきなさい、と伝えています」。
ベアーズの躍進もあり、日本では家事代行サービスは特別な人だけのものではなくなりました。「自分次第という言葉がありますが、幸せと感じているときはどんな状況でも幸せだし、どんなに恵まれた環境でも不幸せと思っていたら不幸せ。自分自身を見失わず、自分や大切な人を愛せれば、きっと困難も乗り越えられますよ」。
祖母を介助していたこともあったという髙橋さん。そのときに介助グッズや時短を考えたことが家事研究家の第一歩に。
撮影/BOCO 取材/星 花絵 ※情報は2025年4月号掲載時のものです。





















