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【発達障害と向き合う②】小島慶子さん(53歳)「自分はダメ人間だと思っていた」幼少期からの霧が晴れた瞬間

社会的な関心の高まりによって、診断される人の数が年々増加の一途をたどっている〝発達障害〟。子どもの頃に診断された人、大人になってから気づいた人など多様なケースがある中、どんな生きづらさを抱えながら、どのように向き合ってきたのか……特性とともに歩んできた、それぞれの軌跡を伺いました。

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小島慶子さん 53歳・東京都在住
エッセイスト、メディアパーソナリティ

ダメ人間ではなかった……
幼少期の自分への答え合わせ
霧が晴れるような気持ちになれました

小さな頃から、人と同じことをするのが苦手、友人関係も思うようにいかなかったと話す小島さん。今でもうっかりミスや時間管理の難しさなど、ADHD(注意欠如・多動症)の特性による困りごとは日常的だそう。

「幼稚園の集団生活に馴染めませんでした。小学校でも仲間外れにされたり先生に叱られたりで、母から〝慶子はどうして普通にできないの?〟とよく言われました。私も〝ママの言う普通ってなに?〟と。捻くれ者とか、育てにくい子だと言われました。姉からは〝あんたは小島家の失敗作だ〟と暴力を振るわれて理不尽さを感じたけれど、自分が悪いのだと思っていました」

中学に上がってからも悩みは続きます。

「私立の一貫校に入学し、裕福な同級生たちに驚き、コンプレックスの塊に。頑張ろうと学級長に立候補したけれど、先生と衝突し、悪ふざけしては友人に呆れられ、孤立しました。学校にも家にも居場所がなく自己嫌悪の塊で……暗黒時代でしたね」

やがてどん底で「進級したら生まれ変わろう」と思った小島さんは、高校時代に転機を迎えます。

「好かれている子たちを観察して振る舞い方を真似してみたら、うまくいくようになりました。たった数カ月で〝昔は浮いてたのに、今じゃ人気者だね〟と言われてびっくり。人間関係は失敗してもやり直しがきくと自信がつきました」

孤立するのではなく、社会の輪に入ろうと思った理由は?

「寂しかったから。空気とか暗黙の了解みたいなものが私、本当にわからないんです。だから周囲の状況や相手をよく観察して、言葉に直して分析して、行動に移す。まあそれでも失敗はするんですが。この地道な工程で言語化能力が鍛えられたのか、周囲からは〝モヤモヤしていることを言い表すのが上手〟と言われるようになりました」

その力はアナウンサーになってからも発揮されます。

「仕事の時間管理が上手にできなくて、求められる若手女性アナ像にも反発し挫折続きでしたが、上司の女性が励ましてくれて、道が拓けました」

ようやく安定した小島さんでしたが、30代で不安障害を発症。

「パニック発作と絶え間ない強い不安に襲われて。その時にかかった精神科の主治医は発達障害が専門でもあり、不安障害の治療の延長上で、私の特性に気づいてくれました。なるほど仕組みがあったのか!と思いました。今まで自分は根性曲がりのダメ人間だと思っていたけど、いろんな困難は脳の特性の影響によるものでもあったのかと。仕組みがわかれば工夫もできるし、長年の罪悪感と自己嫌悪が軽くなったような感覚でした」

家族の理解も得やすかったそうで……

「息子たちは、ママが風変わりで面白いのは元から知ってるよ、って(笑)。過集中してしまうとか、事務作業が不得手とか、私の特性を理解した上での具体的な対処法を、家族や仕事仲間と一緒に工夫できたことはありがたかったです。夫は、毎日のように失敗しては落ち込む私を絶妙な距離感で支えてくれます。そういえば交際当初から、彼は私の特性を一度も責めたことがなかったな」

大人になってから発達障害の診断を受けることについては?

「診断は、ダメ人間を識別するためのものではありません。特性で困っている人を医療支援につなげるためのものです。自己判断でアピールしたり、誰かを発達障害や、グレーゾーンだと決めつけるのはやめてほしい。脳の特性は人それぞれ違うもの。私は元から変わり者が好きですが、自分が診断されてから一層、違いに対しておおらかになりました。そして誰に対しても〝もしかしたら、この人も何か困っていることがあるのかもしれないな。どんな助けが必要かな?〟と想像するようになりました。そういう人が増えるといいな」

<編集後記>自分の過去との答え合わせ それも一つのセルフケアに 小島さんのお話を聞きながら、私自身の過去にも同様のことがあったり同調することもあって、決して他人事ではないと思いましたし「お疲れ、自分!」と労う気持ちにも。小島さんの息子さんたちのように、その特性面白いよね!と言える感覚が素敵で、みんながそういう気持ちになれたら、きっともっと優しい世界になると思いました。(ライター 竹永久美子)

撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/中台朱美 取材/竹永久美子 ※情報は2025年11月号掲載時のものです。

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