近年、企業のガバナンス改革が進み、取締役会における多様な視点を経営に活かす動きも相まって、女性社外取締役の登用が急増しています。今回、STORY世代が〝社外取締役〟という未知の領域に挑む姿をクローズアップ。まさに挑戦の真っ只中にいる彼女たちは今、どんな景色を見ているのでしょうか。
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【画像集】大手進学塾の取締役に就任した山口真由さん(42歳)の活動記録
山口真由さん 42歳・東京都在住
(株)学究社 社外取締役
女性取締役のロールモデルに。
持続可能な環境を構築したい
持続可能な環境を構築したい
首都圏を中心に展開する進学塾・enaで知られる学究社からオファーを受けた山口さん。「enaは都立高を重視している点や教育格差の是正という理念にも共感しました。教育分野に興味があったので、単純にお話をもらえて嬉しかったですね。法律の専門家として期待されているとも感じました」。
経営トップに権力が集中しすぎないよう定められた同社の委員会設置会社のシステムのなか、監査委員と指名委員を請け負います。「国際コーポレートガバナンスの風潮のもと女性を登用することは大切ですが、その制度が形ばかりにならないよう血肉を通わせたいのが本音です。そのためにも他の仕事をキャンセルし、毎月の会議に積極的に参加するようにしました。専門分野でのアドバイスや、問題意識を共有しながら経営者へのアプローチを心がけていますし、あくまでプロフェッショナルな立場で意見を言うことに徹底しています。とはいえ、敵対的にするのは得意ではないので、会の前後に個人的な会話を挟んだりして、なるべく意見を言いやすい雰囲気作りをしています」。
社内の風通しの良さは?「実際社内で起こっている問題を直接見聞きすることは難しいので、内部通報制度の拡充などを提言しています。問題が生じた場合に社外取締役が主導して、第三者委員会を設置するような可能性も。でも私はその役割は社外取締役が担ってもいい、社外の者だからこそしがらみなく判断ができることもあると。社外取締役はまだ過渡期なんですよね。今回のSTORYさんの企画を伺ったとき、他社さんの社外取締役の方たちのお仕事をもっと知りたくなりました。そういう横のつながりがあってもいいですよね」。
山口さんは最近ご出産したばかり。その間のお仕事は?「リモートで参加しました。あるとき社内の方に取締役会にシッター付きの授乳室を作るか聞かれたときハッとして。裁量のあるマネジメント層が柔軟に働く姿を見せることで下の世代の女性への門戸が広がりますね」。
女性取締役にかかるバイアスも危惧されています。「女性だからといってすべてに優秀であるべき? もっと多様な経歴を持ってもいいはず。私たちがその道筋になれればいいですね。社外取締役が担っている女性登用の比率はいずれは、社内で賄えるべき。そして社外取締役は、国内の企業の強みを共有しあえる橋渡し役を担えたらいいのではないかと。出産してから、この子たちが40歳になったときに日本はどうなっているのだろうと思うように。子どもが希望を持てる社会になってほしいと願います」。
ニット¥47,300 スカート¥66,000(ともにEPOCA/SANYO SHOKAI)イヤリング¥13,200(ABISTE)他/スタイリスト私物
撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/陶山恵実 スタイリスト/ポーランド美香 取材/竹永久美子 ※情報は2025年12月号掲載時のものです。















