デビュー以来、ドラマ『みなと商事コインランドリー』や『続・続・最後から二番目の恋』、映画『ほどなくお別れです』など注目作への出演が続き、存在感を増している若手俳優・西垣匠さん。〝慶應大学卒でフェンシング元日本代表〟という文武両道の経歴も話題で、「こんな息子に育ってほしい……!」という読者の声が絶えません。
そんな西垣さんが、俳優という仕事への向き合い方や葛藤、そしていま見据える未来まで、等身大の言葉で語ってくれました。
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★ 〝誰も自分を見ていない〟その悔しさが原点に
★ 役作りのため、友人の話し方を録音させてもらったことも(笑)
★ 大学の送別会に行けず、生まれた決意
★ 目標は〝日本アカデミー賞の新人賞〟
就活中に受けた、芸能事務所からのスカウト
俳優を志したきっかけは、大学時代に出場したミスター慶應コンテスト。仲の良かった友人が応募してくれたのが始まりでした。あれよあれよという間にファイナリストになり、気づけばグランプリに。
ちょうどその時期に芸能事務所からスカウトを受けたのですが、就活準備を進めていた頃で1度はお断りしたんです。でも、就活は卒業後でもできる。俳優に挑戦するなら今が最後のチャンスかもしれないと思い直し、挑戦することを決意。両親には、「25歳までに俳優1本で飯が食えない状態だったら、きっぱり諦める」と宣言して認めてもらいました。
もともとエンタメが大好きで、小さい頃からよく洋画を観ていました。『ダイ・ハード』や『ミッション:インポッシブル』、『メン・イン・ブラック』などに夢中で、毎週『金曜ロードショー』が楽しみで仕方なかった。特に大好きだったのが『スパイダーマン』。当時の夢は、本気で”スパイダーマンになること“でしたから(笑)。
ただ、成長するにつれて、映画監督になりたい、映画制作会社に入りたい、広告代理店で働きたい…と夢も少しずつ現実的にシフト。最終的には”エンタメを作る側”を目指して就活を進めていました。でも、もし作り手として演者の人たちと仕事をしたら、「あのとき挑戦しておけばよかった」と後悔してしまう気がして。どうせ諦めるなら、完膚なきまでに叩きのめされてからでも遅くないと腹を括り、俳優の世界に飛び込みました。
〝誰も自分を見ていない〟その悔しさが原点に
俳優として最初に壁を感じたのは、デビューから2年経って出演した『劇団☆新感線』の舞台。西洋剣術の立ち回りができる若手の俳優を探していたそうで、フェンシング経験のあった僕に声をかけていただきました。
実際に舞台に立ってみると、大人たちが大真面目にふざけている、痺れるほどかっこいい世界で。必死に食らいついていたものの、どれだけ一生懸命セリフを言っても、誰も自分なんて見ていないんです。観客の視線の矛先は、古田新太さんや天海祐希さんに向けられていることを瞬時に感じとりました。
そのとき、役者に必要なのは、”芝居が上手いこと”だけじゃない、圧倒的な存在感と人を惹きつけるオーラなんだと痛感。「いつか、あの人たちに並ばなければいけない」と思った瞬間、その果てしない道のりに途方に暮れました(笑)。
それでも、不思議と諦めようとは思わなかった。仕事である以上、逃げ道はない。だからこそ、どうすれば同じ景色を見られるのかを常に考えながら、芝居と向き合うようになりました。僕にとって、役者としての原点になった経験です。
役作りのため、友人の話し方を録音させてもらったことも(笑)
これまでに”大きな挫折”はなかったかもしれませんが、作品と向き合う中での悩みや後悔は日常茶飯事です。
監督が実現したい世界観を理解した上で、自分にしかできない表現を追求したい。想像を超えたいし、いい意味で裏切りたいという思いがあります。だからこそ、撮影の帰り道は「別のアプローチが良かったんじゃないか」「もっと監督と話せばよかった」なんて、反省ばかり(笑)。でも同時に、100点満点だと思った時点で終わりだとも感じていて。毎日のように小さな挫折を積み重ねることが、成長につながっていくと思っています。
役作りで心掛けているのは、役の人生をできるだけ日常の延長線上で演じること。ナチュラルに”その人”として存在できるよう、普段の生活の中でも癖や話し方を実践してから現場に入るようにしています。
以前ドラマで弁護士を演じたときには、実際に裁判を傍聴し、弁護士の方の立ち振る舞いやスーツの着こなし方を観察。映画で元野球部のキャプテンの大学生を演じたときは、学生時代にキャプテンだった友人と食事をして、会話を録音させてもらったことも(笑)。声量があって滑舌も良く、印象的な話し方で発見も多かったですね。
想像で終わらせず、自分の目で確かめれば自信にもなるし、その分現場で自由に爆発できる。”百聞は一見に如かず”を大切に、役と向き合っています。
大学の送別会に行けず、生まれた決意
ドラマ「ドラゴン桜」に出演していた頃はまだ大学生で、ひとつ上の先輩が卒業する送別会に撮影で行けなかったんです。そのとき、これから社会に出て多忙な毎日を送る先輩たちが、「明日も頑張ろう」と思えるような芝居をしようと心に誓いました。
役に没頭するほど、視野が狭くなって苦しくなる瞬間も。そんな時にふと、「そもそもエンタメで人を元気にしたかったんだ」と原点に立ち返ると、不思議と視界が開けるんです。それが役者を続ける一番のモチベーションですね。
現在出演している、映画『ほどなく、お別れです』も、”大切な人の死”という重いテーマを扱っていますが、本質的に描かれているのは”生きる希望”です。亡くなったから物語が終わるのではなく、別れの後にも遺された人たちの人生は続いていく。きっと観終わったあとに残るのは、悲しさだけではないはずです。
僕自身、フェンシングで一緒に練習していた友人を突然亡くした経験があり、そのとき初めて”死は予告なく訪れるもの”と思い知りました。普段何気なく生きていると、死ぬことなんて想像すらしない。でも人は「死」を意識したときに初めて、「生きたい」と強く思う生き物なんだと思います。
主人公の美空は、亡くなった人の言葉を伝えられる特殊な力を持っていますが、現実世界でそれが叶うことはない。だからこそこの映画を通して、「生きている今、何ができるのか」を考えてもらえたら。それを、明日を生きる希望にかえてほしいと思っています。
目標は〝日本アカデミー賞の新人賞〟
役者としての直近の目標は、日本アカデミー賞の新人賞を獲ることです。せっかく映画で活躍する方が多く所属する事務所にいるので、まずはそこを1つの目標として達成したい。監督や共演者とじっくり話し合い、試行錯誤しながら作品を作り上げていくやり方が、僕の性には合っていると思います。
最終的には、ドラマ、映画、舞台と、ジャンルを問わず活躍できる俳優になりたいですね。そのためにも、かつて共演した古田新太さんが放っていた、”なぜか目で追ってしまう”、”強烈に印象に残る”——。そんな、言葉では説明できないオーラを身に付けたいです。
俳優という仕事は、挑戦しても簡単にはクリアできない、難攻不落のゲームのようなもの。だからこそ面白いし、飽きずに続けられているんだと思います。正解は分からなくてもいいから、その正体を追求し続けたい。こう話すとストイックに聞こえるかもしれませんが、プライベートの僕は驚くほど普通です!芸能人だという自覚は、僕自身が一番ないかも。変装もせず街を歩いているので、もしかしたらどこかですれ違っているかもしれないですね(笑)。

【応募期間】
2026年3月26日(木)~ 4月9日(木)23:59
【当選者発表】
当選された方には、STORY公式Xアカウントよりダイレクトメッセージにてご連絡いたします。
※当選に関するお問い合わせにはお答えできませんので、あらかじめご了承ください。
衣装協力:ストライプのシャツ¥33,000 ピンクのシャツ¥26,400(共にクルニ/クルニ フラグシップ ストア) パンツ¥55,000(マーカウエア/パーキング) その他/スタイリスト私物
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撮影/佐藤俊斗 ヘア・メーク/カスヤユウスケ(ADDICTCASE)スタイリスト/井田正明 取材・文/渡部夕子
















