元サッカー日本代表として活躍し、現在は経営者として新たなキャリアを築いている鈴木啓太さん。現役時代とはまた違う魅力をまとい、そのかっこよさは年齢を重ねるごとに深みを増しています。
派手さではなく、静かな自信と凛とした佇まい。その清潔感のある雰囲気は、どこから生まれているのでしょうか。鈴木さんが語るその習慣には、外見を超えた、生き方のヒントがありました。
▼前編
元サッカー日本代表・鈴木啓太さん(44)「引退は、ある意味〝ひとつの死〟だと思っていた」
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整えておくほうが、シンプルに“得”なんです
僕は、現役時代から“整える”ということを大切にしてきました。そのうえで大事なのは、「何のために整えるのか」ということ。
僕の場合は、仕事でしっかりパフォーマンスを出すためだったり、毎日を気持ちよく過ごすため。整えること自体が目的ではなくて、あくまで“目的のための手段”なんですよね。アスリートも同じで、試合があるから整える。その“試合”が曖昧だと、整える意味も薄れてしまう。
これは日常でも同じで、目的が明確になると、人は自然と行動が変わるんです。逆に、曖昧なままだと続かない。だからこそ、先に決めることがすごく大事なんだと思っています。
一方で、無理なく続けるための工夫も必要です。たとえば、朝起きたらスクワットを1回だけやる。1日のどこかで1回だけなら、絶対にできますよね。そうやって“必ずできること”を積み重ねていくと、「できた」という感覚が残る。最初からハードルを上げすぎると続きません。
結局、整えるというのは、行動だけでなく“思考”の話でもあると考えています。目的が明確になると、そこに向かって生活全体をどう整えていくか、自然と考えるようになるんです。
僕は、朝トレーニングしたいなら早く寝る。そのために、2次会には行かない。そうやって、目的に合わせて行動を調整していく。それが“整える”ということなんだと思っています。
整っている状態は、頭がクリアで、パフォーマンスが上がる。それだけでやるべきことがスムーズに進み、結果や評価にもつながっていきます。本質はすごくシンプルで、整えているほうが“うまくいく状態”に近づくということ。
さらに言えば、体が整っているかどうかで、できる経験そのものも変わってきます。人は体が資本で、この体があるからこそ、いろんなことができる。整えておくほうが、シンプルに“得”なんです。
寝る前に、今日出合った人を思い浮かべる
整えるうえで、やっぱり大事なのは“血行を良くすること”なんですよ。今、自分の中でもやるべきことはいくつかありますが、一番のベースはそこですね。
特別なことをする必要はなくて、あくまで生活習慣。血行が悪いと顔にも出るし、運動している時のほうが明らかに肌の艶もいい。
「肌がきれいですね」と言っていただくこともありますが、それはたぶん、運動してきたからだと思っています。ハードな運動は必要なくて、しっかり歩くとか、階段を使うとか、それくらいで十分。まずは血行を良くすること、それがすごく重要だと思います。
あとは自律神経。呼吸が浅いと感じたら、深呼吸をしています。そうすると、交感神経から副交感神経に切り替わっていく。こうしたことを、日常の中で少しずつ積み重ねていく。「これだけやればいい」というものではなくて、一日の流れの中で整えていく感覚なんです。
一日の流れを整える上で、僕が何より大事にしているのが“感謝すること”。
寝る前に、その日会った人の顔を思い浮かべて「ありがとうございました」と思う。そうすると、その日がちゃんと完了するんですよね。
僕は、サッカー選手として一度“終わった”経験があります。その時、ファンやサポーターの方から厳しい言葉をもらったり、物を投げられたりすることもありました。
当時は正直、なんでこんなことをされるんだと思っていましたが、振り返ると、あれも一つの“愛情”だったのかもしれないと感じるんです。一度終わったからこそ、「これは自分にとって必要な経験だった」と思えるようになった。
今は、どんなことがあっても、「自分にとって意味があることなんだ」と捉えるようにしています。嫌なことがあっても、何も起きないよりはいい。そう思えると、すごく楽になるんです。
だから最後は、今日出合えた人、今日一日が終わったこと、そのすべてに対して“ありがとう”と言って終わるようにしています。リセットした状態で眠りにつくこと、それが自分の中でたどり着いた“整え方”ですね。
自分のことを“かっこいい”と思えているか
50代に向けては、“好きなことをやっている状態”でいたいですね。ただ自由に過ごすということではなくて、それをやっている自分をかっこいいと思えるかどうか。
お金を持ってゆったり過ごすことをかっこいいと思う人もいると思いますが、僕はやっぱりずっと仕事をしていたい。それが自分にとってかっこいいと思うからです。
時々、制限を取っ払って考えてみることがあります。今の状況を前提にせず、「これだったら自分は幸せだな」と思える状態は何か、と。そう考えたときに、それは“自分の幸せ”そのものではないなと思ったんですよね。
もちろん自分のことも大事なんですけど、それ以上に、従業員や家族が幸せであることのほうが、自分にとっては大きかった。
自分のことだけで言えば、サーフィンやゴルフができる時間があればいい。それくらいシンプルなんです。だからこそ、自分と向き合って、何に価値を置くのかを考えることが大事なんだと思っています。
選手の頃は、“自分が商品”でした。自分がプレーして、ファンやサポーターに喜んでもらう。でも今は、従業員がいて、その人たちが活躍し、生みだされた商品を通じてお客様に喜んでもらう。構造は同じでも、自分の役割は大きく変わりました。
会社としてはお客様に価値を届けることが大事ですが、自分個人としては、まずは従業員が幸せであることが一番大切だと思っています。
自分が好きなことをやって、それが独りよがりではなく、誰かのためになっている。そういう生き方をしているかどうかが、自分にとっての“かっこよさ”なんだと思います。
現役引退後は、腸内環境に着目したヘルスケア事業を展開するAuB株式会社を設立し、代表取締役として活動。アスリートとして培ったコンディショニングの知見を活かし、「すべての人をベストコンディションに導く」ことを目指している。
※衣装は全てご本人の私服
撮影/野呂 知功(TRIVAL) ヘア・メーク/Rico (M-rep by MONDO artist-group) 取材/日野 珠希





























